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18.同志
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もくもくと美味しそうにヤマトは肉を食べているところだ。
しばらく固まっていたサーヤも正気に戻って肉を食べ始めた。
「はぁぁ。美味しい。クッピーってこんなに美味しいんですね! 初めてクッピーのステーキ食べました」
「まぁ。その辺の街で出される肉とかは魔物の肉ってことも結構あるぞ?」
「えぇ!? 知らなかったです!」
俺達が話しているのはお構いなしで、ヤマトは肉に夢中だ。
「それでなんだが、三から四年前にマナが来なかったか?」
「はぁぁ。忘れたねぇ。はははっ。もしかして食っちまったかもなぁ?」
こうやって人をちゃかす所も変わっていない。こういう時は大抵冗談なのだ。
「わかったから。来たんだろう?」
「ちっ! 面白くねぇなぁ。少しはビビッておののけよ」
「いつからの付き合いだと思ってんだ?」
「うるせぇ。長いこと顔も見せなかったくせによぉ」
「それは悪かった」
「皆もさびしがってんじゃねぇか?」
そういわれて昔の仲間の顔が思い浮かぶ。みんな、元気だろうか。
「ガイルが引退したから皆も引退したようなもんだ。復帰したとなれば黙っちゃあいないと思うぜぇ?」
「なっ!? みんないい年だぞ?」
「俺様が五十四だから大体似たような年だったよな? まだまだ現役よぉ!」
その言葉を聞き、俺は疑問を持った。
「なぁ、もしかして復帰するとか言わ──」
「──俺様は復帰するぞ?」
「本当か? この谷の管理はどうする?」
「別に。放っておけばいい。また魔物の巣窟になったら全員食えばいいだけだからな」
そんな暴論を言いながら皿を片づけていく。
「すまんな。今日はここで一泊させてくれ」
「あぁ。もちろんだぜぇ。そのかわい子ちゃんは一緒でも大丈夫なのかぁ?」
ヤマトがまたふざけてそんなことを言うものだから、サーヤが胸を両手で抱えながら俺の後ろに隠れている。
「あぁ。大丈夫だろう? はっはっはっ! 恐いか? 大丈夫だ。こんなふうに言っているが、コイツはな……男が好きなんだ」
「そうなんですか!? あぁ。よかったぁ。ワタシ本当に食べられると思いましたぁ」
「まぁ。サーヤは大丈夫だな。俺は半分寝て襲撃に備えよう」
そういう俺の顔を心配そうに見てくるサーヤ。
「まぁ。まぁ。男同士シャワーでも入るか?」
「俺は一人で結構だ」
「むぅ。そうか。体はなまっていないようだからどんなもんかと思ったんだがな」
「俺の体はリサの物だ。わかってるだろう?」
「あの泥棒ネコやろうは俺様の敵だぁ!」
今にも噛みつきそうな勢いでフーッフーッと興奮している。
それをみたサーヤは笑顔になった。
「ヤマトさん、リサさんにししょーをとられちゃったんですかぁ?」
「そうだぁ! あの女はなぁ。俺達の中を引き裂いたんだぁ!」
ヤマトが大げさに身振り手振りでそういうものだからサーヤも面白がっている。
「えぇー? ししょーとリサさんはどうやって出会ったんですか?」
「それはなぁ。ガイルが買いに行ったパン屋の娘だったんだぁ。そこでな、ガイルを誘うように笑顔を振りまきやがって!」
「俺の一目惚れだったんだ。リサは何もしてない」
我慢できずに話へ割って入った。
「えぇー! 師匠ってそんなこともあるんですねぇ」
ニヤニヤとした顔でこちらを見てくる。
「いいだろう。別に。惚れたんだから」
照れ隠しに頭をかきながら顔を隠す。
「サーヤと言ったか? お前ももしかしてガ──」
