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第81話 妖刀ふたつなぎ
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フロアボスのピグバットを倒した俺は出現した宝箱に近付いていく。
「やりましたね、マツイさーん」
ククリも飛んでくる。
「まったく何がピグバットは弱いだよ。充分強かったぞ」
「えへへ、すいません」
反省しているのかしていないのかよくわからない表情で頭をかくククリ。
「それより宝箱早く開けましょうよ」
「今開けるよ」
ククリに急かされ宝箱を開けると中には刀が入っていた。
「おっ、やった武器だ」
ついさっき鉄の槍を壊してしまったからちょうどいい。
「これは攻撃力+10の妖刀ふたつなぎです。一度の攻撃で斬撃が二度発生します」
「え? 斬撃が二度? よくわからないんだけど」
「使ってみればわかりますからとりあえず下の階に行きましょうよ」
「ん、ああ」
俺は妖刀ふたつなぎとやらを握り締め地下七階層に下りていく。
◇ ◇ ◇
地下七階層に下りるとなんとも言えない獣臭がした。
「なんか野性味あふれるにおいだな」
「きっとボアのにおいです」
とククリが言う。
「ボア?」
「はい。このフロアに出るモンスターですよ」
「どんなモンスターなんだ?」
「それはですね――って後ろにいるじゃないですか。あれがボアですよっ」
振り返るとそこには体長二メートルくらいのイノシシのようなモンスターが部屋の壁を背に前足を動かして今にも向かってきそうな態勢でこっちを見ていた。
「おわっ、でかっ」
俺の声がきっかけだったのかボアが地面を蹴って突進してくる。
ガキィィィン。
俺はとっさに刀を体の前に出しボアの牙をこれで受け止めた。
さらにボアの巨体を刀一つで受け止めつつ押し返していく。
『ブフー……!』
ボアは荒い鼻息のような鳴き声を上げ俺を押し戻そうとするも前足と後ろ足がから回る。
あれ? こいつ見た目ほど強くないのかも。
そう思った俺は一旦ボアを押し飛ばして距離を取った。
そして再度突進してきたボアの横っ腹を真横に斬りつけた。
『ブフー……!』
浅いっ。
俺の刀はボアの分厚い脂肪に阻まれ致命傷は与えられなかった。
……と思ったのだが、次の瞬間ボアが横にどすんと倒れ込んだ。
「え?」
俺は倒れたボアを見下ろして刀傷が二つあることに気付く。
「何がどうなってるんだ?」
俺は一度しか斬りつけていないし俺の攻撃は浅かったはず。
なのにボアは二度斬られていてしかも二度目の傷はかなり深く致命傷だった。
その証拠にボアは泡状になって消えていく。
「マツイさんマツイさん。今のが妖刀ふたつなぎの効果ですよ」
「どういうことだ?」
「マツイさんが刀を振るうと一瞬遅れてさらに深い斬撃が相手を襲うんです。つまり一振りで二度攻撃が出来るんですよ」
「ほうー……」
よくわからずにうなずいてみる。
「今適当に返事してません? もうっ。でしたら今ここで刀を振ってみてください」
俺はククリに言われるがまま宙に向かって素振りをしてみた。
すると俺の太刀筋のすぐあとを追うように刀の残像が現れもう一度宙を斬った。
「おおっ! なんだこれっ」
俺はそれを面白く感じ何度も素振りをする。
その度に残像が一瞬遅れて現れた。
「わかりましたか? マツイさん」
「ああ、つまり一石二鳥みたいなことだな」
「……多分それ違います」
俺はこの後襲ってくるボアを退治しながらフロアを探索していった。
イノシシのような直線的な攻撃をしてくるボアの動きは読みやすくコツを掴むと簡単に対処できるようになった。
途中宝箱を二つみつけ中から攻撃力+7の鉄の斧と攻撃力+10の鋼のムチを取り出すが皮の袋はもうぱんぱんで入れる隙間がなかった。
しかし売値二千五百円と三千円の武器を捨てるのも惜しいので左手にそれらを持つと探索を進めた。
狭い通路を抜け大きな部屋に出ると、
「あっ、ボ――じゃなくてベアさんっ!」
ククリが声を上げ手を振る。
その先にはベアさんが足元にアイテムを並べて立っていた。
『よう、ククリ。マツイも。地下七階層まで来たか』
「はいっ。ベ――じゃなくってボアなんてマツイさんにかかればイチコロですよっ。ねっ、マツイさん」
「うーん、まあ」
事実その通りなのだが自慢するような真似ははばかられるので適当に相槌を打つ。
『そうか。マツイはレベルいくつになったんだ?』
「えっと今はレベル46です」
『46か。だったらなんかアイテム買ってけよ』
何が『だったら』なのかは不明だがとりあえず俺は持っているアイテムを売り払うことにした。
「ちょっと待ってくださいねベアさん」
そう言うと俺は持っていた武器を床に置き皮の袋からアイテムを取り出す。
「……とりあえずこれ全部買い取ってください」
『いいぜ。えーっと、鉄の斧に鋼のムチ、バタフライナイフとたいまつとワーム草、それから毒消し草と目薬草六つと解呪のお守りか……』
「あれ、マツイさん解呪のお守り売っちゃうんですか?」
「ああ。呪いのアイテムなんてそうそう出るもんじゃないし、何より五万で売れるなら売っといた方がいいだろ」
「マツイさんはお金に貪欲というか正直というか汚いというか……」
「現実的と言ってくれ」
『よしっ、占めて五万八千八百七十円だな。それでいいか?』
