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第二章
Ⅴ
しおりを挟む「…ねぇ、龍海。」
帰り道、兄さんに声をかけられる。
「なんだ。」
「翠さん、死んじゃいそうだったね」
急に縁起でもないことを言われる。
「な、何を言ってるんだ兄さん。」
「生きる理由無くなったんだろうねってこと。
妹さんが、彼女の生きる理由だったんだろうねってこと。」
「…」
「生きる理由が無くなったから、いつ死んじゃうか分かんないねってこと。」
「…そうかもしれないな。」
「…ねぇ、生きる理由を作ろう。
凄く傲慢なことだけど。」
「生きる理由?」
「翠さんを一人にしないようにしよう。」
「…どうやって。」
「う~ん、まずは…会社のお迎えとか?」
「…嫌がられたらどうする」
「どうしようね。
まぁ一旦やってみよう。」
正直、どうしてここまで兄さんがあの女に肩入れするのか分からない。
あの女のことが好きなのは、兄さんの方なんじゃないか。
…兄さんはあの女が好きなのか?
別にそうであっても関係ない。
俺は別に、なんとも思ってない。
「…翠さん、遅いねぇ」
「…」
彼女が仕事に復帰したことを確認して、二人で彼女の職場まで来ていた。
俺達を見てどう反応するだろうか。
また怒るだろうか、泣くだろうか。
そんなことを考えながら彼女の勤める薬局を眺める。
「…ん?」
「どうしたんだい?」
「あれ…」
薬局の裏から素早く飛び出た人影。
何故か、彼女だとすぐに分かった。
「あいつだ」
「えぇ?本当?」
「捕まえてくる。」
「おぉ、いってらっしゃい。
ゆっくり追い付くよ。」
後ろ姿を追いかけて、走り出した。
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