「刺繍しかできない妻はいらない」と離縁されましたが、結界刺繍師の私だけが呪われた大公様に触れられるようです
夫の工房で八年間、王宮礼装や防護幕に結界を縫い込みながら、その功績も名前も奪われてきたエリアーヌ。
愛人を王宮刺繍室の新主任に据えた夫クロードから、「刺繍しかできない妻はいらない」と離縁を告げられた彼女は、職人印まで渡せという要求を拒絶。制作記録と自分の印を守り、侯爵家を出る。
そんなエリアーヌを一人の職人として迎えたのは、湖上都市アステルを治めるルシアン大公だった。
彼は強大な魔力が冷気となって漏れ出す呪いを負い、触れた相手を傷つけてしまうため、誰とも触れ合えずに生きてきた。
ところが、エリアーヌの銀糸と結界刺繍は彼の冷気を鎮め、彼女だけはその手に触れても傷つかない。
切断された防護幕。大公宮へ持ち込まれた王都製の銀糸。侯爵家に奪われた設計図。
事件の真相を追ううちに、ルシアンはエリアーヌの技術だけでなく、彼女自身を大切にするようになる。
これは、名前を奪われた結界刺繍師が、自分の仕事と誇りを取り戻し、誰にも触れられない大公の特別な人になる物語。
一方、彼女を捨てた元夫は、工房を支えていたのが誰だったのかを思い知らされていく――。
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