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9.山頂

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「わぁぁぁ! あそこが山頂?」

 だな。上で旋回しているのがグリフォンだな。

「じゃあ、私はそこで隠れてるね?」

 あぁ。そうしててくれ。

 ここまで来るまでの間にミリアとは打ち合わせしていたんだ。
 山頂に着いたら恐らく、いきなり戦闘になる。
 そうなった場合、足でまといになるから隠れててくれってな。

 ミリアはショボンとしていたがしょうがないと割り切って吹っ切ったみたいだ。
 そうじゃないと困る。
 いつまでも暗くいられると困るし、申し訳ないが、足でまといなのは事実だからだ。

 左手に剣を持ち、山頂に到着するとグリフォンが急降下してきた。
 鞘に入れたままの剣で受け止める。

 勢いにやられて後ろに押される。
 地面を滑るように骨の足に力を入れて踏ん張っているが中々止まらないグリフォン。
 受けていた剣を上に弾いた。

 グリフォンはその勢いのまま空に再び舞い戻って行った。
 正攻法では恐らく今の状態では勝てない。

 グリフォンは今度は風を纏いながら突進してきた。

 魔法を使ってきたか。
 まずいな。

 ストロング流剣術 幻剣術
「カタタ(現《うつつ》)」

 残像を残して後ろに回る。
 そのまま来たところを狙う。

 すると、グリフォンは纏っていた風を残像に飛ばした。
 霧散する残像。
 ギロリとこちらを向いたグリフォン。

 バレたか。

「キィエエェェェ!」

 こちらに向きを変えて噛み付いてきた。
 剣を腰に差し、両手で嘴を受け止める。
 凄まじい力で嘴が迫ってくる。

 目の前でバクンバクンと嘴が動く。
 俺って、頭食われても死なないのか?
 見えなくなんのかな?

 謎過ぎるなスケルトン。

 仕方ない。
 このままだと食われちまう。

 身体強化を発動する。
 体が青い炎に包まれる。

 よいしょ!

 嘴を上に持ち上げながら顎を蹴りあげる。

 どうだ!?
 少し怯んだか!?

「キェエエェェ!」

 再び嘴が迫る。

 くそっ!

 懐に入り込んで腹に剣を鞘に入れたままで突きを放つ。

「ギエェェ」

 少したたらを踏んで後ろに下がった。

 よしっ!
 今だ!

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」

 首を狙ったんだが、翼で防がれてしまった。
 逆に抜剣術を放った後は術後硬直が少しあるのだ。

「キェェェ!」

 鉤爪で蹴り飛ばされた。
 鞘で防いだんだが、鞘にヒビが入ってしまった。

 これは時間の問題だな。
 長引けばこっちが不利か?
 どうする?
 一気に攻めるか?

「キィエェェェ!」

 翼で風を打ち付けてきた。
 凄まじい風が体をうち……?
 あっ、骨だからあんまり風の影響受けないわ。

 意外な発見。
 ズンズンと前に進む。

 ハッハッハッ!
 風なんぞ、私のような骨には効かんのだよ!
 分かったかね? グリフォンくん!

 駆けて距離を一気に詰める。

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(開闢《かいびゃく》)」

 地を這うような体制からの切り上げが放たれる。

「キィエェェェ!」

 足を片方斬り飛ばした。

 ちっ!
 決めるつもりだったのに!
 でも、これでバランスをとるのが難しくなったはずだ。

 ピシッ!

 手元から音が聞こえる。
 左手を見ると握り締めていた鞘のヒビが拡がっていく。
 ビシビシビシッと全てに亀裂が入り、仕舞いには、バリィンッと粉々になっしまった。

 鞘がやられたか。
 抜剣術はもう使えないな。
 はぁ。剣もどこまでもつか。

「キィエエエェェ」

 グリフォンは飛び上がるとこちらの様子を伺うように上空を旋回しだした。
 あっちも、もうそろそろ終わりにしたいんだろう。

 最後の攻撃か?
 じゃあ、俺もストロング流剣術の本領を発揮してみせよう。
 と言っても、二の剣までしか解放はできない。
 奥義はもう少しいい剣じゃないと技の前に砕け散ってしまう。

 剣の切っ先をグリフォンに向け、腰を落とす。

「キィィィエェェェ!」

 風を纏った強烈な突進攻撃がくる。
 その攻撃を俺は真正面から迎え撃つ。

 剣を持つ腕の肘を後ろへ引き。
 力を溜める。
 魔力を身体中に最大限巡らせる。

 血が強く通う如く、胸の魔力を使い。
 文字通り命を削っての攻撃だ。

 迫り来る暴風のグリフォン。

 さぁ。
 俺の本領を見せてやろう。
 
 ストロング流剣術 剛剣術
「カタカタ(光芒《こうぼう》)」

 前に出していた足に全身の体重をかける。
 そして、強烈な踏み込みと共に引き絞って溜めていた力を解放し、剣を突き出す。

 その時、ミリアにはナイルの剣と体が一個の剣《つるぎ》と化して巨大な剣がグリフォンを貫いたように見えた。

「ナイル、すごーぃ」

 口を半開きに開き。
 ポカーンとしている。

 グリフォンの後ろに着地した。
 後ろを振り返ると胸に巨大な穴を開けてグリフォンが倒れる所だった。

 ふぅ。
 勝ったな。

ビキッ!

 また嫌な音が。
 剣を見るとヒビが入り拡がっていく。
 すると、鞘と同様砕け散った。

 何とかもって良かった。
 倒す前に砕け散ったら笑えないからな。

「あーぁ。砕けちゃったね?」

 悪かった。
 耐えられなかったみたいだ。
 あれ、大事な剣だったんだよな?

「えっ!?」

 はっ? 違うのか?
 だって、俺がテイムされるのと引き換えにくれた剣だぞ?

「えっ、えーっとねぇ。実は……護身用に買ったただのロングソードだよ?」

 おぉふ。
 そりゃ壊れるわ。
 よくもったな。

「あっ! あれかな!? ミストン花!」

 誤魔化すように花をつみに行く。

 全部取らないで程々にしろよ?
 また誰かが必要になるかもしれないしな。

「あぁ。そっか。その時はグリフォン居ないのかな? もう討伐したんだし……」

 いや、また何者かが住み着くんだろうな。
 山ってのはそういうもんだ。

「そっか。ミストン花は取ったし、急いで降りよっか!」

 この時、リミットまで残り二日を切っていた。
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