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最終章 前編 〈王都編〉
メドゥーサ
――魔人族が一般人に恐れられている理由、それは人間に最も近い頭脳を持ちながら人間には持ち合わせていない能力を所持しているからである。ヴァンパイアやサキュバスのような種は人間と全く劣らぬ知能を誇り、サイクロプスやミノタウロスのような頑丈な鱗や怪力を駆使する魔人族は危険種として指定されている。中には人間に友好的な魔人族も多いが、逆に恐れられている種も多い。
だが、そんな魔人族の中でも竜種と同程度の危険種として指定された魔人族は「メドゥーサ」しか存在しない。メドゥーサの生態は謎が多く、生きている個体は少ないが非常に長寿で森人族よりも長い時を生きられる。メドゥーサの外見は人間に近く、雌しか存在しないので他の個体と交配して子供を産む事もない。
メドゥーサの恐ろしい力は「石化の魔眼」と呼ばれる非常に厄介な魔眼を所持しており、この魔眼と目を合わせたあらゆる生物は肉体が石化し、やがて石像と化す。この石化を解除するにはメドゥーサを殺す以外に方法はなく、石像と化している間はその人間は時の流れを無視して半永久的に生きられる。過去に数百年前に石像と化した人間がメドゥーサが死亡した事で解放された事もあった。その人物からすれば意識を取り戻したときには数百年後の世界に飛ばされたような気分だったらしく、愛する家族も友人も一人残らず亡くなっていた事を嘆いて寂しい人生を送ったという。
竜種と同様に危険度はレベル5に指定されたメドゥーサに戦闘を挑む者はおらず、いくら腕利きの冒険者でもメドゥーサに挑む者はいない。何故ならばメドゥーサは石化の魔眼以外にも複数の能力を持ち合わせており、場合によっては竜種でさえも上回る危険な生物である。
「メドゥーサは我々のように食事は必要としない。奴が求めるのは闇の魔力……つまり、暗闇の空間に潜む闇の精霊を喰らって生きている。奴は暗闇の世界ならば自由に生きられる存在だ」
「そ、そんな怖い魔人がどうして王都の地下通路にいるんですか?」
「王都の地下に存在するのは迷宮のように入り組んだ地下通路だ。外部からの侵入対策として通路を迷路のように築いたのだろうが、何らかの理由でその地下迷宮にメドゥーサが住み着いてしまったのだろう。我々は迷路の内容を把握しているが、メドゥーサは特定の縄張りを作らず、常に迷宮内を徘徊している。奴と遭遇したら我々の命はない……」
「そんなに怖い生き物?」
「奴と正面から遭遇した者は即座に石像と化してしまう……その時は恐怖を味わう暇もないだろう」
「こ、怖いよう……」
ラナの言葉に全員が冷や汗を流し、王都の地下から侵入する事の危険性を思い知らされた。それでも現在の王都は厳重な警備が施されている以上、多少の危険は犯してでも確実に王都へ侵入する手段は地下迷路を進むしかない。
「その地下迷路はラナ達は把握しているの?」
「おい、まさか我々に道案内をさせる気か?言っておくが奴は生物から放たれる魔力を感知して接近してくる。もしも大人数で動けばすぐに気づかれるんだぞ?」
「大人数じゃない、付いていくのは俺一人だけなら?」
「レナ!?」
レナの言葉に全員が驚くが、冷静に考えればレナの考えは悪くはなく、少人数で動けば地下迷路を徘徊するメドゥーサに気付かれずに迷路を通過して王都へ潜入出来る可能性は高い。レナの空間魔法を利用すれば黒渦を通して他の人間は安全な場所に待機させ、王都へ到着次第に呼び出す事も出来る。
