文字サイズ
小 中 大 特大
10 / 17

10 死に戻って魔物討伐へ

 暗闇に堕ちた後、私の視界は急に光に包まれる。
 すると、世界に色が戻ってくる。

「……っ!?」

 私は周りを見渡した。
 すると、そこは見に覚えのある公爵家の衣装部屋の室内だった。

「……? アリエルお嬢様、どうかしましたか?」

 私の動揺に気付いた一人のメイドが尋ねてくる。

「……い、いえ、何でもありません」

 確かに私は死んだはず……また、以前と同じような事が起きて頭は混乱するばかりだ。
 ひとまず、私は綺麗なドレスに着替え終わって衣装部屋から出る事にした。

 衣装部屋から出ると、待機していたポールが目を輝かせながら話しかけてくる。

「わぁ! とてもお似合いです! アリエルお嬢様!」

 ポールは以前と同様な反応をしてくる。

「ありがとうございます」

 今回は恥ずかしがることなく、返答を返す。
 すると、隣で待機していたレイモンドも続けて話す。

「えぇ、とてもお似合いですアリエルお嬢様。……さ、ソフィアお嬢様のご用件も終わった頃合いでしょうし、公爵様の元へ向かいましょう」
「……そう、ですね」

 私は一度繰り返したやり取りを終えた後、以前と同様に三人で大広間へと向かう。
 到着するとソフィアと義父が大広間で話しており、私達は以前と同様のやり取りを行った。

(……また、あのやり取りをする気になれないわ)

 以前は私の苛立ちを二人に向けて爆発させたのだけれど、ある程度の苛立ちは既に解消されている。
 なので、再び怒りをぶつける気にはなれなかった――

「――それでは座ると良い、今この近隣で起きている事を共有させてもらおう」

 それから義父は近隣で起きている魔物の被害について話始める。
  
 「我らの公爵領域内にある農業を営んでおる者達が軒並み魔物の被害にあっているのだ。連日近隣の騎士隊で対応しておるが、数が多く鎮圧できないようでな……今は農業を営む者達を退避させて様子を見ている状況なのだ」

 義父はソフィアに視線を向けて続ける。

「ソフィアの治療魔法を持ってしても、負傷者の治療が追い付いておらぬ状態だ。……そこでアリエル、お前の力を借りる為に街の騎士隊に探させたのだ」

 前は力と言われても何のことか全く分からなかったが……今なら分かる。

「……分かりました、私がその騎士隊に協力すればいいのですね?」
「ほう、話が早くて助かるではないか。……だが、お前の死んだ親が残した文献には封印されていると記載されていたのだが?」

 私の本当のお父様に対して非常に無礼な物言いに、私は少し苛立ちを感じてしまう。

「……ご心配いりません」

 私は義父に向かって右手を向けて――

『アイスニードル』

 ――シュンッ!
 尖った氷を義父の顔にかすれるように放出した。
 さすがに顔に風穴を開ける事はできなかったが、頬にかすり傷ぐらいはつけてやった。

「うわっ! ……あ、危ないではないか!」

 義父の頬からツーと血が滴り落ちる。

「お父様っ!?」

 ソフィアは席を立ちあがり、義父に近づいていく。

「……何をそんなに驚いているのですか? 見ての通り、魔法を使って見せたのです。何か問題でも?」

 すると、近くで待機していたポールとレイモンドも反応する。

「あ、アリエルお嬢様! やはり魔法使いの家系……魔法が使えたのですか!?」
「……おやおや、力は封印されていたと聞いておりましたが……既に解放されているのですね」

 ソフィアは義父の傍に到着すると、頬に手を添え――

『ヒール』

 ――すると、ソフィアの魔法により義父の頬にあった傷が塞がっていく。
 残った血を小さな布でソフィアが拭う。

「すまないな、ソフィア」

 私が以前ポルンに使った治療魔法をソフィアも使えるみたいね。

「……だが、先ほどの魔法では治療に使えないではないか。お前は治療魔法は使えぬのか?」
「使えるわよ。なんならもう一度、傷つけて証明してあげようかしら」

 私はそう呟き義父に向かって右手を向けると――

「……いや、やめておこう。先ほどの魔法でお前に力がある事はわかった」

 義父は手で私を静止してくる。

「……そう、残念ね」
「よし……では早速、私の方から例の魔物が暴れている近隣領地の者と騎士隊に連絡を入れておく。数日したらすぐに向かってもらうぞ、アリエル!」
「……えぇ、わかっているわよ」

