元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥

文字の大きさ
9 / 69

9.山頂

しおりを挟む
「わぁぁぁ! あそこが山頂?」

 だな。上で旋回しているのがグリフォンだな。

「じゃあ、私はそこで隠れてるね?」

 あぁ。そうしててくれ。

 ここまで来るまでの間にミリアとは打ち合わせしていたんだ。
 山頂に着いたら恐らく、いきなり戦闘になる。
 そうなった場合、足でまといになるから隠れててくれってな。

 ミリアはショボンとしていたがしょうがないと割り切って吹っ切ったみたいだ。
 そうじゃないと困る。
 いつまでも暗くいられると困るし、申し訳ないが、足でまといなのは事実だからだ。

 左手に剣を持ち、山頂に到着するとグリフォンが急降下してきた。
 鞘に入れたままの剣で受け止める。

 勢いにやられて後ろに押される。
 地面を滑るように骨の足に力を入れて踏ん張っているが中々止まらないグリフォン。
 受けていた剣を上に弾いた。

 グリフォンはその勢いのまま空に再び舞い戻って行った。
 正攻法では恐らく今の状態では勝てない。

 グリフォンは今度は風を纏いながら突進してきた。

 魔法を使ってきたか。
 まずいな。

 ストロング流剣術 幻剣術
「カタタ(現《うつつ》)」

 残像を残して後ろに回る。
 そのまま来たところを狙う。

 すると、グリフォンは纏っていた風を残像に飛ばした。
 霧散する残像。
 ギロリとこちらを向いたグリフォン。

 バレたか。

「キィエエェェェ!」

 こちらに向きを変えて噛み付いてきた。
 剣を腰に差し、両手で嘴を受け止める。
 凄まじい力で嘴が迫ってくる。

 目の前でバクンバクンと嘴が動く。
 俺って、頭食われても死なないのか?
 見えなくなんのかな?

 謎過ぎるなスケルトン。

 仕方ない。
 このままだと食われちまう。

 身体強化を発動する。
 体が青い炎に包まれる。

 よいしょ!

 嘴を上に持ち上げながら顎を蹴りあげる。

 どうだ!?
 少し怯んだか!?

「キェエエェェ!」

 再び嘴が迫る。

 くそっ!

 懐に入り込んで腹に剣を鞘に入れたままで突きを放つ。

「ギエェェ」

 少したたらを踏んで後ろに下がった。

 よしっ!
 今だ!

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」

 首を狙ったんだが、翼で防がれてしまった。
 逆に抜剣術を放った後は術後硬直が少しあるのだ。

「キェェェ!」

 鉤爪で蹴り飛ばされた。
 鞘で防いだんだが、鞘にヒビが入ってしまった。

 これは時間の問題だな。
 長引けばこっちが不利か?
 どうする?
 一気に攻めるか?

「キィエェェェ!」

 翼で風を打ち付けてきた。
 凄まじい風が体をうち……?
 あっ、骨だからあんまり風の影響受けないわ。

 意外な発見。
 ズンズンと前に進む。

 ハッハッハッ!
 風なんぞ、私のような骨には効かんのだよ!
 分かったかね? グリフォンくん!

 駆けて距離を一気に詰める。

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(開闢《かいびゃく》)」

 地を這うような体制からの切り上げが放たれる。

「キィエェェェ!」

 足を片方斬り飛ばした。

 ちっ!
 決めるつもりだったのに!
 でも、これでバランスをとるのが難しくなったはずだ。

 ピシッ!

 手元から音が聞こえる。
 左手を見ると握り締めていた鞘のヒビが拡がっていく。
 ビシビシビシッと全てに亀裂が入り、仕舞いには、バリィンッと粉々になっしまった。

 鞘がやられたか。
 抜剣術はもう使えないな。
 はぁ。剣もどこまでもつか。

「キィエエエェェ」

 グリフォンは飛び上がるとこちらの様子を伺うように上空を旋回しだした。
 あっちも、もうそろそろ終わりにしたいんだろう。

 最後の攻撃か?
 じゃあ、俺もストロング流剣術の本領を発揮してみせよう。
 と言っても、二の剣までしか解放はできない。
 奥義はもう少しいい剣じゃないと技の前に砕け散ってしまう。

 剣の切っ先をグリフォンに向け、腰を落とす。

「キィィィエェェェ!」

 風を纏った強烈な突進攻撃がくる。
 その攻撃を俺は真正面から迎え撃つ。

 剣を持つ腕の肘を後ろへ引き。
 力を溜める。
 魔力を身体中に最大限巡らせる。

 血が強く通う如く、胸の魔力を使い。
 文字通り命を削っての攻撃だ。

 迫り来る暴風のグリフォン。

 さぁ。
 俺の本領を見せてやろう。
 
 ストロング流剣術 剛剣術
「カタカタ(光芒《こうぼう》)」

 前に出していた足に全身の体重をかける。
 そして、強烈な踏み込みと共に引き絞って溜めていた力を解放し、剣を突き出す。

 その時、ミリアにはナイルの剣と体が一個の剣《つるぎ》と化して巨大な剣がグリフォンを貫いたように見えた。

「ナイル、すごーぃ」

 口を半開きに開き。
 ポカーンとしている。

 グリフォンの後ろに着地した。
 後ろを振り返ると胸に巨大な穴を開けてグリフォンが倒れる所だった。

 ふぅ。
 勝ったな。

ビキッ!

 また嫌な音が。
 剣を見るとヒビが入り拡がっていく。
 すると、鞘と同様砕け散った。

 何とかもって良かった。
 倒す前に砕け散ったら笑えないからな。

「あーぁ。砕けちゃったね?」

 悪かった。
 耐えられなかったみたいだ。
 あれ、大事な剣だったんだよな?

「えっ!?」

 はっ? 違うのか?
 だって、俺がテイムされるのと引き換えにくれた剣だぞ?

「えっ、えーっとねぇ。実は……護身用に買ったただのロングソードだよ?」

 おぉふ。
 そりゃ壊れるわ。
 よくもったな。

「あっ! あれかな!? ミストン花!」

 誤魔化すように花をつみに行く。

 全部取らないで程々にしろよ?
 また誰かが必要になるかもしれないしな。

「あぁ。そっか。その時はグリフォン居ないのかな? もう討伐したんだし……」

 いや、また何者かが住み着くんだろうな。
 山ってのはそういうもんだ。

「そっか。ミストン花は取ったし、急いで降りよっか!」

 この時、リミットまで残り二日を切っていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...