問題があるとすれば地下迷路を進むにはラナ達の案内が必要のため、彼女達に協力して貰わなければならない。ラナはもう一度自分が危険を犯して王都へ忍び込む事に躊躇するが、自分達の力だけではハヅキの仇を討てるとは限らず、渋々とレナの提案を承諾した。
「……いいだろう。お前ひとりぐらいならメドゥーサに気付かれずに移動できるかもしれん。だが、道案内は私一人だ。文句はないな?」
「ああ、問題ない」
「おい、レナ!!いくら何でも危険すぎるんじゃ……」
「大丈夫だよ、俺なら暗視や隠密のスキルも使えるし、それに大人数で動いたらメドゥーサに気付かれると言われたじゃん。ここは俺に任せてよ」
「それは……そうかもしれないけど」
仲間達は不安な表情を抱くが、レナは一刻も早く王都へ忍び込むためにラナの条件を受け入れ、彼女と共に王都へ向かう準備を整える――
――それから数時間後、深淵の森から抜け出したレナとラナは王都へ向けて移動を行う。レナはウルに乗り込み、ラナはユニコーンと呼ばれる魔獣の子供の背中に乗って草原を疾走していた。
「ほう、やるな。私のユニコーンと同じ速度で移動できるのか!!」
「ヒヒィンッ!!」
「その気になればもっと早く走れるよ!!」
「ウォオンッ!!」
ユニコーンに跨ったラナとウルに乗り込んだレナは並走し、王都の方角へ向けて草原を駆け抜ける。その途中、レナはアイリスに交信を行おうとするがまだ風の聖痕が馴染んでいないのか繋がらず、仕方なく気まずい相手ではあるがラナに話しかけて地下迷路の詳細を尋ねる。
「地下迷路にはメドゥーサ以外に危険な魔物はいないの?外部からの侵入者対策として罠ぐらい仕掛けられているんじゃないの?」
「馬鹿にするな、そんな罠など既に我々が解除している。それに数百年も前から存在する通路だ、罠が残っていたとしても殆どが錆びついてまともに機能しない」
「それは頼りになるな……メドゥーサが現れた時はどうすればいい?」
「……奴と目を合わせず、全力で逃げろ。メドゥーサは決して好戦的な生物ではない、もしも遭遇しても焦らずに逃げる事に集中すれば生き延びられる。奴の目を正面から見なければの話だがな」
ラナは真剣な表情でメドゥーサの対処法を告げると、彼女の反応が気になったレナは別の質問を行う。
「……今までにメドゥーサに石像にされた仲間は居たのか?」
「黙れ」
レナの質問にラナは一瞬だけ睨みつけると、すぐに前を向いて走る速度を上昇させる。不味い事を聞いたかとレナは考えたが、彼女の反応や先ほどの話から聞いてもこれまでにメドゥーサに犠牲となった緑影の隊員も存在するのだろう。
地下迷路に存在するメドゥーサがどれほど恐ろしい存在なのかはレナも分からないが、もしも遭遇しても瞳を合わせなければ問題がない相手ならば対抗策はいくらでも存在する。それでも誰もメドゥーサを倒せなかったのは「石化の魔眼」以外に恐ろしい能力を所持している可能性も高く、気を引き締めてレナはウルを走らせる。
「ウル、俺に何かあったら皆の事を任せたからな」
「ウォンッ!!」
「うわ、分かったよ。そんなに怒鳴るなって……王都にまで聞こえたらどうするんだ」
「……何時までじゃれついてるつもりだ。着いたぞ、ここで止まれ」
気弱な台詞を吐いた主人に対してウルは怒ったように鳴き声を上げると、先頭を移動していたラナのユニコーンが減速し、大きな岩の前で立ち止まる。どうしてこのような場所に止まったのかとレナは不思議に思うと、ラナは岩を指差す。
「この岩が出入口だ」
「……ああ、そういう事か」
レナが「観察眼」の能力を発動させると岩だと思っていた岩石の表面に違和感を感じ取り、ラナが手を伸ばすと岩面だと思い込んでいた箇所が大きな布で覆い隠されているだけだと判明し、布を剥ぎ取ると人間が通れる程の隙間が存在した。
