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ダンジョンの戦闘(1)
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攻撃する側は水属性を得意とするダンジョンであり、対してイジスが最後に人族としてロイエス達と潜ったダンジョンは、炎の属性を得意とするダンジョン。
もちろんミラバル側は、有利な状態であると確信したから攻めてきている。
「わかった。じゃあまず、あのダンジョンの内部にいる冒険者を全て追い出してくれ」
ダンジョン間の戦闘では、自らの戦力を相手方の一階層に転移させて攻撃を仕掛けるのだが、それ以外の階層には転移できないので、そう言った仕様なのだと割り切るしかない。
しかしダンジョン間の戦闘が行われている事を知る事の出来ないダンジョン内部の冒険者は、突然現れた高レベルの魔物に蹂躙される可能性が高く、窮地に陥る。
この時に、魔物がダンジョン内部から溢れて外に出てしまい制御不能になるのが、所謂スタンピートと呼ばれている魔物暴走だ。
当然戦闘用に準備しているので、出て来る魔物は高レベルばかり。
場合によっては攻撃側の魔物が出て来る事も有るので、人族としては予想しない魔物が現れる事になる。
例えば炎属性と知れ渡っているダンジョンから突如として水属性の高レベルの魔物が湧き出てくるのだから、人族としてはたまったものでは無い。
ダンジョン内部の冒険者が予想外に死亡する事を避けるために、先ずは冒険者の避難をさせるように指示をしたイジス。
ダンジョンマスターとしては死亡によるエネルギーを得る事が出来るので正しくない行動なのかもしれないが……元人族のイジスは、冒険者達に対してそのような無駄死にだけはさせたくなかったのだ。
この優しさも、四人の眷属がイジスを敬愛している理由の一つだ。
実際に魔王直属の眷属ともなると、内部の冒険者を気絶させてダンジョンの外に放り出す程度の事は非常に容易い。
「そうだな。その任務に継続してダンジョン防衛は、リティに任せようか」
「ありがとうございます、ご主人様。このリティ、必ずやご主人様の期待に応えてご覧に入れます」
既にイシュウの後方にいる残りの三人の眷属の存在は看破できているイジス。
普段からこの三体は影からイジスを見守る姿勢を取っているので、イジスには見えているが、他の魔物や人族では認知する事も出来ない。
イジスから命を受けたリティは、本当に嬉しそうな表情を浮かべて一礼するとこの場から消えた。
「報告は以上になります。リティが向かいましたので、もう何も問題は起こらないでしょう。では、マスター。ごゆるりとお休みください」
イシュウの一言で後ろに控えているベーレとプラタも一礼すると、イジスの前から消える。
既にダンジョンの防衛、更には反撃までリティ一人で問題ないと信頼しきっているのだ。
「本当に、中々平和にならないね~。人族も大変だけど、魔族も大変だ!」
そうぼやきながら再びイジスは堕落の時間を過ごす事にした時には、既にイジスが人族の時に手を伸ばしたダンジョンコアがある部屋にリティは到着している。
ダンジョンへの転移は敵であれば一階層のみになるが、契約済みのダンジョン……つまり味方のダンジョンであればどこにでも転移する事が出来るのだ。
「こ、これはリティ様がおいで下さるとは思ってもおりませんでした……まさか、敵がそれほど強大なのでしょうか?」
実はこのダンジョン、過去にイジスのダンジョンに喧嘩を売って逆襲されているダンジョンであり、その結果、ダンジョンマスターはイジスの配下になっている。
ダンジョンマスターである彼はイジスの眷属であり人族から魔族へ進化したわけではないので、人族から魔族に進化する時に得られる力をイジスは得ていない。
そもそもイジスは安全確保のための力は必要と考えていたが、それ以上の力を無理に得ようとは思っていなかった。
そんなダンジョンマスターであるイジス配下のこの男はイジスの眷属であるが故、リティの強さ、魔王直属眷属四人の強さを嫌と言う程知っている。
通常であれば、ダンジョン間の戦闘において対抗するために派遣された戦力が一人であれば大きく落胆する。
しかし、リティ達四人の真の力を知る者であれば、逆にそれほど敵が強敵であるのかと警戒する事になるのだ。
もちろんこの男も、そのような思いから不安な心中を吐露したのだが……
「いいえ。今回はご主人様の心労を少しでも減らす事だけを目的に、私が来たにすぎません。つまり、敵を完全に、完璧に、完膚なきまで叩き潰す必要があると言う事です。理解できましたか?」
「はっ、はい!!」
自らのダンジョンで九死に一生を得た敬愛するダンジョンマスターであるイジスの姿をその目にしているこの男は、リティの言葉に深く頷き、ダンジョン内部の最大戦力を惜しげもなく一階層に移動させる。
正にこのダンジョンのコアを守るべき最強の存在すら、迷う事なく一階層に送り込んだのだ。
既にダンジョン内部の冒険者は隔離済みであり、人に化ける事の出来る眷属が冒険者ギルドに対して、ダンジョン内部が異常状態にあるので近づかないようにと警告している。
