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第97話 スライム?
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お風呂から上がると俺はここで初めてスマホを確認した。
俺には友達も彼女もいないのでスマホを常に肌身離さず持ち歩き定期的に見るという習慣がない。
自分の部屋の机の上に置きっぱなしにしているのだ。もちろんロックもかけていない。
「おっ、着信がある」
スマホの液晶画面には知らない番号からの着信が一昨日、昨日と二件あった。
おそらく珠理奈ちゃんからだろう。
折り返した方がいいのかな?
スマホの画面とにらめっこしつつ考える。
着信のあった時間帯はどちらも夜の七時頃。今の時刻は夜の六時五十分。
なので今日も連絡があるかもしれないから待ってみるか、という結論に至る。
俺はダンジョンから持ち帰った役に立たない戦利品を大きなゴミ袋に一旦入れて押し入れに押し込むとベッドの上に横になった。
快眠枕を頭の下に置いて目を閉じる。
ほんのちょっと横になるつもりだったのだが五日半のダンジョン探索で意外と疲れがたまっていたのか俺はそのまま寝入ってしまった。
◇ ◇ ◇
ピリリリリ……。ピリリリリ……。
スマホの着信で目が覚める。
時計を確認すると七時ジャスト。すっきりした気分でスマホを手に取った。
画面にはさっきの知らない番号が表示されている。
俺が電話に出ると、
「はい。もしもし」
『……もしもし、珠理奈です』
やっぱり知らない番号の主は珠理奈ちゃんだった。
「あー珠理奈ちゃん、チャーハンありがとう。美味しかったよ」
『……え、もしかして今食べたんですか?』
「うん、そうだけど」
『……お腹、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だよ」
冷蔵庫に入っていたんだから二、三日は問題ないだろう。
『……そうですか。あ、秀喜おじさんの番号、勝手にお母さんから教えてもらいましたけど』
「全然いいよ。ところで近くに初子姉ちゃんいる?」
『……いえ、まだ仕事から帰ってきていません』
「あ、そうなんだ。それならいいんだ」
初子姉ちゃんがいるとダンジョンの話が出来ないからな。
「あのさ、約束してたお土産だけど……例えばどんなのがいいとかある?」
女子中学生が喜びそうなものがわからないからいっそ直接訊いてみることにした。
『……例えば、ですか?』
「うん」
『……』
電話口で悩んでいる様子の珠理奈ちゃん。
『……』
いなくなってしまったんじゃないかというくらい黙り込む。
「じ、じゃあ、銀色のスカートとかどう? 履いてると自然に怪我とかが治っていくっていう特殊な効果もあるんだけど」
『……銀色のスカートですか? わたしあまり派手なのは好きじゃないんです、すみません』
「いやいいよ。なんとなくそんな気はしてたから」
珠理奈ちゃんは背がすらっと高く割と美人だと思うが着ている服は地味目なものが多いからそう言うと思っていた。
「一応訊くけど現金はいらないよね」
『……お金ってことですか?』
「そう。ダンジョンで三万円くらい稼いだんだけど」
『……わたし、秀喜おじさんからお金をもらうつもりはありませんよ。だってお年玉ももらったことないじゃないですか』
「そ、そうだね」
本人は自覚がないのだろうが珠理奈ちゃんの言葉で俺は少し傷付く。
『……そういえばポチはどうしたんですか? まだ女性のお友達に預かってもらっているんですか?』
「ん? うん、そうだよ。明日にでも一旦返してもらおうかなと思ってるけど……」
まあ、高木さんに訊いてみないことにはなんとも言えないが。
『……ふーん、そうですか』
「うん」
『…………わかりました。わたしスライムがいいです』
何がわかったのか珠理奈ちゃんは突然そんなことを言い出した。
「え? スライム? ってどういうこと?」
『……トウキョウダンジョンにはスライムが出るんですよね、それを捕まえてきてください』
「え、なんで?」
『……もちろんペットとして飼うんです』
「いや、そんなむちゃな――」
『……それが駄目ならお母さんに全部バラします』
「それはやめてよっ」
珠理奈ちゃんはいつもはおとなしくて優しい子なのにたまに突拍子もないことを言って俺を困らせる。
『……でしたらスライムを連れてきてください』
「うーん……でも騒ぎになったら面倒だからさ」
『……大丈夫です。わたしは誰かに見せびらかしたりするつもりはありませんから。家の中でこっそり飼います』
「うーん……本当に?」
『……信じてください』
「ふ~……わかった。なんとかしてみる」
珠理奈ちゃんの熱意プラス脅しに負け俺はまた面倒なことを約束してしまった。
俺には友達も彼女もいないのでスマホを常に肌身離さず持ち歩き定期的に見るという習慣がない。
自分の部屋の机の上に置きっぱなしにしているのだ。もちろんロックもかけていない。
「おっ、着信がある」
スマホの液晶画面には知らない番号からの着信が一昨日、昨日と二件あった。
おそらく珠理奈ちゃんからだろう。
折り返した方がいいのかな?
