【R15/R18】執事喫茶にいったら前世で好きだった私の執事がいて、完全にヤンデレ化している件は・・・如何致しましょう!?

猫まんじゅう

文字の大きさ
3 / 15
R15(前半)

3.イケオジ執事喫茶・・・ですって?

「アンリ、アンリ?お~~い、杏里い?」

 ハッとして顔をあげれば、カフェの名物、山盛りポテトを頬張っている朋美が手をヒラヒラと振っていて、杏里はほっと胸を撫でおろした。

 久しぶりに想い出したあのもう今はなき日々に、胸が締め付けられて、杏里はもう氷も溶けてしまったカフェラテを飲み干す。

「で、杏里も何か現実に戻って来たしさ、そろそろ、行こっか?」

 朋美に連れられ、大都会の真ん中を横切り、着いた先は地下へと通じる細い階段だった。

「ね……良いとはいったけど……どこ?ここ……なんか怪しいんですけど」
『え!?今までの話、聞いて無かったの!?』と朋美は杏里に向かって溜め息をつきながら指で髪をクルクルと動かした。

「私たち、お嬢様になるのよ!」
「はい?」
「だーかーら、お嬢様になって、執事に甘やかしてもらうの!」
「……いや、それはいいや」

 杏里がくるりと回れ右したのを見て、朋美はその腕を掴んだ。

「いやああ、お願い。取りあえず、ここ降りたら着くんだから~!!付き合って!」

 杏里の目の前には周りに薔薇の花が散りばめられた重厚なドア。

「ここはね、”C’est la classeセ ラ クラス”っていうイケオジ執事喫茶!!」

「待って、やっぱり遠慮しとく。うん、やめるわ」

「え!?ねえ、さっき奇跡的に予約取れちゃったし!お願い!100分制だしぃ!一時間で杏里が嫌なら帰ってもいいからぁ!ホント憧れなのよ、一生のお願いいぃ」

『なんで私の誕生日だったからお祝いで!』とか言いながらこうなるのかな~?と杏里は朋美を見た。まあ、そこが朋美らしくて良いんだけど。

「っもう、分かったよ。朋ちゃんが執事とかそういうのが好きなのは分かっているから……憧れだし、行ってみたかったんだもんね?じゃあ……「おかえりなさいませ、朋美お嬢様」

「あら、久しぶりね、木島?」

 杏里が言葉を言い終わらずに既にインターホンを押していた朋美。
 そして今まさに目の前で繰り広げられているその光景に、杏里はあんぐりと口をあけた。

「えええっ、ちょっとまてーーーーい!執事喫茶、初めてじゃないんかぁぁい!!憧れなのぉ~キラキラぁ、みたいな言い方しておいて……何その、超慣れたやり取り!!!」

「ちょっと、杏里、全部言葉に出てるし。しかも杏里、関西弁じゃないでしょ?そのエセ関西弁みたいのはちょっと……」

 ”頂けないわ~”といいながら腕を組む朋美と、扉を開けて微笑みながら直立したドアマンの男性の視線を感じ、杏里は慌てて口を両手で塞ぐと赤面して咄嗟にカーテシーを取った。

「御目汚し、失礼致しました……ッ、あ……」

「へ?杏里、完璧な役作り!流石、お嬢様風女子!」
「これはこれは、朋美お嬢様からお話はよく伺っております、杏里お嬢様。本日は本邸でごゆっくりとおくつろぎくださいませ」

「は……い」

 また前世の癖でやってしまった……と項垂れた杏里を気にする様子もなく、朋美は肩で風を切るように店内に足を進める。

 部屋の中心に入れれば、赤いカーペットに、美しい絵画が並び、杏里の頭の中には久しぶりに前世の伯爵邸の事が想い出された。
 前世の記憶は未だに色濃く残っている。
 だから、さっきみたいに急に、前世で身体に染み着いた癖がでてしまうわけだ。

「ああゆうのは出ないようにしないと……」

「本日のお席はこちらでございます。直ぐに本日の専属執事がお茶菓子とお紅茶のメニューを持って参りますので、お待ち下さいませ」

「は~い、木島、今日は彼、なのよね?」
「はい、朋美お嬢様のご指名通りに準備、整ってございます」
「そう、ならいいわ」

 ふんふーん、と鼻歌交じりに手を振った朋美に、杏里はジトっとした視線を向けた。

「何回目なの、朋美お嬢様?」
「あらいやね、杏里お嬢様、たった数回よ?」
「一般的な数回は二桁の事を言わなくてよ?」

 朋美はその言葉に照れたように笑う。

「へへっ。だって、一人推しがいるの~、めっちゃタイプで、本気になりそうなほど好きなんだもん~」
「へえ……」
「でも凄く人気なの。予約なんて取れないんだから、今日はたまたま!!」