「この中だ……魔獣は入れない、さっさと入れ」
「意外と単純な方法で隠してるんだな……ウル、お前は皆の元へ戻ってろ」
「ウォンッ!!」
ラナに続いてレナは岩石の隙間に入り込み、しばらくの間は狭い隙間の中を移動し続けると、やがて完全な暗黒空間に入り込む。
だが、そんな魔人族の中でも竜種と同程度の危険種として指定された魔人族は「メドゥーサ」しか存在しない。メドゥーサの生態は謎が多く、生きている個体は少ないが非常に長寿で森人族よりも長い時を生きられる。メドゥーサの外見は人間に近く、雌しか存在しないので他の個体と交配して子供を産む事もない。
メドゥーサの恐ろしい力は「石化の魔眼」と呼ばれる非常に厄介な魔眼を所持しており、この魔眼と目を合わせたあらゆる生物は肉体が石化し、やがて石像と化す。この石化を解除するにはメドゥーサを殺す以外に方法はなく、石像と化している間はその人間は時の流れを無視して半永久的に生きられる。過去に数百年前に石像と化した人間がメドゥーサが死亡した事で解放された事もあった。その人物からすれば意識を取り戻したときには数百年後の世界に飛ばされたような気分だったらしく、愛する家族も友人も一人残らず亡くなっていた事を嘆いて寂しい人生を送ったという。
竜種と同様に危険度はレベル5に指定されたメドゥーサに戦闘を挑む者はおらず、いくら腕利きの冒険者でもメドゥーサに挑む者はいない。何故ならばメドゥーサは石化の魔眼以外にも複数の能力を持ち合わせており、場合によっては竜種でさえも上回る危険な生物である。
「メドゥーサは我々のように食事は必要としない。奴が求めるのは闇の魔力……つまり、暗闇の空間に潜む闇の精霊を喰らって生きている。奴は暗闇の世界ならば自由に生きられる存在だ」
「そ、そんな怖い魔人がどうして王都の地下通路にいるんですか?」
「王都の地下に存在するのは迷宮のように入り組んだ地下通路だ。外部からの侵入対策として通路を迷路のように築いたのだろうが、何らかの理由でその地下迷宮にメドゥーサが住み着いてしまったのだろう。我々は迷路の内容を把握しているが、メドゥーサは特定の縄張りを作らず、常に迷宮内を徘徊している。奴と遭遇したら我々の命はない……」
「そんなに怖い生き物?」
「奴と正面から遭遇した者は即座に石像と化してしまう……その時は恐怖を味わう暇もないだろう」
「こ、怖いよう……」
ラナの言葉に全員が冷や汗を流し、王都の地下から侵入する事の危険性を思い知らされた。それでも現在の王都は厳重な警備が施されている以上、多少の危険は犯してでも確実に王都へ侵入する手段は地下迷路を進むしかない。
「その地下迷路はラナ達は把握しているの?」
「おい、まさか我々に道案内をさせる気か?言っておくが奴は生物から放たれる魔力を感知して接近してくる。もしも大人数で動けばすぐに気づかれるんだぞ?」
「大人数じゃない、付いていくのは俺一人だけなら?」
「レナ!?」
レナの言葉に全員が驚くが、冷静に考えればレナの考えは悪くはなく、少人数で動けば地下迷路を徘徊するメドゥーサに気付かれずに迷路を通過して王都へ潜入出来る可能性は高い。レナの空間魔法を利用すれば黒渦を通して他の人間は安全な場所に待機させ、王都へ到着次第に呼び出す事も出来る。
問題があるとすれば地下迷路を進むにはラナ達の案内が必要のため、彼女達に協力して貰わなければならない。ラナはもう一度自分が危険を犯して王都へ忍び込む事に躊躇するが、自分達の力だけではハヅキの仇を討てるとは限らず、渋々とレナの提案を承諾した。
