上 下
12 / 44

彼女は…!?

しおりを挟む
家族会議の翌日、疾風はやては出掛けて行った。

1日で戻ると言っていたから明日には帰って来ると思うけど…

「この部屋…こんなに広かったかしら…」

いつも一緒に居た疾風はやてが居ないだけで、こんなに寂しくなるなんてね…


「シア、入っていいかい?」

扉をノックしてお兄様が来ました。

「フェリシア様!」

「まあ! クリスティアナ様」

扉を開けてから顔を出したのは、今日会おうと思っていたクリスティアナだった。

「シアが外出禁止だから寂しいと思ってね。使いをやって呼んだんだ」

「嬉しいですわ! お兄様、ありがとうございます」

外出禁止にしたのはお兄様ですけどね。ふふっ。

「下でジェシカが茶会の用意をしてくれているよ」

「直ぐ行きますわ!」

私達が行った時には、もうお茶会の準備が出来ていた。
そして席に座っていたのはキャロライン…

「お兄様、お義姉様も呼んでくれたのね!」

「フェリシア。 会いたかったわ」

「私もです。 会えて嬉しいわ」

「さあ、シア。茶会を始めよう」

私達は席に着いて4人でお茶会を始めました。
外出禁止にはなりましたが、こういう所…お兄様は本当、私に甘いです。


少し経った頃、フェルドアが来ました。

「兄様、姉様。ずるいです、僕も入れて下さいよ…」

「フェル。授業は終わったの?」

「フェルドアはこの後、剣術の指導が入ってたんじゃなかったか?」

「うっ…そうでした…」(ちぇっ…姉様とお茶出来ると思ったのになぁ)

「フェルは将来、剣術に秀でたサーヴェント侯爵家を継ぐのですもの。頑張らなくてはね」

「可愛いマリベルの為なら、厳しい指導にも耐えて見せますよ」

そう、フェルドアは去年、マリベル・サーヴェント侯爵令嬢と婚約したのです。
今のフェルの言葉通り、相思相愛の仲ですわ。

フェルは攻略対象じゃないから、私の知る婚約関係では一番安心出来るカップルね。

ここにいるキャロライン、クリスティアナ、そしてミリアンナとスザンヌ…
皆、攻略対象の婚約者…

このまま行けば、不幸になるのは私だけじゃ無いと言う事よね。

ヒロインを放って置けば、皆…婚約破棄されてしまうのよ…

(私だけ、処刑なんだけどね……はぁ…)

「姉様? どうかしましたか?」

「ううん。何でもないわ。 剣術、頑張ってね」

「はい。 行って来ます!」

フェルドアは私達に手を振って、剣術の指導を受けに行った。


そして、楽しいお茶会は終わり…2人を見送った後…

「シア!!」

私はまた、倒れて意識を手放した。




「父上。 シアの容態は…?」

「心配無い。 魔力の枯渇こかつだ……疾風はやての方で魔力が必要だったのかも知れんな…」

「そうか…シアは疾風はやてと契約で繋がっているから…」

「そういう事だ…」

「これは予想して無かったけど…外出禁止にしておいて良かった…」

「そうだな。 疾風はやてが出掛ける時は外出禁止にしよう。どこで倒れるか分からんからな…」




―――疾風はやてside―――


(予定よりかなり遅くなってしまったな…)

俺は姿を消したまま直走ひたはしっていたが…
もうすぐ王都に着くという距離で、1台の馬車が目に付いた。

(もしかして、王家の馬車か…?)

いつも使っている馬車より、幾分か抑えた装飾の物だ…
直ぐに追い抜く事も出来たが、何となく後ろに着いて走っていた。

王都に入り、しばらくした頃…子供が馬車の前に飛び出して来た。
すると…子供を助けようと、ひとりの娘がその子供を突き飛ばした。

馬車は何とか直前で止まり、中から出て来たのは…

(第1王子か…!?)

王族として王家直轄領に視察へ出ていたのだろう…装飾を控えた大人し目の服装をしている。
馬車から出て来た事で、護衛に止められているが…

彼奴あいつはあれでも責任感の強い男だからな…)


「お嬢さん、大丈夫か?」

「あ、はい。私は平気です…あっ! さっきの子供はっ!?」

馬車の前に飛び出した子供は、面倒事に巻き込まれたくない親が連れて逃げた様だな。

(仕方あるまい…どうみても貴族の馬車だからな…)


「あれ? いない!?」

「怖くなって親が連れ帰ったのだろう…」

「でも…怪我が無いなら良いのだけど…」

「それよりも…君こそあんな事をしては危ないぞ?」

「すみません…」

「では、気を付けてな」

「はい」

王子は馬車に乗り込み、去って行った。

俺が後を追おうとした時、その娘がわらっていたような気がしたが…

(…? 気の所為せいか…?)


貴族街に入り少し走ると、カストリア邸が見えて来た。
敷地に入り人目の無い所で人型になる。

中に入るとセレムが迎えてくれた。

「ゲイル様、お帰りなさいませ」

「あぁ…フェリシアは?」

「また魔力の枯渇こかつで、昨日からお休み頂いております」

(あゝやはりか…)

「分かった。 マクシム殿は帰っておられるか?」

「はい。 書斎の方にいらっしゃいます」

「分かった。ありがとう」

フェリシアが寝ているなら、先に親御殿へ魔道具を渡すか。
明日にでも、国王へ届けて貰おう…

俺は書斎へ向かった。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49,339pt お気に入り:4,898

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,248pt お気に入り:91

悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:5,613

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:449

【完結】さよならのかわりに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,351pt お気に入り:4,464

俺に着いてこい〜俺様御曹司は生涯の愛を誓う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,534pt お気に入り:12

処理中です...