 こうして、私は魔物討伐に向かう事になった。
 どちらにしても、この公爵家から出られるのでだから私としては有難い。

「ソフィア、お前にもアリエルに同行してもらう事になるが、くれぐれも怪我のないようにな」
「わかっているわ、お父様。心配しないで」
「……っ」

 二人のやり取りを見て、私の胸にモヤモヤが募つのる。
 私にもお父様やお母様がいれば、あんな風に私の心配をしてくれるのだろうか……と。

 ――ガラッ
 私は席を立ち、ポールの方をチラっと視線を向けた後、義父に尋ねる。

「……それで、私の部屋はどこかしら? それにポールの部屋も用意してほしいのだけれど?」
「ん? ……あぁ、レイモンド。開いている部屋に案内してやれ」

 義父はソフィアとのやり取りに夢中だったので、話半分で返事を返す。
 娘離れが出来ていないのだろうか……とても気持ち悪い。

「それではアリエルお嬢様、お部屋へ案内致します。ついてきてくださいますか?」

 そんな私にレイモンドは話しかけてくる。

「そうね。……ポール、行きましょ」
「はい! アリエルお嬢様!」

 こうして私達は二人を残して大広間を後にした。



 大きな通路をレイモンドについていく形で歩いている中、私は思考を巡らしていた。

(前回も、その前も寝ている間に誰かに殺されている……そうなると、誰かに一緒にいて貰った方が良いのかしら?)

 そう考えた私は、レイモンドに提案する。

「レイモンド、私の部屋だけど……ポールと一緒の部屋にするってのは出来る?」

 すると、途端にポールが驚きの声を上げる。

「ふぇっ!? あ、アリエルお嬢様、何を言い出すんですか!?」
「……驚き過ぎよ、ポール。勘違いしないでほしいのだけれど、一緒の空間にいるだけで、室内では何か仕切り壁で区切るような感じでそれぞれの生活空間は確保出来るようにしたいの。……身の安全の為に」

 すると、先ほど私が義父から襲われようとしていた事をポールも思い出したのか、驚きの表情から真剣な表情に変わる。

「……確かに、そうですね」
「ねぇレイモンド……そういった部屋にできるかしら?」

 少し考えたレイモンドはすぐに答える。

「えぇ、造作もありません。少し時間を頂ければご用意致しましょう」

 レイモンドは即答してくる。
 ……なんだかレイモンドは、お願いした事は何でもしてくれそうな、そんな不思議な魅力が滲み出ている執事だなっと思ってしまう。



 それからレイモンドに少し部屋を改造すると言われ、公爵家の中庭で待機する私とポール。

「……はっ!  やっ!!」

 先ほどから剣を取り出して、凛々しい表情をしながら稽古をしているポールを眺める。

「ポールって……剣を持つと何か雰囲気が変わるわね」

 ふと私が呟くと、ポールの動きが止まる。
 以前、スラム街で私達を守ってくれた時には分からなかったが、ポールは普段と剣を持つと雰囲気が変わるようだ。

「……え? あはは……そう言われると……確かに。剣を持つと……昔、家族を守る事が出来なかった弱い私から切り離す事が出来るんですよ」
「……っ!? ……そう、だったのね」

 何の気なしに話しかけた言葉だったが、ポールの辛い過去が垣間見えた気がした。
 踏み込んで良いのか悩んでいると、ポールから話しかけてくる。

「……あ、アリエルお嬢様、申し訳ありません。湿っぽい話になってしまいましたね。家族の事ならもう大丈夫ですからご安心ください」
「……私も、昔に両親を無くしているわ。……強いのね、ポールは」
「ありがとうございます。ですが、私はもっと強くなります。なにしろ、今はアリエルお嬢様をお守りする専属騎士という使命を持っていますからね!」

 ポールは満面の笑みを浮かべて答えてくる。

「……えぇ、そうだったわね」

 私も自然と笑みを浮かべて、ポールの稽古風景をレイモンドが来るまで眺めるのだった。
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になったけど、今度こそ家族を守ります! 表紙

悪役令嬢になったけど、今度こそ家族を守ります!

前世で幼くして両親を亡くした私は、死の間際に願った。 「もう一度、お父さんとお母さんの子供に生まれたい」と。 そして次に目を覚ますと、そこは乙女ゲーム『恋とき』の世界。 私は――悪役令嬢ヒメリアだった。 しかも、このままでは両親を失い、悪役令嬢として孤独な人生を送ることになる。 そんな未来、絶対に嫌! 今度こそ大切な家族を守って、幸せに生きてみせます!
ファンタジー 完結 長編
文字数 126,554
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎ 表紙

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 576,733
婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます 表紙

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 91,057
「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」 表紙

「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」

「君が好きだ。明日の舞踏会、俺の婚約者として踊ってくれないか?」 五歳からの幼馴染で、ずっと慕っていた侯爵令息に告白された子爵令嬢レイシア。 夢が叶ったと信じた。 ——彼の友人達が笑いながら現れ、賭けた金貨の話を始めるまでは。 向けられる同情、好奇の視線、身分を弁えろという非難。もう誰も信じないと心を閉ざしたレイシア。 これはそんなレイシアが、もう一人の幼馴染アレンの助けを借り、人を信じる勇気を、人を愛する勇気を取り戻していく物語。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 100,275
婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します 表紙

婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します

 王都の大広間に、どよめきが広がった。  天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。 「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」  高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。  周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。  ――ああ、ついに来たのね。
恋愛 完結 長編
文字数 12,323
妻は病弱だと夫が言いふらしていたので、お言葉に甘えて療養に出かけます 〜あなたがついた三つの嘘、ひとつ残らず叶えて差し上げますね〜 表紙

妻は病弱だと夫が言いふらしていたので、お言葉に甘えて療養に出かけます 〜あなたがついた三つの嘘、ひとつ残らず叶えて差し上げますね〜

伯爵夫人ミレイユは、結婚してから一度も夜会に出たことがない。夫のディートリヒが「妻は病弱で外に出られない」と社交界に言いふらしていたからだ。本当のミレイユは風邪ひとつ引かない体で、ただ屋敷に閉じ込められていただけだった。 夫の隣で夜会に出ているのは従妹のカミラ。夫は彼女に「妻とはもうすぐ離縁する」と囁き、周囲には「妻は浪費家で困っている」とこぼしていた。 そのすべてを知った日、ミレイユは静かに微笑んだ。 「旦那様がそうおっしゃるなら、お言葉に甘えて療養に参りますね」 向かった先は王家の保養地。そこを治める公爵ルシアンは、診察を終えて首をかしげた。 「どこも悪くありませんね。悪いのは、あなたを閉じ込めていた場所のほうだ」 病弱なはずの伯爵夫人は、保養地で誰より元気に過ごす。浪費家のはずの伯爵夫人は、盛大に「散財」を始める。ただしその使い道は、夫が隠していたある書類の買い集めだった。 嘘がひとつ本当になるたびに、夫の言葉は社交界で信用を失っていく。そして最後に残った嘘は「もうすぐ離縁する」。 旦那様、あなたがついた三つの嘘、ひとつ残らず叶えて差し上げます。
恋愛 完結 長編
文字数 80,143
義妹を優先した夫へ。引継書と離縁状を置いて去ります。二度と戻りません 表紙

義妹を優先した夫へ。引継書と離縁状を置いて去ります。二度と戻りません

貴族社会の政略結婚から三年。オルテシアは夫ゴドフロワから「愛嬌のない冷たい女」「義妹クラリーチェを見習え」と侮辱され、屋敷のすべての差配と借財の返済を押しつけられながら、冷遇に耐え続けていた。夫は血の繋がらない義妹の贅沢と我儘を際限なく甘やかし、ついにオルテシアの亡き母の形見である宝飾品までクラリーチェに与えてしまう。 心が完全に冷え切ったオルテシアは、感情を取り乱すこともなく、周到に準備を進めていた。夫と義妹が華やかな夜会へと出かけた夜、屋敷を完璧に整え、誰が見ても非の打ち所がない業務引継書と署名済みの離縁状を机に残し、夜闇に紛れて屋敷を去る。 身一つで自立を図るオルテシアを保護したのは、かつて窮地を救った隣国の冷徹大公カジミールだった。カジミールは彼女の類まれな差配の才と静かな気品を深く慈しみ、惜しみない敬意と甘い執着をもって彼女を溺愛し始める。 一方、オルテシアという「有能な土台」を失った伯爵家は、義妹の際限ない浪費と無能な夫の怠惰により、瞬く間に崩壊の一途をたどる。「いつでも頭を下げて戻ってくる」と高をくくっていたゴドフロワは、すべてを失って初めて自らの愚かさに気づき、狂乱状態でオルテシアを探し求める。しかし、再会した彼女の隣には、誰も逆らえぬ絶対的な庇護者カジミールがいた。さらに、義妹クラリーチェが抱えていた戦慄の正体と、夫が長年信じ込んでいた「思い出の少女」の真実が白日の下に晒される。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 95,354
王妃なんて絶対に嫌です! ~前世で働きすぎた悪役令嬢は、今世こそぐーたら暮らしたい~ 表紙

王妃なんて絶対に嫌です! ~前世で働きすぎた悪役令嬢は、今世こそぐーたら暮らしたい~

前世で働きすぎた末に、乙女ゲームの悪役令嬢アデライードへ転生。 今世こそ、無理せず、頑張りすぎず、美味しいものを食べてのんびり暮らしたい。 何より、忙しそうな王妃なんて絶対に嫌! ところが婚約者の王太子ジェラールは、そんな彼女をなぜか気に入り始めて――。 頑張らない悪役令嬢と真面目すぎる王太子の、サクサク読める異世界ラブコメ。
恋愛 完結 短編
文字数 38,634