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81. 両片思い
しおりを挟む翠のスマホの電源が10%を切ったと言われて仕方なく1度通話を終了した。
「うー・・・どうしたらいい?」
「しっかりしろ望。お前あんなにバカスカ魔法を無限に撃ちまくって平気なんだから、絶対に方法があるはずだ!!」
ルーカスの言葉に眉を下げる望。
「ああいうの自然にやっちゃってるのよ。参考になるようなアニメもいっぱい子供の時に見たでしょ? イメージだって簡単なのよね」
「ああ。一緒に宿題しながらテレビ見たり、夏休みに一緒に映画見に行ったりしたな。お前小柄だったから小学生なのに保育園児に間違えられて怒ってさ」
「懐かしいね」
望を膝の上に乗せ直して、後ろから抱き着くルーカス。
「見終わった後で、入場料安くなってラッキーだったのに何で小学生だって言ったんだよ~って言ったら、絶交されてさあ」
「あ。あれは、健一の妹って言われたのが嫌だったのよ」
その時の事を思い出したのか、ちょっとだけムッとする望。
「え?」
「デートのつもりだったのに『お兄ちゃん妹のお世話偉いね』って言われて、同い年です! って言っちゃったの。でも後になって安くなって良かったのにって言われて腹が立ったの」
「え? あれ小2の時じゃなかった?」
思わず背後から彼女の顔を覗き込むルーカス。
「そうだよ?」
「お前、そんな時から俺の事好きだったの?」
「うん。まぁ、最初引っ越し挨拶に行った日に、好きになったんだけどさ」
「え。俺もだ。あの時可愛いって思って・・・」
「「・・・今更だけど」」
何だろう、出会った日から両思いだったって事? と2人同時に赤くなる。
「そっか~。俺だけが長い間片思いだったんじゃなかったんだ」
「私もずっと片思いだと思ってたの。だから高校の時、告白されて舞い上がってた。健一は女の子に凄くモテてたし、文武両道で生徒会とか役員とか引っ張りだこでさ・・・」
「そりゃあ、お前が、『カッコいい! 凄い! 健一が幼馴染なんて鼻が高い』って褒めるからめちゃくちゃ頑張ってただけで。多分お前がカッコいいって言ってなかったら、ただの帰宅部だよ。お前だって男子にすっげえ人気があってさ俺凄く焦ってさ。引っ越しで、会う機会が減った上に俺は大学進学でお前は短大に進学で別々になるから慌てて告白したんだよ。他のやつに絶対にかっさらわれてたまるかって・・・」
「え、そんなこと思ってたの?」
「ああ。もフラレたら死ぬかもってマジで思いながら告白した。OK貰って浮かれまくって。大学でもデートの日はゼミで浮かれ過ぎで気持ち悪いって周りから言われてた」
「えぇ~知らなかった。健一いつも、自信満々だったから・・・」
思わず振り返ると、彼は眉を寄せて苦笑いをしていた――しかし顔が良過ぎて、思わず直ぐに前を向く望。
いい加減に慣れろよ、と自分で自分についツッコミを入れる・・・
「え~と。頑張ってたんだよ。卒業後に就職したら真っ先に指輪買ってプロポーズして、って頭の中でほぼ毎日計画してた。だからお前の卒業旅行に誘われて、婚前旅行!? って舞い上がってたのに、あんな事になっちまってさ・・・」
「うん。私が行ってきなよって言って背中押したからから」
「いや、俺もサーキット見たいって思ったしさ」
「あの時不安で」
「え」
「麻酔って身体になんで効くのか実は解明されて無いっていう番組見ちゃって、手術終っても母さんの目が覚めなかったらどうしようとか思っちゃって。行って欲しくないって思ってたのに言えなくて・・・言えば日本に居てくれて健一が事故に巻き込まれることも無かったのにって物凄く後悔したの」
「望・・・」
「私が止めてれば、とか我儘でも言えば良かったとか、ずっと思ってたの。誰も私を責めなかったから余計に辛くて・・・だからここに来た時に神様が罰を与えてくれたんだって・・・あ」
「あ?」
「ああぁあ~~!!」
「? どうした望?」
トランジア王国に来た初日に、バスタブで考えた事を思い出した望である・・・
××××
「異世界救って、皆幸せになったら俺だけを思いながら幻の様に消えておしまい? それが幸せって?! 何ソレ!!」
「や、だから、健一以外の人と恋愛とかセックスとか無理だから!! 生まれ変わった健一がここにいるなんて知らなかったんだからしょうがないじゃない!」
「知ってたら、そんな事考えなかったのか!?」
「当たり前じゃないッ! 健一以外の人となんかヤダよッ!!」
「ほ~ん?」
「なッ? 何よ?」
膝の上の望を自分の方にグリンと向け直すルーカスに驚いて、つい仰け反った――だって滅多に見ないような美しいご尊顔がどアップで真正面にあるのだ。
・・・望の恋人のハズだが。
「望さん」
「は。はい?」
「ココどこか知ってる?」
「え、離宮よね?」
「うん。お前の私室ね。で。今俺達は何処にいますか?」
「え・・・」
思わず、自分の座っている場所を確かめる望。
今はルーカスの膝の上だが、その下は・・・
「え~と、寝台? だね」
「うん。そうだね~10年前、旅行おじゃんになって残念ながら実行できなかった事をリベンジとか、いーかな~、と思うわけよ俺は」
「ええ! こんな状態で?!」
未だに望の体は半分透けているのだが・・・
「俺は気にしない」
「えぇ~・・・」
目が本気だった・・・
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