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四十二輪目
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「優ちゃん、ゲーム上手いね」
「いや、秋凛さんほどじゃ無いですよ」
確かに、一度やっているから多少なり慣れている理由で選んだけども。
いまなら分かる。
何のゲームを選んでいたとしても、それほど疲労感に変わりはなかったと。
やっているこのゾンビゲーム、過去に秋凛さんが一番難易度の高いものをノーダメクリアする動画配信やっていたのを思い出した。
ノーマルの難易度なんて秋凛さんからしてみるとヌルゲーもいいところであろう。
買っているのだから、ゲーマーとして有名な秋凛さんは当然やり込んでいるわけで。
どれをやろうが秋凛さんの俺に対する認識は変わらなかったのだ。
……何だかんだで介護されるプレイも悪く無いので、これはこれで楽しんでいる。
無双ゲーをやっている様な爽快感を抱いた。
「ん? 秋凛さん、一回ストップでお願いします」
まだ雑魚的がいるのだが、電話がかかってきたので一時停止をしてもらう。
「もしもし」
『あ、優君? いま大丈夫?』
「うん、大丈夫」
『レッスン終わったところなんだけど、これから私とハルでシュリの見舞いに行こうかなと思ってて』
「え? ……あ、もうそんな時間か」
時計を見ればもう六時であり、いつの間にか外も夕日に染まっている。
最近、少しずつ日が伸びてきたのに加え、ゲームに集中していて時間が経っているのに気が付かなかった。
『優君、いま何してるの?』
「秋凛さんからゲーム借りて遊んでたとこ」
『邪魔しちゃったかな?』
「いや、そろそろ帰ろうと思ってたから丁度良かったよ。秋凛さんも寝てるから、今日の見舞いは止しといた方がいいと思う。…………秋凛さん、家のスペアキーってあります?」
通話口を遠ざけ、音を拾われないよう小声で秋凛さんに尋ねれば。
コクリと首を縦に振っているが、どうして必要か分からず不思議そうにしている表情がまた可愛い。
「いつ帰ってもいいようにスペアキー預かってるから、返すのは夏月さんにお願いするね」
『あ、うん。それはいいけど』
「明日もレッスン?」
『うん、そうだよ』
「秋凛さん、良くなってると思うけど微妙なとこかな。もし明日来ても病み上がりだから無理はさせないようにお願い」
『りょーかい! ……あ、もう暗くなってきたから近くまで迎えに行くよ! また連絡するからもう少し待ってて!』
「分かった。それじゃ」
電話を切り、時間も無くなったのでこのチャプターをさっさと終わらせようとコントローラーに持ち替えたのだが。
ゲームが再開されないので秋凛さんを見てみれば、よく分からない表情でこちらを見ていた。
「どうかしましたか?」
「ううん、何でも無いよ」
「そうですか? ……あ、もし明日レッスンに行くのなら話を合わせてもらえると助かります」
「うん、ありがとう」
「いえ。二人のちょっとした秘密ですね」
「秘密……ふふっ、そうだね」
「近くまで来たと連絡あったのでそろそろ帰りますね」
「夏月ちゃんいるから大丈夫だと思うけど、気を付けてね」
「はい。……あ、うどんつゆと野菜スープは冷蔵庫に入れれば数日は持つと思います。そんな量もあるわけじゃ無いですけど、無理しない程度に早めに食べてもらえたらと」
「今日、心配して見舞いに来て、ご飯まで作ってくれたのとても嬉しかった。ありがとう」
最初よりも打ち解けたからか、秋凛さんの悩みが軽くなったからか。
自然な笑みを浮かべながら告げられた感謝の言葉に胸が高鳴ってしまう。
もし俺がフリーであったのなら、勢いで告白して振られる流れが出来ているところである。
「それじゃ、また」
「……! またね!」
最後、とても嬉しそうにしていたけど何かあったのだろうか。
特別何かしたわけでもなく、ただの別れの挨拶だと思うのだが……。
