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71 間違ってたよ 〜バーナード子息〜
しおりを挟む公爵領に広がる森の魔物はもっぱらスライムだ。
見た目は弱そうだが、属性付きは凶悪なやつも多い為、他の魔物もあまり手出ししないので意外に数が多い。
ただ、スライムの粘液は硬化剤として重宝される為昔から我が家ではスライム専用の魔笛モドキを作ることに成功していた。
これでアイツらを呼び寄せたり任意の動きをさせたりするには地道な鍛錬がいるんだが、卒業後はすることも無いので毎日遊んで吹いてるうちに、自分の思いのままにスライムを動かせるようになっていたのには驚いた。
適当にスライムを呼び寄せて公爵家の持っている加工場に運ぶ仕事もあるんだが、そんなのは俺の仕事じゃない。
俺は領主になるんだぞ? 平民の仕事を何で俺がしなくちゃいけない?
それよりももっと俺にとって有益な使い方があるだろう? そう思ったんだ。
ルーカスの奴の評価を落とす為に『召喚の乙女』が滞在する離宮へとスライムを放っておいたから様子を見に離宮に潜り込もうとしてたら変なゴーレムに捕まって玄関から外に放り出された。
そしたらそこに突然家令がやって来て、あっさり家に連れ戻された――コイツはいつも俺達家族を見張ってる気がするから、俺は気に入らないけど、家令としては能力が高いらしくて親父のお気に入りだから、態度が生意気なんだよ。
糞ッ!
「いいか、バーナード『召喚の乙女』に取り入って聖女の伴侶になるんだ。この際、お前より年上だが魔女でも構わん」
親父にそんな事を言われて、年上は嫌だな~って思ったんだ。
そしたら、魔女の方がルーカスといい仲だと言うのを小耳に挟んだ。
じゃあ、そっちをスライムに襲わせて助けたフリで近づけば高感度が上がるかもしれないと思ったんだ。
×××
今になって思えば、そんな馬鹿なことを何で考えてたのかよく分からない。
フォルテリア家のルーカスを毛嫌いしてたのだって、元を正せば両親、特に親父のコンプレックスじゃないか? フォルテリア侯爵夫人に親父は若い頃は憧れてたし婚約の打診もしたって聞かされた。
お袋はソレを知ってて、夫人をよく思ってなかったのも事実で見かける度に睨んでいた。
爵位が下なのに国王陛下の信用も厚いのも気に入らないってことある毎にブツクサ文句を言ってたんだ。
子供の頃に何でそんなに嫌わなければいけないのか分からなかったから、仲良くしたらどうかと両親に聞いたら親父に殴られた事も今回の尋問で思い出したよ。
あ~あ。
馬鹿みたいに親に気に入られようとして子供のままで止まってたんだな、俺。
もう遅いけどさ。
よりによって『召喚の乙女』をスライムに襲わせようとして離宮に潜り込もうとしたんだもんな。
馬鹿だよなあ。
でももっと馬鹿なのは、おれの眼の前で不機嫌な顔になって俺に自白魔法を使ってるルーカスだよな。
何でお前が、そんな泣きそうな顔なんだよ。
いいんだって。
俺は、自分の親がホントは大嫌いだったんだって今気がついたから。
すげえ楽になったんだよ。
親を嫌っちゃ駄目なんてこと無かったんだなぁ。
あーあ。
間違っちまったわ。
さっさとあんな親捨てちまえばもっと楽に生きられたのかもなぁ~。
ま、何か俺の両親も王家に睨まれるような事してたみたいだし。
罪は償わないとなぁ。
どーせあの両親も俺と一緒に監獄行きだろ?
できれば別の話所にしといてくれないかなぁ。
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