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冒険者編
S級昇格
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「じゃあ、このパイアさんはドルトンさんに逆らえないんですね?」
「ええ、最も近いうちに正式な用心棒を雇うつもりですが……」
「別にそんな事しなくても逆らわないわよ……定期的に若い男の子の血液か精気さえ与えてくれるなら大人しく従うわ」
「……全然改心していない」
ちゃんとした待遇ならばパイアも逆らうつもりはないらしく、彼女には定期的に採血した若い男性の血液を与える事で納得しており、魔人族が用心棒ならばドルトンとしても心強いので文句はないという。それでも命を狙った相手を平然と自分の傍に置く当たり、彼も人が良いというか、度量の大きさが伺える。
「それでルノ様は今日は何の御用でしょうか?」
「あ、近くを通りがかったので顔を見に来ただけなんですけど……経験石の売れ行きはどうですか?」
「ルノ様のお陰で良質な経験石が大量に手に入りましたから、見ての通り新人の冒険者には繁盛していますよ」
ルノが外に用事がある際、集めた経験石の類は最初の頃のようにドルトンに提供している。昔は経験石の換金に時間が掛かったが、現在は店での販売が許可されているのでルノが集めた良質な経験石は店側で販売するようになり、相当な収益に繋がっているという。実際に一か月ほど前に店も大幅な改築を行い、現在では質屋というよりは魔道具展のように様々な品物を取り扱っていた。
「じゃあ、俺達はそろそろ戻ります。今度来るときは客として寄らせていただきます」
「別に何も買わずとも、ルノ様ならいつでも歓迎しますよ」
「ぷるぷるっ」
ドルトンと別れた後、ルノ達は今度こそ冒険者ギルドの建物に向かい、約一か月ぶりにギルドマスターと顔を合わせる事になる。用事がないときは殆ど訪れる事がないため、ルノが現れた事に冒険者や受付嬢が驚いた反応を浮かべる。
「あ、ルノさんだ!!」
「ルノさんだって!?」
「本当だ!!ルノさんだ!!」
「なんで皆さん付けするんだろう……」
「……確かに」
基本的に冒険者の多くは成人しており、殆どの人物はルノよりも年上ではある。だが、彼の実力と帝国の関係を知っている人間は敬語で話すことが多く、ギルドの人間ですらも彼に対しては横柄な態度は取れない。
「ほ、本日はどうされましたかルノさん?今のところは貴方様の手を煩わせるような大きな依頼はありませんけど……」
「いや、ギルドマスターに呼び出されたんですけど……アイラさんはいますか?」
「はい!!すぐにお呼びします!!」
通常、いくら高ランクと言えども一介の冒険者が訪れただけでギルドを統括するギルドマスターを呼び出す事など出来ない。但し、ルノの場合は帝国の重要人物といっても過言ではなく、ギルド側は必要以上に気を遣う。慌てて受付嬢がギルド長室からアイラを呼び出だそうとするが、慌ててルノが呼び止める。
「いえ、ギルド長室に居るのなら直接会いに行きますよ」
「そんな、ルノ様にご足労頂くなんて……すぐに呼び出しますから!!」
「いやいや……そういうわけには」
「いやいやいや……!!」
「……普通に会いに行けばいいと思う」
妙な言い合いを始めたルノと受付嬢の会話にコトネが呆れたように告げると、ルノは彼女の言葉に賛同してギルド長室に向かう事に決めた。
「大事な話がしたいので……ギルド長室に居るんですよね?」
「はい!!今は書類の整理を行っているはずですが……」
「いや、ここに居るよ」
会話の最中に受付嬢の後ろから疲れた表情のアイラが現れ、何故か彼女は以前と会った時よりもやつれており、顔色が悪い彼女にルノは驚きを隠せないが、アイラは苦笑いを浮かべながら彼に近づく。
「やあ、久しぶりだねルノ君」
「アイラさん!?どうしたんですかその顔……体調が悪いんですか?」
「なに、最近ちょっと眠れなくてね。色々と頭を悩ませる問題が起きていてね」
「体調管理も仕事の一つ……無理は禁物」
「返す言葉もないよ。まあ、あそこに座らないか?」
目元を抑えながらアイラは机を指差し、ルノとコトネは椅子に座ると彼女も向かい側に座る。今回はどのような用件で呼び出されたのかとルノが質問する前にアイラから口を開く。
「さて、早速本題に入りたいが実はギルド本部から通達があってね……ギルド協会が正式にルノ君の階級をSランクに認定した」
「Sランク?」
「つまり、S級冒険者への昇格が認められた」
『おおおおおおおおっ!!』
聞き耳を立てていた周囲の冒険者達が歓喜と驚愕が入り混じった声をあげるが、当のルノ本人は首を傾げ、S級冒険者という言葉に疑問を抱く。
「前にも説明したかも知れないが、通常はSランクに認定されるには獣人族の領地に存在するギルド本部で試験を受けて合格しなければならない。しかし、帝国側の取り計らいでルノ君をS級冒険者に昇格させるように前々から申請していたんだが、正式に認められたんだ」
「そうなんですか?」