実際に調査に向かった職員が見たものは、ダンジョンの攻略をしているはずの冒険者全てが気絶した状態で周辺に放置されている不思議な図だった。
もちろんミラバル側は、有利な状態であると確信したから攻めてきている。
「わかった。じゃあまず、あのダンジョンの内部にいる冒険者を全て追い出してくれ」
ダンジョン間の戦闘では、自らの戦力を相手方の一階層に転移させて攻撃を仕掛けるのだが、それ以外の階層には転移できないので、そう言った仕様なのだと割り切るしかない。
しかしダンジョン間の戦闘が行われている事を知る事の出来ないダンジョン内部の冒険者は、突然現れた高レベルの魔物に蹂躙される可能性が高く、窮地に陥る。
この時に、魔物がダンジョン内部から溢れて外に出てしまい制御不能になるのが、所謂スタンピートと呼ばれている魔物暴走だ。
当然戦闘用に準備しているので、出て来る魔物は高レベルばかり。
場合によっては攻撃側の魔物が出て来る事も有るので、人族としては予想しない魔物が現れる事になる。
例えば炎属性と知れ渡っているダンジョンから突如として水属性の高レベルの魔物が湧き出てくるのだから、人族としてはたまったものでは無い。
ダンジョン内部の冒険者が予想外に死亡する事を避けるために、先ずは冒険者の避難をさせるように指示をしたイジス。
ダンジョンマスターとしては死亡によるエネルギーを得る事が出来るので正しくない行動なのかもしれないが……元人族のイジスは、冒険者達に対してそのような無駄死にだけはさせたくなかったのだ。
この優しさも、四人の眷属がイジスを敬愛している理由の一つだ。
実際に魔王直属の眷属ともなると、内部の冒険者を気絶させてダンジョンの外に放り出す程度の事は非常に容易い。
「そうだな。その任務に継続してダンジョン防衛は、リティに任せようか」
「ありがとうございます、ご主人様。このリティ、必ずやご主人様の期待に応えてご覧に入れます」
既にイシュウの後方にいる残りの三人の眷属の存在は看破できているイジス。
普段からこの三体は影からイジスを見守る姿勢を取っているので、イジスには見えているが、他の魔物や人族では認知する事も出来ない。
イジスから命を受けたリティは、本当に嬉しそうな表情を浮かべて一礼するとこの場から消えた。
「報告は以上になります。リティが向かいましたので、もう何も問題は起こらないでしょう。では、マスター。ごゆるりとお休みください」
イシュウの一言で後ろに控えているベーレとプラタも一礼すると、イジスの前から消える。
既にダンジョンの防衛、更には反撃までリティ一人で問題ないと信頼しきっているのだ。
「本当に、中々平和にならないね~。人族も大変だけど、魔族も大変だ!」
そうぼやきながら再びイジスは堕落の時間を過ごす事にした時には、既にイジスが人族の時に手を伸ばしたダンジョンコアがある部屋にリティは到着している。
ダンジョンへの転移は敵であれば一階層のみになるが、契約済みのダンジョン……つまり味方のダンジョンであればどこにでも転移する事が出来るのだ。
「こ、これはリティ様がおいで下さるとは思ってもおりませんでした……まさか、敵がそれほど強大なのでしょうか?」
実はこのダンジョン、過去にイジスのダンジョンに喧嘩を売って逆襲されているダンジョンであり、その結果、ダンジョンマスターはイジスの配下になっている。
ダンジョンマスターである彼はイジスの眷属であり人族から魔族へ進化したわけではないので、人族から魔族に進化する時に得られる力をイジスは得ていない。
そもそもイジスは安全確保のための力は必要と考えていたが、それ以上の力を無理に得ようとは思っていなかった。
そんなダンジョンマスターであるイジス配下のこの男はイジスの眷属であるが故、リティの強さ、魔王直属眷属四人の強さを嫌と言う程知っている。
通常であれば、ダンジョン間の戦闘において対抗するために派遣された戦力が一人であれば大きく落胆する。
しかし、リティ達四人の真の力を知る者であれば、逆にそれほど敵が強敵であるのかと警戒する事になるのだ。
もちろんこの男も、そのような思いから不安な心中を吐露したのだが……
「いいえ。今回はご主人様の心労を少しでも減らす事だけを目的に、私が来たにすぎません。つまり、敵を完全に、完璧に、完膚なきまで叩き潰す必要があると言う事です。理解できましたか?」
「はっ、はい!!」
自らのダンジョンで九死に一生を得た敬愛するダンジョンマスターであるイジスの姿をその目にしているこの男は、リティの言葉に深く頷き、ダンジョン内部の最大戦力を惜しげもなく一階層に移動させる。
正にこのダンジョンのコアを守るべき最強の存在すら、迷う事なく一階層に送り込んだのだ。
既にダンジョン内部の冒険者は隔離済みであり、人に化ける事の出来る眷属が冒険者ギルドに対して、ダンジョン内部が異常状態にあるので近づかないようにと警告している。
実際に調査に向かった職員が見たものは、ダンジョンの攻略をしているはずの冒険者全てが気絶した状態で周辺に放置されている不思議な図だった。
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