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第21話 手を取り合って生きて欲しい
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「お手伝いをしてくれるのは、助かるわ。ありがとう。でもね、ティガァの方が力が強くてスゴイとか、アラルトの方が足が速くてスゴイって事はないのよ。2人ならちゃんと分かるでしょう?」
困ったように微笑んで、リュシェラは優しい声で言い聞かせる。2人がここに来るようになって、もう8ヶ月近くが経っていた。その間の2人は本当に仲良しで、互いにライバル心はあっても、相手のスゴイ所を素直に認め合っていた。それなのに、なぜかここ1~2週間は、2人のこんな喧嘩が絶えないのだ。
「どうしたの? アラルトと喧嘩をしちゃったの?」
リュシェラの言葉に心当たりがあるのか、ティガァが「だって……」と、もごもごとした声で言った。
『だって……』
言葉の先には、この2人の喧嘩の理由があるのだろう。だけど、結局リュシェラはその先を聞くことが、出来なかった。
「リュシェラさまぁーー!! 実、いっぱいあったよぉ~!」
駆け戻ってくるアラルトに、ハッとしたティガァが「そ、そんなのない!」と、しゃがむリュシェラから距離を取ってしまったのだ。
「……」
もちろんリュシェラには、それが嘘だとハッキリ分かっている。でも、唇を真一文字に結んだティガァを見る限り、話してくれる気がない事も、ハッキリしていた。
「何もないなら良いわ。でも、仲良しの2人が、いつも喧嘩をしているのは悲しいわ。だから、何かあるのなら、教えてくれたら嬉しいわ」
もう1度、そう言って微笑めば、ティガァが躊躇いがちに頷いた。リュシェラはそれを確認して、また立ち上がって、アラルトの方へ近付いていく。
─── 本当なら、子ども達で解決した方が良いわよね。
大人が変に介入すると、拗れてしまう事もあるのだ。まずは、2人で。それでどうにも成らなければ、その時はどうにかしてあげたい。
─── 見守るっていうのも、けっこう難しいのね。
付かず離れず。色々な様子を確認しながら、自分の立ち振る舞いを考えるのだ。それだけ気持ちや時間、労力を割けるのは、大切に想える相手だからだと痛感する。
リュシェラは立ち止まったままのティガァを振り向き、手招いた。
「なに、ぼぉーとしてたんだ? いっぱいあったから、取りに行くぞ!」
アラルトがやってきたティガァの袖をグイグイと引いた。
「じゃあ、2人で先に行ってきて」
リュシェラがティガァの手からバスケットを取って、中からナプキンを取りだした。
「今日はこれで包める量だけね。明日また行きましょう。だから、美味しそうな物を選んできてね」
えっ、え?と戸惑うティガァの背中を押せば、引っ張るアラルトに釣られて、ティガァもワイズベリーの方へ走り出す。
緩やかに傾斜のついた丘を駆けていく2人は、少し転びそうに成りながらも、楽しそうな様子なのだ。
そんな2人の微笑ましい姿に、胸が温かくなる。
─── きっと大丈夫よね。
来年の春には、魔族の子ども達が学ぶための場所に、2人も通い出すらしい。どこまで2人と共に居られるのかは分からない。だけど、その別れの日までは、見守っていたいと思うのだ。
そして別れた後も、この愛らしい2人が、変わらず互いを支えて、競い合って、時々喧嘩なんかもしながら、過ごして居ると良いと、リュシェラは今から願っていた。
そんな2人を思うだけでも、きっとリュシェラは、心が温かくなるはずだから。
─── 許される間だけでも、楽しんでおかなくちゃ。
またやってくる独りの日々を思いつつ、リュシェラは温かな陽の中で伸びをして、2人の後を追いかけた。
困ったように微笑んで、リュシェラは優しい声で言い聞かせる。2人がここに来るようになって、もう8ヶ月近くが経っていた。その間の2人は本当に仲良しで、互いにライバル心はあっても、相手のスゴイ所を素直に認め合っていた。それなのに、なぜかここ1~2週間は、2人のこんな喧嘩が絶えないのだ。
「どうしたの? アラルトと喧嘩をしちゃったの?」
リュシェラの言葉に心当たりがあるのか、ティガァが「だって……」と、もごもごとした声で言った。
『だって……』
言葉の先には、この2人の喧嘩の理由があるのだろう。だけど、結局リュシェラはその先を聞くことが、出来なかった。
「リュシェラさまぁーー!! 実、いっぱいあったよぉ~!」
駆け戻ってくるアラルトに、ハッとしたティガァが「そ、そんなのない!」と、しゃがむリュシェラから距離を取ってしまったのだ。
「……」
もちろんリュシェラには、それが嘘だとハッキリ分かっている。でも、唇を真一文字に結んだティガァを見る限り、話してくれる気がない事も、ハッキリしていた。
「何もないなら良いわ。でも、仲良しの2人が、いつも喧嘩をしているのは悲しいわ。だから、何かあるのなら、教えてくれたら嬉しいわ」
もう1度、そう言って微笑めば、ティガァが躊躇いがちに頷いた。リュシェラはそれを確認して、また立ち上がって、アラルトの方へ近付いていく。
─── 本当なら、子ども達で解決した方が良いわよね。
大人が変に介入すると、拗れてしまう事もあるのだ。まずは、2人で。それでどうにも成らなければ、その時はどうにかしてあげたい。
─── 見守るっていうのも、けっこう難しいのね。
付かず離れず。色々な様子を確認しながら、自分の立ち振る舞いを考えるのだ。それだけ気持ちや時間、労力を割けるのは、大切に想える相手だからだと痛感する。
リュシェラは立ち止まったままのティガァを振り向き、手招いた。
「なに、ぼぉーとしてたんだ? いっぱいあったから、取りに行くぞ!」
アラルトがやってきたティガァの袖をグイグイと引いた。
「じゃあ、2人で先に行ってきて」
リュシェラがティガァの手からバスケットを取って、中からナプキンを取りだした。
「今日はこれで包める量だけね。明日また行きましょう。だから、美味しそうな物を選んできてね」
えっ、え?と戸惑うティガァの背中を押せば、引っ張るアラルトに釣られて、ティガァもワイズベリーの方へ走り出す。
緩やかに傾斜のついた丘を駆けていく2人は、少し転びそうに成りながらも、楽しそうな様子なのだ。
そんな2人の微笑ましい姿に、胸が温かくなる。
─── きっと大丈夫よね。
来年の春には、魔族の子ども達が学ぶための場所に、2人も通い出すらしい。どこまで2人と共に居られるのかは分からない。だけど、その別れの日までは、見守っていたいと思うのだ。
そして別れた後も、この愛らしい2人が、変わらず互いを支えて、競い合って、時々喧嘩なんかもしながら、過ごして居ると良いと、リュシェラは今から願っていた。
そんな2人を思うだけでも、きっとリュシェラは、心が温かくなるはずだから。
─── 許される間だけでも、楽しんでおかなくちゃ。
またやってくる独りの日々を思いつつ、リュシェラは温かな陽の中で伸びをして、2人の後を追いかけた。
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