「……いいだろう。お前ひとりぐらいならメドゥーサに気付かれずに移動できるかもしれん。だが、道案内は私一人だ。文句はないな?」
「ああ、問題ない」
「おい、レナ!!いくら何でも危険すぎるんじゃ……」
「大丈夫だよ、俺なら暗視や隠密のスキルも使えるし、それに大人数で動いたらメドゥーサに気付かれると言われたじゃん。ここは俺に任せてよ」
「それは……そうかもしれないけど」
仲間達は不安な表情を抱くが、レナは一刻も早く王都へ忍び込むためにラナの条件を受け入れ、彼女と共に王都へ向かう準備を整える――
――それから数時間後、深淵の森から抜け出したレナとラナは王都へ向けて移動を行う。レナはウルに乗り込み、ラナはユニコーンと呼ばれる魔獣の子供の背中に乗って草原を疾走していた。
「ほう、やるな。私のユニコーンと同じ速度で移動できるのか!!」
「ヒヒィンッ!!」
「その気になればもっと早く走れるよ!!」
「ウォオンッ!!」
ユニコーンに跨ったラナとウルに乗り込んだレナは並走し、王都の方角へ向けて草原を駆け抜ける。その途中、レナはアイリスに交信を行おうとするがまだ風の聖痕が馴染んでいないのか繋がらず、仕方なく気まずい相手ではあるがラナに話しかけて地下迷路の詳細を尋ねる。
「地下迷路にはメドゥーサ以外に危険な魔物はいないの?外部からの侵入者対策として罠ぐらい仕掛けられているんじゃないの?」
「馬鹿にするな、そんな罠など既に我々が解除している。それに数百年も前から存在する通路だ、罠が残っていたとしても殆どが錆びついてまともに機能しない」
「それは頼りになるな……メドゥーサが現れた時はどうすればいい?」
「……奴と目を合わせず、全力で逃げろ。メドゥーサは決して好戦的な生物ではない、もしも遭遇しても焦らずに逃げる事に集中すれば生き延びられる。奴の目を正面から見なければの話だがな」
ラナは真剣な表情でメドゥーサの対処法を告げると、彼女の反応が気になったレナは別の質問を行う。
「……今までにメドゥーサに石像にされた仲間は居たのか?」
「黙れ」
レナの質問にラナは一瞬だけ睨みつけると、すぐに前を向いて走る速度を上昇させる。不味い事を聞いたかとレナは考えたが、彼女の反応や先ほどの話から聞いてもこれまでにメドゥーサに犠牲となった緑影の隊員も存在するのだろう。
地下迷路に存在するメドゥーサがどれほど恐ろしい存在なのかはレナも分からないが、もしも遭遇しても瞳を合わせなければ問題がない相手ならば対抗策はいくらでも存在する。それでも誰もメドゥーサを倒せなかったのは「石化の魔眼」以外に恐ろしい能力を所持している可能性も高く、気を引き締めてレナはウルを走らせる。
「ウル、俺に何かあったら皆の事を任せたからな」
「ウォンッ!!」
「うわ、分かったよ。そんなに怒鳴るなって……王都にまで聞こえたらどうするんだ」
「……何時までじゃれついてるつもりだ。着いたぞ、ここで止まれ」
気弱な台詞を吐いた主人に対してウルは怒ったように鳴き声を上げると、先頭を移動していたラナのユニコーンが減速し、大きな岩の前で立ち止まる。どうしてこのような場所に止まったのかとレナは不思議に思うと、ラナは岩を指差す。
「この岩が出入口だ」
「……ああ、そういう事か」
レナが「観察眼」の能力を発動させると岩だと思っていた岩石の表面に違和感を感じ取り、ラナが手を伸ばすと岩面だと思い込んでいた箇所が大きな布で覆い隠されているだけだと判明し、布を剥ぎ取ると人間が通れる程の隙間が存在した。
「この中だ……魔獣は入れない、さっさと入れ」
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