自分の知らないところでそのようなやり取りが行われていた事にルノは驚き、特に特別なことをしたつもりはないが、まさか半年足らずで自分が冒険者の最上位の階級に昇格した事に素直に驚く。
「ええ、最も近いうちに正式な用心棒を雇うつもりですが……」
「別にそんな事しなくても逆らわないわよ……定期的に若い男の子の血液か精気さえ与えてくれるなら大人しく従うわ」
「……全然改心していない」
ちゃんとした待遇ならばパイアも逆らうつもりはないらしく、彼女には定期的に採血した若い男性の血液を与える事で納得しており、魔人族が用心棒ならばドルトンとしても心強いので文句はないという。それでも命を狙った相手を平然と自分の傍に置く当たり、彼も人が良いというか、度量の大きさが伺える。
「それでルノ様は今日は何の御用でしょうか?」
「あ、近くを通りがかったので顔を見に来ただけなんですけど……経験石の売れ行きはどうですか?」
「ルノ様のお陰で良質な経験石が大量に手に入りましたから、見ての通り新人の冒険者には繁盛していますよ」
ルノが外に用事がある際、集めた経験石の類は最初の頃のようにドルトンに提供している。昔は経験石の換金に時間が掛かったが、現在は店での販売が許可されているのでルノが集めた良質な経験石は店側で販売するようになり、相当な収益に繋がっているという。実際に一か月ほど前に店も大幅な改築を行い、現在では質屋というよりは魔道具展のように様々な品物を取り扱っていた。
「じゃあ、俺達はそろそろ戻ります。今度来るときは客として寄らせていただきます」
「別に何も買わずとも、ルノ様ならいつでも歓迎しますよ」
「ぷるぷるっ」
ドルトンと別れた後、ルノ達は今度こそ冒険者ギルドの建物に向かい、約一か月ぶりにギルドマスターと顔を合わせる事になる。用事がないときは殆ど訪れる事がないため、ルノが現れた事に冒険者や受付嬢が驚いた反応を浮かべる。
「あ、ルノさんだ!!」
「ルノさんだって!?」
「本当だ!!ルノさんだ!!」
「なんで皆さん付けするんだろう……」
「……確かに」
基本的に冒険者の多くは成人しており、殆どの人物はルノよりも年上ではある。だが、彼の実力と帝国の関係を知っている人間は敬語で話すことが多く、ギルドの人間ですらも彼に対しては横柄な態度は取れない。
「ほ、本日はどうされましたかルノさん?今のところは貴方様の手を煩わせるような大きな依頼はありませんけど……」
「いや、ギルドマスターに呼び出されたんですけど……アイラさんはいますか?」
「はい!!すぐにお呼びします!!」
通常、いくら高ランクと言えども一介の冒険者が訪れただけでギルドを統括するギルドマスターを呼び出す事など出来ない。但し、ルノの場合は帝国の重要人物といっても過言ではなく、ギルド側は必要以上に気を遣う。慌てて受付嬢がギルド長室からアイラを呼び出だそうとするが、慌ててルノが呼び止める。
「いえ、ギルド長室に居るのなら直接会いに行きますよ」
「そんな、ルノ様にご足労頂くなんて……すぐに呼び出しますから!!」
「いやいや……そういうわけには」
「いやいやいや……!!」
「……普通に会いに行けばいいと思う」
妙な言い合いを始めたルノと受付嬢の会話にコトネが呆れたように告げると、ルノは彼女の言葉に賛同してギルド長室に向かう事に決めた。
「大事な話がしたいので……ギルド長室に居るんですよね?」
「はい!!今は書類の整理を行っているはずですが……」
「いや、ここに居るよ」
会話の最中に受付嬢の後ろから疲れた表情のアイラが現れ、何故か彼女は以前と会った時よりもやつれており、顔色が悪い彼女にルノは驚きを隠せないが、アイラは苦笑いを浮かべながら彼に近づく。
「やあ、久しぶりだねルノ君」
「アイラさん!?どうしたんですかその顔……体調が悪いんですか?」
「なに、最近ちょっと眠れなくてね。色々と頭を悩ませる問題が起きていてね」
「体調管理も仕事の一つ……無理は禁物」
「返す言葉もないよ。まあ、あそこに座らないか?」
目元を抑えながらアイラは机を指差し、ルノとコトネは椅子に座ると彼女も向かい側に座る。今回はどのような用件で呼び出されたのかとルノが質問する前にアイラから口を開く。
「さて、早速本題に入りたいが実はギルド本部から通達があってね……ギルド協会が正式にルノ君の階級をSランクに認定した」
「Sランク?」
「つまり、S級冒険者への昇格が認められた」
『おおおおおおおおっ!!』
聞き耳を立てていた周囲の冒険者達が歓喜と驚愕が入り混じった声をあげるが、当のルノ本人は首を傾げ、S級冒険者という言葉に疑問を抱く。
「前にも説明したかも知れないが、通常はSランクに認定されるには獣人族の領地に存在するギルド本部で試験を受けて合格しなければならない。しかし、帝国側の取り計らいでルノ君をS級冒険者に昇格させるように前々から申請していたんだが、正式に認められたんだ」
「そうなんですか?」
自分の知らないところでそのようなやり取りが行われていた事にルノは驚き、特に特別なことをしたつもりはないが、まさか半年足らずで自分が冒険者の最上位の階級に昇格した事に素直に驚く。
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