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第9話

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わたくしはゼーレイン殿下の婚約者だというのに、肝心のゼーレイン殿下は私のことを本心から大切にするような素振りはございませんでした。
あくまでも他人から大切にしているよう思われるように振る舞っていただけなのです。
ですから他の女性に言い寄られても断りませんし、わたくしが抗議したところで取り合ってはくださいませんでした。

そのようなこともあり、わたくしはパーティーの場でゼーレイン殿下に反省していただくべく、浮気を責めたのです。
ゼーレイン殿下は浮気を認めず、わたくしは怒りと悲しみと殿下への愛から平手打ちして差し上げたのです。
これでゼーレイン殿下も目を覚ますと思いましたのに、事もあろうか殿下はわたくしに婚約破棄を告げ、国外追放処分まで宣言されたのです。
酷い裏切りでした。

ゼーレイン殿下に宣言されてしまいましたので、サーリッシュ公爵家としてもわたくしを国外追放しない訳にはいかないのです。
お父様もお母様も涙ながらに別れを惜しみましたが、わたくしに手を貸せば王家への叛意と曲解され兼ねません。
わたくしは身一つで放り出されたのです。

国外追放処分ですので外国に向かわなくてはなりません。
そこに思わぬ幸運が舞い降りたのです。
隣国出身の商人が国に帰るので、一緒に行かないかと誘ってくださったのです。
見ず知らずの人とはいえ身なりもしっかりしていましたし、何よりわたくしには頼れる人もいなければ日々生きていくためのお金すら持ち合わせておりません。
好意に縋るほかなかったのです。

わたくしは身の上話をしつつ隣国へ向かいました。
わたくしの以前の身分も話していたことが影響したのか、隣国のリヴィエール公爵家の人がわたくしの世話をしてくださることになったのです。
商人の方にもリヴィエール公爵にも感謝しました。

それからの生活も悪くはなかったのですが、リヴィエール公爵は義理だが娘にならないかとおっしゃってくださったのです。
わたくしはそこまでしていただくことに恐縮したのですが、リヴィエール公爵がどうしてもとおっしゃったので、決意は揺らぎました。
わたくしを娘にしたら母国との関係が悪化してしまい、リヴィエール公爵にも迷惑をかけてしまうかもしれません。
そのことを正直にお伝えしたのですが、リヴィエール公爵の反応はわたくしの予想を超えたものでした。

そして明かされた企みの全貌。
そこまで話てくださったのですから、わたくしも期待に応えなくてはなりません。
それがゼーレイン殿下への復讐にもなるのですから。

こうしてわたくしはリヴィエール公爵の娘となり、計画に従って母国へ留学することになったのです。
わたくしは以前のシャーロットではありません。
今はシャルロッテ・リヴィエールです。

わたくしは懐かしい学園に帰ってきました。
ゼーレイン殿下が謝罪しても許す気はありません。
わたくし一人が犠牲になって大いなる復讐を遂げられるのであれば、この命、惜しくはありません。

シャーロット・サーリッシュはもう死にました。
ここにいるのは理不尽な扱いに命を賭してでも抵抗するシャルロッテ・リヴィエールです。

これからはゼーレイン殿下に死にたいと思うくらい後悔してもらいましょう。
私の愛を裏切ったゼーレイン殿下を許すことはできません。
ご自身のなさった事の責任を取っていただきませんとね。

戦争を起こさないために心を削るか、自分のせいで国を亡ぼすきっかけになるか選ばせて差し上げます。
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