「──ちょーー! 何言おうとしてるんですか!? やめてもらえます!?」
「きさまぁ」
ヤマトが食って掛かろうとしているのをサーヤがなだめてなにやら耳打ちしている。
「ふむ。同志だということだな?」
その問いにサーヤはコクコクと頷いていた。
「ふんっ。まぁいいだろう。では、特別にサーヤも旅に同行することを許そう」
ヤマトが偉そうに腕を組んでそんなことを言っている。
「いやいや。サーヤは元々俺の弟子だ。この子を成長させるために同行させているんだ。だから置いていくことはありえないぞ」
「わかってるって! だから言っただろうが? 許すって!」
「お前が許すとか許さないとかじゃないと言っている!」
「わぁかったって!」
サーヤが苦笑いで間に入る。
「まぁまぁ、痴話喧嘩はその辺で」
「ふむ。そうだ。これは痴話喧嘩だ。サーヤよ。よくわかっているではないか」
それには俺も口をはさんだ。
「いやいや、そういうんじゃないだろう?」
「まぁ、それでいいじゃないですか。ししょー。今日は早く寝ましょう」
「あぁ。シャワー借りるぞ?」
「ししょーからでいいですよ! ワタシ、ヤマトさんと話してますから!」
なんだかヤマトとサーヤは急に仲良くなったようだ。
ヤマトも「おう。行って来い」と笑顔で見送ってくれる。
なんとなく怪しく思いながらもシャワーを浴びる。
まぁ、サーヤがストッパーになってくれるだろうと思い、安心していたのだが。
シャワーからあがると「えぇー!? そんなことがあったんですかぁ?」「そうだぞ。いいだろう?」「いいですねぇ!」という声が聞こえる。
「何をそんなに騒いでいるんだ?」
「あっ、別になんでもないですよ? シャワー借りまーす!」
慌てたようにシャワーへと入っていく。
「ヤマト、何を吹き込んだんだ?」
「同志の秘密だ」
「同志?」
「あぁ。まぁ気にするな。さぁ。寝ろ!」
俺はその日色々なことが気になりすぎてほとんど寝ることができなかった。
しばらく固まっていたサーヤも正気に戻って肉を食べ始めた。
「はぁぁ。美味しい。クッピーってこんなに美味しいんですね! 初めてクッピーのステーキ食べました」
「まぁ。その辺の街で出される肉とかは魔物の肉ってことも結構あるぞ?」
「えぇ!? 知らなかったです!」
俺達が話しているのはお構いなしで、ヤマトは肉に夢中だ。
「それでなんだが、三から四年前にマナが来なかったか?」
「はぁぁ。忘れたねぇ。はははっ。もしかして食っちまったかもなぁ?」
こうやって人をちゃかす所も変わっていない。こういう時は大抵冗談なのだ。
「わかったから。来たんだろう?」
「ちっ! 面白くねぇなぁ。少しはビビッておののけよ」
「いつからの付き合いだと思ってんだ?」
「うるせぇ。長いこと顔も見せなかったくせによぉ」
「それは悪かった」
「皆もさびしがってんじゃねぇか?」
そういわれて昔の仲間の顔が思い浮かぶ。みんな、元気だろうか。
「ガイルが引退したから皆も引退したようなもんだ。復帰したとなれば黙っちゃあいないと思うぜぇ?」
「なっ!? みんないい年だぞ?」
「俺様が五十四だから大体似たような年だったよな? まだまだ現役よぉ!」
その言葉を聞き、俺は疑問を持った。
「なぁ、もしかして復帰するとか言わ──」
「──俺様は復帰するぞ?」
「本当か? この谷の管理はどうする?」
「別に。放っておけばいい。また魔物の巣窟になったら全員食えばいいだけだからな」
そんな暴論を言いながら皿を片づけていく。
「すまんな。今日はここで一泊させてくれ」
「あぁ。もちろんだぜぇ。そのかわい子ちゃんは一緒でも大丈夫なのかぁ?」
ヤマトがまたふざけてそんなことを言うものだから、サーヤが胸を両手で抱えながら俺の後ろに隠れている。
