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笑う当主と踊る幽霊

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「わっはは!!わっはは!!ひっー!」

「うるさい!黙れ」

「だって・・・・ヴァジールさんだぞ!」

 そう、これはヴァジールさんとキースが夜の王都を走る馬車の中で交わしている会話。

ヴァジールさんとは何の事だろう。





時間は少しだけ遡る。





 「お兄様、キース。こんな時間に出かけるの」
アルバニアが二人に問いかける。

ここは王女殿下と結納の儀が行われた日の、王都にあるテアルスティア侯爵邸。

「ごめんね、少し野暮用が有るんだ」
「そう、仕方無いわね」

「あのね、お兄様。私、今日からヴァジールさんと呼ぶわ」

その場にブリザードが吹き荒れた。

気がする。

「なッな、アルバニアどうしたんだ」

固まってしまったヴァジールの代わりにキースが問いかける。

アルバニアの頬が紅色に染まった事を、キースは認識したが意味は未だに解らない。

「だって・・・・ヴァジールさんは、お兄様ではないわ」

その場はお通夜のように、悲しみが漂う。

「アルバニア、意味が解るように教えてくれ」
キースは、再びアルバニアに聞く。

「なっ、なぜなら、お兄様は私にとって」

「私にとって何なんだ?」

「オニイサマハ、オニイサマイジョウダカラ」

ヴァジールがアルバニアを抱き締める。
「アルバニア、もっと大きな声で言ってくれ」

「お兄様は・・・・お兄様の事が大好きだから。だから・・・・お兄様と呼ぶのは変な気がしたの」

今時の中学生の方が、もっと上手く言うだろう。

「あのさー、ヴァジールと呼べば良いんじゃねーか」
キースがすかさず、つっこむ。

「無理よ!恥ずかしいし。それに、私がお兄様を呼び捨てなんて1000年早いわ!!」

アルバニアは、自分を抱き締めているヴァジールを押し退けると走り去ってしまったのだ。

ヴァジールは、ひたすら立ち尽くしていた。



「クワッ~、ハッハッ!」
お腹が痛くなりそうな感じで笑っているのは、キースだ。

そう、ここは、再び馬車の中。

「1000年だって!生きてねーよ!!」

「黙れ!」
《グワシッ!》
「痛いだろう!」

「いいから、例の物は用意したのか?」
「はいはい、用意したよ。けど何に使うんだ?」

キースが用意いたのは・・・・。


 馬車が王城の付近に着くと、ヴァジールとキースは馬車から降りる。

二人が向かう先、それは・・・・。

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