理由は分からないけど、秋凛さんが元気になったのなら良かった。
「いや、秋凛さんほどじゃ無いですよ」
確かに、一度やっているから多少なり慣れている理由で選んだけども。
いまなら分かる。
何のゲームを選んでいたとしても、それほど疲労感に変わりはなかったと。
やっているこのゾンビゲーム、過去に秋凛さんが一番難易度の高いものをノーダメクリアする動画配信やっていたのを思い出した。
ノーマルの難易度なんて秋凛さんからしてみるとヌルゲーもいいところであろう。
買っているのだから、ゲーマーとして有名な秋凛さんは当然やり込んでいるわけで。
どれをやろうが秋凛さんの俺に対する認識は変わらなかったのだ。
……何だかんだで介護されるプレイも悪く無いので、これはこれで楽しんでいる。
無双ゲーをやっている様な爽快感を抱いた。
「ん? 秋凛さん、一回ストップでお願いします」
まだ雑魚的がいるのだが、電話がかかってきたので一時停止をしてもらう。
「もしもし」
『あ、優君? いま大丈夫?』
「うん、大丈夫」
『レッスン終わったところなんだけど、これから私とハルでシュリの見舞いに行こうかなと思ってて』
「え? ……あ、もうそんな時間か」
時計を見ればもう六時であり、いつの間にか外も夕日に染まっている。
最近、少しずつ日が伸びてきたのに加え、ゲームに集中していて時間が経っているのに気が付かなかった。
『優君、いま何してるの?』
「秋凛さんからゲーム借りて遊んでたとこ」
『邪魔しちゃったかな?』
「いや、そろそろ帰ろうと思ってたから丁度良かったよ。秋凛さんも寝てるから、今日の見舞いは止しといた方がいいと思う。…………秋凛さん、家のスペアキーってあります?」
通話口を遠ざけ、音を拾われないよう小声で秋凛さんに尋ねれば。
コクリと首を縦に振っているが、どうして必要か分からず不思議そうにしている表情がまた可愛い。
「いつ帰ってもいいようにスペアキー預かってるから、返すのは夏月さんにお願いするね」
『あ、うん。それはいいけど』
「明日もレッスン?」
『うん、そうだよ』
「秋凛さん、良くなってると思うけど微妙なとこかな。もし明日来ても病み上がりだから無理はさせないようにお願い」
『りょーかい! ……あ、もう暗くなってきたから近くまで迎えに行くよ! また連絡するからもう少し待ってて!』
「分かった。それじゃ」
電話を切り、時間も無くなったのでこのチャプターをさっさと終わらせようとコントローラーに持ち替えたのだが。
ゲームが再開されないので秋凛さんを見てみれば、よく分からない表情でこちらを見ていた。
「どうかしましたか?」
「ううん、何でも無いよ」
「そうですか? ……あ、もし明日レッスンに行くのなら話を合わせてもらえると助かります」
「うん、ありがとう」
「いえ。二人のちょっとした秘密ですね」
「秘密……ふふっ、そうだね」
「近くまで来たと連絡あったのでそろそろ帰りますね」
「夏月ちゃんいるから大丈夫だと思うけど、気を付けてね」
「はい。……あ、うどんつゆと野菜スープは冷蔵庫に入れれば数日は持つと思います。そんな量もあるわけじゃ無いですけど、無理しない程度に早めに食べてもらえたらと」
「今日、心配して見舞いに来て、ご飯まで作ってくれたのとても嬉しかった。ありがとう」
最初よりも打ち解けたからか、秋凛さんの悩みが軽くなったからか。
自然な笑みを浮かべながら告げられた感謝の言葉に胸が高鳴ってしまう。
もし俺がフリーであったのなら、勢いで告白して振られる流れが出来ているところである。
「それじゃ、また」
「……! またね!」
最後、とても嬉しそうにしていたけど何かあったのだろうか。
特別何かしたわけでもなく、ただの別れの挨拶だと思うのだが……。
理由は分からないけど、秋凛さんが元気になったのなら良かった。
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