 杏里は周りを見渡した。
 働いている執事は皆執事服を着ていて、朋美の言った通り”イケオジ”しかいない。
 雰囲気も落ち着いていて、大人な雰囲気がまたセクシーな印象を与えていた。
 客は本当に貴族風のドレスを着ている客もいるし、普通のOLのような人も自分と同じ大学生っぽい人もいる。

 執事とお嬢様って需要あるんだな~、と杏里が漠然と考えていると、目の前に影ができて朋美の嬉しそうな声が響いた。

「はァッ!麗しすぎる、眼福だわ!ハーフってホントズルいわよねえ」
「おかえりなさいませ、朋美お嬢様。お久しぶりにございます。それと……」

 杏里は綺麗に腰を折っていた状態から顔をあげたその執事を見て……。
 そして時が止まって、同時に身体の全ての器官が一瞬動きを止めた……ように感じた。

「……セバス……チャン……ッ、ゴホゴホッ」
「あれ?杏里に名前見せたっけ?そう、彼が今日の専属執事よ、杏里お嬢様っ」

 高身長、深い青みがかった黒髪の短髪をかきあげて、あの時と同じ、青い切れ長の瞳が細められて。
 もうその時には朋美の嬉しそうな声も周りの雑音も何も聞こえなくなった。

「セバスチャンにございます、お嬢様……。ようやく本邸にお越しくださったのですね……本当に、お待ちしておりました……」

「ちょ、っと……トイレ……に」
「え、大丈夫?杏里、顔が真っ青よ?」
「だ、大丈夫だから……先、楽しんでて」

 息ができない……何も考えられない。
 あの濃く青みがかった黒い髪に、青い瞳……ここでは浮世離れしたようなイケメンだけど、異国の血が混ざったハーフなら納得よね。それに、セバスチャンって名前も……。

「っは……」

 トイレに辿りつく直前で過呼吸のようになって、人目のつかない角に凭れ掛かり、倒れる寸での所で後ろから来た執事に抱き止められた。

「お嬢様、大丈夫ですか?今横になれる広めのソファに……「入江執事、彼女は私の客だ。ここはいいから、私の他の客を一瞬フォローしてくれないか?」

『少し怒った声もセバスなのね……』と思いながら、入江と呼ばれた男が頷いてフロアに戻っていくのを見送って、彼はお姫様抱っこをしてソファに腰掛ける。

「過呼吸なのでしょう。ゆっくりと息を吐けばよろしいかと思います、こちら、袋を口に当てて」

 深く息を吐けば視界が鮮明になり、杏里はほっと胸をなでおろした。
 いや、彼の膝の上にいるという安心感もあるのかもしれないけど……

 と、そこまで考えて、杏里は彼の顔を見ずに頭を下げた。

「ご、ご迷惑おかけしました。も、もう大丈夫です、ので!」

 彼の膝からおりようとして、がっちりホールドされ、全く動かない自分の身体を見る。

「あ、あの……「やっと見つけた……。やっと、です……。なのに……貴女様はまた私から逃げるのですか?ッもう、離せるわけがないでしょう……アンリエッタお嬢様……」

 杏里は顔を上げた。
 やっぱり、セバスチャンだった。
 認めたくなかったけど、やっぱり、彼だった。

 私がずっと好きで、憧れていた専属執事の彼が……執事喫茶にいた。
 笑っちゃうようなアリエナイ展開だけど、でも……。

「セバ、ス……」

 杏里が口を開きかけた時、ソファの後ろから先程の男性が顔を覗かせた。

「セバス様、もうそろそろ……」

 チッ、と舌打ちをした彼は席を立つと男を見た。
 青く美しい瞳が濁り、切れ長の目が細められて、その威圧感に杏里は息を呑む。
 だが、そんな彼女を見て、セバスは表情を少し緩めて口を開く。

「入江、彼女を席に、頼みますよ」
「はい、心得ております、執事長。行きましょう、お嬢様」

 未だフラフラとした杏里を気遣ってか、入江が腕を差し出し、そこに手を置いた彼女を見てセバスは拳を強く握りしめた。
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。