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冷たい彼。③

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「蒼…帰ってたのかよ」


「蓮、誰かに会ってた?」


「いや、別に」


「…さっきの、結花だったんじゃない?」


「…何で女なんか連れ込んでるんだよ」


「ごめん」


「あのさ、今頑張らなくていつ頑張るんだよ」


「僕はまだ、頑張らないといけない?」


「蒼……でも、お前だけじゃなくて、みんな頑張って」


「ここで、その話は止めよう。ここは、僕たちが本来の自分に戻れる場所なんだから。そのためのアパートなんだから」


「そうだけど」


「結花のこと黙っててごめん」


「どこがいいんだよ。どこにでもいる女じゃん」


「言いたくない」


「は?」


「結花のいいところは、誰にも言わない。俺だけ分かってればいい」



「一目惚れしないって言ってたよね?じゃあ知り合いなわけ?」


「知り合いってわけじゃない。ただ、僕が今ここにいるのは、結花のおかげなんだ」


「あの女の?」


「結花には感謝してる、だけど、結花のことを手にいれることができないっていうのは分かってるから」


「蒼」


「分かっているよ。だけど、あの日、さくらが出会わせてくれたから。近づきたくなったんだ。だから、蓮」


「何だよ」


「結花は蓮にもあげないよ?」


「べつに!タイプじゃないし!あげるって言われてもいらないし!」


「でもオムライス食べたよね?結花が作ったオムライス」


「それは、腹が減ってつい……」


「蓮、二度と結花に近づかないで」


「だけど、蒼」


瞳は冷めきっているのに
体からは炎がみえるぐらい
怒りに蒼は満ちていて、これ以上何か言うとヤバいと蓮は感じていた。


「分かった、分かったよ」












本当は、結花の前でオムライスを食べてあげたかった。
さくらの話もいっぱい聞いてあげたかった。


してあげたいことは
世間の人は、何気なくしていることなのに
どうして俺はそれができないんだろう。




生きている意味ってあるのかな?





お前のおかげで周りの人は助かってるって言われるけど
じゃあ、俺のことは、誰が助けてくれるの?
あなたのおかげで今日も生きれますって
言われるけど俺は?
俺はどこかへ消えたくなるよ
俺のことは誰が救ってくれるの?
ずっと、その問いを自分にしてきた。



その答えを見つけた今
助けてくれた人を
大事にしたいって思うのは
そんなにダメなことなのかな?


みんな大事な人がいるように
俺にだって、大事な人がいるんだ。

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