「はい、もちろん」
俺はトウキョウダンジョンに潜って約二日で五万八千八百七十円を手にしたのだった。
「やりましたね、マツイさーん」
ククリも飛んでくる。
「まったく何がピグバットは弱いだよ。充分強かったぞ」
「えへへ、すいません」
反省しているのかしていないのかよくわからない表情で頭をかくククリ。
「それより宝箱早く開けましょうよ」
「今開けるよ」
ククリに急かされ宝箱を開けると中には刀が入っていた。
「おっ、やった武器だ」
ついさっき鉄の槍を壊してしまったからちょうどいい。
「これは攻撃力+10の妖刀ふたつなぎです。一度の攻撃で斬撃が二度発生します」
「え? 斬撃が二度? よくわからないんだけど」
「使ってみればわかりますからとりあえず下の階に行きましょうよ」
「ん、ああ」
俺は妖刀ふたつなぎとやらを握り締め地下七階層に下りていく。
◇ ◇ ◇
地下七階層に下りるとなんとも言えない獣臭がした。
「なんか野性味あふれるにおいだな」
「きっとボアのにおいです」
とククリが言う。
「ボア?」
「はい。このフロアに出るモンスターですよ」
「どんなモンスターなんだ?」
「それはですね――って後ろにいるじゃないですか。あれがボアですよっ」
振り返るとそこには体長二メートルくらいのイノシシのようなモンスターが部屋の壁を背に前足を動かして今にも向かってきそうな態勢でこっちを見ていた。
「おわっ、でかっ」
俺の声がきっかけだったのかボアが地面を蹴って突進してくる。
ガキィィィン。
俺はとっさに刀を体の前に出しボアの牙をこれで受け止めた。
さらにボアの巨体を刀一つで受け止めつつ押し返していく。
『ブフー……!』
ボアは荒い鼻息のような鳴き声を上げ俺を押し戻そうとするも前足と後ろ足がから回る。
あれ? こいつ見た目ほど強くないのかも。
そう思った俺は一旦ボアを押し飛ばして距離を取った。
そして再度突進してきたボアの横っ腹を真横に斬りつけた。
『ブフー……!』
浅いっ。
俺の刀はボアの分厚い脂肪に阻まれ致命傷は与えられなかった。
……と思ったのだが、次の瞬間ボアが横にどすんと倒れ込んだ。
「え?」
俺は倒れたボアを見下ろして刀傷が二つあることに気付く。
「何がどうなってるんだ?」
俺は一度しか斬りつけていないし俺の攻撃は浅かったはず。
なのにボアは二度斬られていてしかも二度目の傷はかなり深く致命傷だった。
その証拠にボアは泡状になって消えていく。
「マツイさんマツイさん。今のが妖刀ふたつなぎの効果ですよ」
「どういうことだ?」
「マツイさんが刀を振るうと一瞬遅れてさらに深い斬撃が相手を襲うんです。つまり一振りで二度攻撃が出来るんですよ」
「ほうー……」
よくわからずにうなずいてみる。
「今適当に返事してません? もうっ。でしたら今ここで刀を振ってみてください」
俺はククリに言われるがまま宙に向かって素振りをしてみた。
すると俺の太刀筋のすぐあとを追うように刀の残像が現れもう一度宙を斬った。
「おおっ! なんだこれっ」
俺はそれを面白く感じ何度も素振りをする。
その度に残像が一瞬遅れて現れた。
「わかりましたか? マツイさん」
「ああ、つまり一石二鳥みたいなことだな」
「……多分それ違います」
俺はこの後襲ってくるボアを退治しながらフロアを探索していった。
イノシシのような直線的な攻撃をしてくるボアの動きは読みやすくコツを掴むと簡単に対処できるようになった。
途中宝箱を二つみつけ中から攻撃力+7の鉄の斧と攻撃力+10の鋼のムチを取り出すが皮の袋はもうぱんぱんで入れる隙間がなかった。
しかし売値二千五百円と三千円の武器を捨てるのも惜しいので左手にそれらを持つと探索を進めた。
狭い通路を抜け大きな部屋に出ると、
「あっ、ボ――じゃなくてベアさんっ!」
ククリが声を上げ手を振る。
その先にはベアさんが足元にアイテムを並べて立っていた。
『よう、ククリ。マツイも。地下七階層まで来たか』
「はいっ。ベ――じゃなくってボアなんてマツイさんにかかればイチコロですよっ。ねっ、マツイさん」
「うーん、まあ」
事実その通りなのだが自慢するような真似ははばかられるので適当に相槌を打つ。
『そうか。マツイはレベルいくつになったんだ?』
「えっと今はレベル46です」
『46か。だったらなんかアイテム買ってけよ』
何が『だったら』なのかは不明だがとりあえず俺は持っているアイテムを売り払うことにした。
「ちょっと待ってくださいねベアさん」
そう言うと俺は持っていた武器を床に置き皮の袋からアイテムを取り出す。
「……とりあえずこれ全部買い取ってください」
『いいぜ。えーっと、鉄の斧に鋼のムチ、バタフライナイフとたいまつとワーム草、それから毒消し草と目薬草六つと解呪のお守りか……』
「あれ、マツイさん解呪のお守り売っちゃうんですか?」
「ああ。呪いのアイテムなんてそうそう出るもんじゃないし、何より五万で売れるなら売っといた方がいいだろ」
「マツイさんはお金に貪欲というか正直というか汚いというか……」
「現実的と言ってくれ」
『よしっ、占めて五万八千八百七十円だな。それでいいか?』
「はい、もちろん」
俺はトウキョウダンジョンに潜って約二日で五万八千八百七十円を手にしたのだった。
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