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第5話

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「お父様!」
「おお、リーディア。会いたかったぞ」

お父様がわざわざ王都までやってきた。
再会を喜び抱擁を交わす。

「お手紙の件ですか?」
「そうだとも。あれからターダム男爵ともいろいろあってだな。そのことを伝えに来たんだ」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけしました」
「いやいや、リーディアは被害者だから謝る必要はないぞ。悪いのはダンクだ。それにしても…よく耐えたし、よく平手打ちをしたものだ」
「…改めて言われると恥ずかしいです」

平手打ちなんて淑女の振る舞いとしてはどうかと思うけど、そういえばまだお父様にはシャーロット様のことを伝えていなかった。
お父様のほうからもターダム男爵と何かあったようだし、いつまでもこうしてはいられない。

「いろいろと話がありますよね?」
「ああ。長くなるだろうからお茶を淹れさせよう」

お父様はメイドにお茶を用意するよう命じ、お茶の用意ができるまでは他愛のない話をした。

そしてお茶が用意され、本題へと入る。

「さて、まずはターダム男爵との話し合いについて話そうか。婚約破棄された以上、それで終わりにはならない。ターダム男爵と話し合わなければならなかった。だが実際にターダム男爵と会ったが、どうも話が違うようだった。ターダム男爵もダンクから手紙で婚約破棄の件を知らされたようだが、その内容はリーディアから知らされたものとは異なっていた」

ダンク様のことだから、きっと都合の悪いことは伏せていたのだと思う。
事実を調べればすぐにバレてしまうと思うし、そのような小賢しいことをしたら信用を失うだけだろう。

「その場では何が正しいのかわからないので、こうやって王都までやって来て直接本人から事情を訊くことにした。これはターダム男爵も同様だ。そして後日、改めて話し合いの場を設けることにしている」
「そうだったのですね。王都までやってくるのですからただ事ではないと思いましたが、そうなっていたのですね」

もし当事者だけの証言で納得できなければ学園に協力を求めてもいいと思う。
私がダンク様からぞんざいな扱いを受けていたことはみんな知っているはず。
学園側が把握していないとは思えないし。

「そういえばダンク様の忘れられない女性については何かわかりました?」
「断定はできないが、怪しいのはターダム男爵家のメイドだな。ダンクが本気なのかはわからないが、一方的に好意を抱かれていたようで本人も困っていたようだ」

本気で好きなのか、そうでなくとも気になっていただけなのか、どちらなのかはわからない。
でも本気だとすれば本人が迷惑に感じていたようなのでダンク様の想いが実ることはないだろう。
本気でないとしても他に心当たりがないなら誰なのか探すのは難しいかもしれない。

それでも私ではなく忘れられない女性のことを大切に想っていた事実は変わらない。

「そこまで把握できていたのですね」
「その点はターダム男爵に感謝だな。協力してくれた。まあ、少しでも心証を良くして慰謝料に手心を加えてもらおうという魂胆かもしれないが。それで制裁だが慰謝料請求以外に何か必要か?」
「そうですね…」

私の気持ちを裏切り続けたのだから、慰謝料の支払いだけで済ませたくはない。
でもどういった制裁がいいのかわからない。

「悩むようなら後でも構わない。どうせターダム男爵との話し合いまでは時間があるからな」

ここで制裁方法を決めなければお父様の話し合いの場で足を引っ張ることになってしまうかもしれない。

ふと、シャーロット様の態度を思い出した。

自分が恥じるようなことをしていなければ堂々としていればいい。
そのためには自分が恥じるようなことをしていないと周知しなければ意味がない。

「ダンク様が大切に想う女性のことが忘れられなかったから私の事を蔑ろにしたと、事実を周知させることに同意させてください。慰謝料も無理に吹っ掛ける必要はありません」
「それでいいのか?リーディアが受けた仕打ちを考えると甘くはないか?」
「これでいいのです。私は恥ずかしくない振る舞いをしたいのです」
「そうか…。リーディアの気持ちはわかった。話し合いの結果がどうなるか保証はできないが方針は決まった。できるだけリーディアの意向に沿えるように努力しよう」
「ありがとうございます、お父様」
「なに、可愛いリーディアのためだ。どうということはない。それにあのような男と婚約させてしまった責任は私にもある。その点は謝罪しなければならんな。すまなかった、リーディア」
「いえ、お父様が謝るようなことではありません」

お父様に頭を下げさせるなんてダンク様は酷い。
こうなったら絶対にダンク様のことを周知するような結果になってほしい。
不誠実な本性を明らかにして名誉を失ってほしい。
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