「あぁ。大丈夫だろう? はっはっはっ! 恐いか? 大丈夫だ。こんなふうに言っているが、コイツはな……男が好きなんだ」
「そうなんですか!? あぁ。よかったぁ。ワタシ本当に食べられると思いましたぁ」
「まぁ。サーヤは大丈夫だな。俺は半分寝て襲撃に備えよう」
そういう俺の顔を心配そうに見てくるサーヤ。
「まぁ。まぁ。男同士シャワーでも入るか?」
「俺は一人で結構だ」
「むぅ。そうか。体はなまっていないようだからどんなもんかと思ったんだがな」
「俺の体はリサの物だ。わかってるだろう?」
「あの泥棒ネコやろうは俺様の敵だぁ!」
今にも噛みつきそうな勢いでフーッフーッと興奮している。
それをみたサーヤは笑顔になった。
「ヤマトさん、リサさんにししょーをとられちゃったんですかぁ?」
「そうだぁ! あの女はなぁ。俺達の中を引き裂いたんだぁ!」
ヤマトが大げさに身振り手振りでそういうものだからサーヤも面白がっている。
「えぇー? ししょーとリサさんはどうやって出会ったんですか?」
「それはなぁ。ガイルが買いに行ったパン屋の娘だったんだぁ。そこでな、ガイルを誘うように笑顔を振りまきやがって!」
「俺の一目惚れだったんだ。リサは何もしてない」
我慢できずに話へ割って入った。
「えぇー! 師匠ってそんなこともあるんですねぇ」
ニヤニヤとした顔でこちらを見てくる。
「いいだろう。別に。惚れたんだから」
照れ隠しに頭をかきながら顔を隠す。
「サーヤと言ったか? お前ももしかしてガ──」
「──ちょーー! 何言おうとしてるんですか!? やめてもらえます!?」
「きさまぁ」
ヤマトが食って掛かろうとしているのをサーヤがなだめてなにやら耳打ちしている。
「ふむ。同志だということだな?」
その問いにサーヤはコクコクと頷いていた。
「ふんっ。まぁいいだろう。では、特別にサーヤも旅に同行することを許そう」
ヤマトが偉そうに腕を組んでそんなことを言っている。
「いやいや。サーヤは元々俺の弟子だ。この子を成長させるために同行させているんだ。だから置いていくことはありえないぞ」
「わかってるって! だから言っただろうが? 許すって!」
「お前が許すとか許さないとかじゃないと言っている!」
「わぁかったって!」
サーヤが苦笑いで間に入る。
「まぁまぁ、痴話喧嘩はその辺で」
「ふむ。そうだ。これは痴話喧嘩だ。サーヤよ。よくわかっているではないか」
それには俺も口をはさんだ。
「いやいや、そういうんじゃないだろう?」
「まぁ、それでいいじゃないですか。ししょー。今日は早く寝ましょう」
「あぁ。シャワー借りるぞ?」
「ししょーからでいいですよ! ワタシ、ヤマトさんと話してますから!」
なんだかヤマトとサーヤは急に仲良くなったようだ。
ヤマトも「おう。行って来い」と笑顔で見送ってくれる。
なんとなく怪しく思いながらもシャワーを浴びる。
まぁ、サーヤがストッパーになってくれるだろうと思い、安心していたのだが。
シャワーからあがると「えぇー!? そんなことがあったんですかぁ?」「そうだぞ。いいだろう?」「いいですねぇ!」という声が聞こえる。
「何をそんなに騒いでいるんだ?」
「あっ、別になんでもないですよ? シャワー借りまーす!」
慌てたようにシャワーへと入っていく。
「ヤマト、何を吹き込んだんだ?」
「同志の秘密だ」
「同志?」
「あぁ。まぁ気にするな。さぁ。寝ろ!」
俺はその日色々なことが気になりすぎてほとんど寝ることができなかった。
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