スマホの画面とにらめっこしつつ考える。
着信のあった時間帯はどちらも夜の七時頃。今の時刻は夜の六時五十分。
なので今日も連絡があるかもしれないから待ってみるか、という結論に至る。
俺はダンジョンから持ち帰った役に立たない戦利品を大きなゴミ袋に一旦入れて押し入れに押し込むとベッドの上に横になった。
快眠枕を頭の下に置いて目を閉じる。
ほんのちょっと横になるつもりだったのだが五日半のダンジョン探索で意外と疲れがたまっていたのか俺はそのまま寝入ってしまった。
◇ ◇ ◇
ピリリリリ……。ピリリリリ……。
スマホの着信で目が覚める。
時計を確認すると七時ジャスト。すっきりした気分でスマホを手に取った。
画面にはさっきの知らない番号が表示されている。
俺が電話に出ると、
「はい。もしもし」
『……もしもし、珠理奈です』
やっぱり知らない番号の主は珠理奈ちゃんだった。
「あー珠理奈ちゃん、チャーハンありがとう。美味しかったよ」
『……え、もしかして今食べたんですか?』
「うん、そうだけど」
『……お腹、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だよ」
冷蔵庫に入っていたんだから二、三日は問題ないだろう。
『……そうですか。あ、秀喜おじさんの番号、勝手にお母さんから教えてもらいましたけど』
「全然いいよ。ところで近くに初子姉ちゃんいる?」
『……いえ、まだ仕事から帰ってきていません』
「あ、そうなんだ。それならいいんだ」
初子姉ちゃんがいるとダンジョンの話が出来ないからな。
「あのさ、約束してたお土産だけど……例えばどんなのがいいとかある?」
女子中学生が喜びそうなものがわからないからいっそ直接訊いてみることにした。
『……例えば、ですか?』
「うん」
『……』
電話口で悩んでいる様子の珠理奈ちゃん。
『……』
いなくなってしまったんじゃないかというくらい黙り込む。
「じ、じゃあ、銀色のスカートとかどう? 履いてると自然に怪我とかが治っていくっていう特殊な効果もあるんだけど」
『……銀色のスカートですか? わたしあまり派手なのは好きじゃないんです、すみません』
「いやいいよ。なんとなくそんな気はしてたから」
珠理奈ちゃんは背がすらっと高く割と美人だと思うが着ている服は地味目なものが多いからそう言うと思っていた。
「一応訊くけど現金はいらないよね」
『……お金ってことですか?』
「そう。ダンジョンで三万円くらい稼いだんだけど」
『……わたし、秀喜おじさんからお金をもらうつもりはありませんよ。だってお年玉ももらったことないじゃないですか』
「そ、そうだね」
本人は自覚がないのだろうが珠理奈ちゃんの言葉で俺は少し傷付く。
『……そういえばポチはどうしたんですか? まだ女性のお友達に預かってもらっているんですか?』
「ん? うん、そうだよ。明日にでも一旦返してもらおうかなと思ってるけど……」
まあ、高木さんに訊いてみないことにはなんとも言えないが。
『……ふーん、そうですか』
「うん」
『…………わかりました。わたしスライムがいいです』
何がわかったのか珠理奈ちゃんは突然そんなことを言い出した。
「え? スライム? ってどういうこと?」
『……トウキョウダンジョンにはスライムが出るんですよね、それを捕まえてきてください』
「え、なんで?」
『……もちろんペットとして飼うんです』
「いや、そんなむちゃな――」
『……それが駄目ならお母さんに全部バラします』
「それはやめてよっ」
珠理奈ちゃんはいつもはおとなしくて優しい子なのにたまに突拍子もないことを言って俺を困らせる。
『……でしたらスライムを連れてきてください』
「うーん……でも騒ぎになったら面倒だからさ」
『……大丈夫です。わたしは誰かに見せびらかしたりするつもりはありませんから。家の中でこっそり飼います』
「うーん……本当に?」
『……信じてください』
「ふ~……わかった。なんとかしてみる」
珠理奈ちゃんの熱意プラス脅しに負け俺はまた面倒なことを約束してしまった。
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