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二十九輪目
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その後、戻ってきた樋之口さんによって行われた裁判では夏月さんの主張は認められることなどなく。
めでたく(?)有罪となった夏月さんが猫耳メイド姿になったりなど。
お祝いされるというよりは、みんなのオモチャになっているような感じであった。
別に夏月さんがいじめられているわけではなく、話を聞いていると他の人の誕生日を祝うときも祝われる人は似た感じらしい。
樋之口さんが誕生日の時にはバニーを着た(着せられた)らしく、その写真を見せてもらった。
写真を見せてくれた月居さんは樋之口さんに頭叩かれていたけど。
「それじゃ、私たちはそろそろ帰るわね」
日も落ち、空からオレンジが無くなってきた頃。
樋之口さんはそう口にし、片付けを始めていく。
「私はこのまま泊まっていきたいなー」
「アホなこと言ってないの。明日、仕事でしょ」
「みんなと収録だけどね」
「そうそう。だから泊まって一緒に行けば楽ちんだよ?」
「春ならまだしも、私たちが泊まると邪魔になるでしょ」
何故、高瀬さんなら平気で他はダメなのだろうか。
ここから行くのが楽であるならば、泊まっていけばいいのに。
いや、全員分の布団があったかな……?
それに夏月さんが引き止めようとする様子はないし、高瀬さんたちも帰り支度をほぼ終えている。
ここから引き止める勇気は俺にないため、気付けば玄関で見送った後だった。
「片付けは俺がやっておくから、夏月さんは着替えてきていいよ」
それほど散らかってはいないが、それなりに片付けは必要である。
人が集まるとその後に片付けが待っているのは宿命なのだが、今回は今までと比べたらとても楽な部類だ。
まずは空いた食器などをシンクに運んでいく。
それらを水に浸した後はゴミを分別して袋に──。
「夏月さん?」
着替えに行っていたものだと思っていた夏月さんにいきなり後ろから抱きつかれ、結構驚いた。
まだメイド服姿であったが、気に入ってるのだろうか。
声をかけても反応があるわけじゃなく、何か言ってくるわけでもない。
移動するときは合わせてくれるため、少し動きにくいがこのまま片付けを進めて行くことに。
後は指定の日にゴミを出すとこまでまとめ終え、皿も洗い、少し遅い時間だが簡単に掃除機もかけた。
残った食べ物は冷蔵庫にしまったし、こんなもんで十分だろう。
後ろにひっついている夏月さんを一度剥がし、正面に持ってきて抱きしめる。
「それで、どうしたの?」
「…………もう少し、このままがいい」
「立ってるのも疲れるし、ソファーに移動しよっか」
念のため毛布を二つ、持ってきて手の届くところに置いておく。
先に座った俺の上に向かい合う形で夏月さんも乗っかり、またギュッと抱きしめてくる。
これ、側からだと対面座位で入ってるようにも見えるなと思ったが、何となく口に出すのは憚られた。
先ほどまで楽しそうにしていたというのに、どうしたのかと思ったが。
楽しかった分、みんなが帰って寂しさが押し寄せてきたのだろう。
俺も楽しい時が永遠に続けばいいな、と思うことは何度だってある。
でも実際そういうわけにはいかないのだ。
こんなことしかできないが、それで寂しさが紛れるのならと抱きしめ、頭を撫でていたが。
いつの間にやら眠っていたようで。
起こさないよう気をつけつつ毛布を手に取り、ソファーに横たわって毛布をかける。
本当はベッドまで運びたいが、服をしっかり掴んで離さないため。
途中で起こしてしまいそうだから諦めた。
「おやすみ、夏月さん」
きっとすぐ、楽しいことがやってくるはずだから。
どうやら自身で気づかないうちに相当疲れていたようで。
横になったら睡魔が押し寄せ、半ば気絶するように眠りについた。
めでたく(?)有罪となった夏月さんが猫耳メイド姿になったりなど。
お祝いされるというよりは、みんなのオモチャになっているような感じであった。
別に夏月さんがいじめられているわけではなく、話を聞いていると他の人の誕生日を祝うときも祝われる人は似た感じらしい。
樋之口さんが誕生日の時にはバニーを着た(着せられた)らしく、その写真を見せてもらった。
写真を見せてくれた月居さんは樋之口さんに頭叩かれていたけど。
「それじゃ、私たちはそろそろ帰るわね」
日も落ち、空からオレンジが無くなってきた頃。
樋之口さんはそう口にし、片付けを始めていく。
「私はこのまま泊まっていきたいなー」
「アホなこと言ってないの。明日、仕事でしょ」
「みんなと収録だけどね」
「そうそう。だから泊まって一緒に行けば楽ちんだよ?」
「春ならまだしも、私たちが泊まると邪魔になるでしょ」
何故、高瀬さんなら平気で他はダメなのだろうか。
ここから行くのが楽であるならば、泊まっていけばいいのに。
いや、全員分の布団があったかな……?
それに夏月さんが引き止めようとする様子はないし、高瀬さんたちも帰り支度をほぼ終えている。
ここから引き止める勇気は俺にないため、気付けば玄関で見送った後だった。
「片付けは俺がやっておくから、夏月さんは着替えてきていいよ」
それほど散らかってはいないが、それなりに片付けは必要である。
人が集まるとその後に片付けが待っているのは宿命なのだが、今回は今までと比べたらとても楽な部類だ。
まずは空いた食器などをシンクに運んでいく。
それらを水に浸した後はゴミを分別して袋に──。
「夏月さん?」
着替えに行っていたものだと思っていた夏月さんにいきなり後ろから抱きつかれ、結構驚いた。
まだメイド服姿であったが、気に入ってるのだろうか。
声をかけても反応があるわけじゃなく、何か言ってくるわけでもない。
移動するときは合わせてくれるため、少し動きにくいがこのまま片付けを進めて行くことに。
後は指定の日にゴミを出すとこまでまとめ終え、皿も洗い、少し遅い時間だが簡単に掃除機もかけた。
残った食べ物は冷蔵庫にしまったし、こんなもんで十分だろう。
後ろにひっついている夏月さんを一度剥がし、正面に持ってきて抱きしめる。
「それで、どうしたの?」
「…………もう少し、このままがいい」
「立ってるのも疲れるし、ソファーに移動しよっか」
念のため毛布を二つ、持ってきて手の届くところに置いておく。
先に座った俺の上に向かい合う形で夏月さんも乗っかり、またギュッと抱きしめてくる。
これ、側からだと対面座位で入ってるようにも見えるなと思ったが、何となく口に出すのは憚られた。
先ほどまで楽しそうにしていたというのに、どうしたのかと思ったが。
楽しかった分、みんなが帰って寂しさが押し寄せてきたのだろう。
俺も楽しい時が永遠に続けばいいな、と思うことは何度だってある。
でも実際そういうわけにはいかないのだ。
こんなことしかできないが、それで寂しさが紛れるのならと抱きしめ、頭を撫でていたが。
いつの間にやら眠っていたようで。
起こさないよう気をつけつつ毛布を手に取り、ソファーに横たわって毛布をかける。
本当はベッドまで運びたいが、服をしっかり掴んで離さないため。
途中で起こしてしまいそうだから諦めた。
「おやすみ、夏月さん」
きっとすぐ、楽しいことがやってくるはずだから。
どうやら自身で気づかないうちに相当疲れていたようで。
横になったら睡魔が押し寄せ、半ば気絶するように眠りについた。
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