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2.妹からの謝罪
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客室に着いた時、ホーネリアはとても穏やかな顔で座っていた。
その表情を見て、私は理解する。何か重大なことがあったという訳ではないことを。
ただ、彼女の表情に違和感は覚えた。
なぜなら、彼女は私と会う時いつも不服そうな顔をするからだ。
「……ホーネリア、急にどうしたの? あなたが、王城を訪ねてくるなんて、珍しいじゃない」
「……すみません、お姉様。私、どうしてもお姉様と話したいことがあったのです」
「話したいこと? それは連絡もなく来る程、重要なことなのかしら?」
「ああ、私としたことが……急に思い立ったものですから、連絡するべきだと気付きませんでした。本当に、申し訳ありません」
「い、いえ、別に構わないわ。それ程に、重要なことであるなら、仕方ないのかもしれないし……」
会話をしてみて、私はさらに違和感を覚えることになった。
いつもの彼女は、こんなにしおらしくない。私に対して、嫌味ばかり言ってきて、こんな風に謝るなどということはあり得ないことだ。
「それで、その要件とはなんなのかしら?」
「その……今までの非礼を詫びようと思って」
「え?」
ホーネリアの口から出た言葉に、私は驚きを隠せなかった。
今までの非礼を詫びる。それは、信じられないことだった。まさか、彼女が謝りに来たなんて、まったく考えていなかったことである。
「……私は、お姉様にたくさんひどいことを言いました。ひどいことだって、したと思います。でも、それを謝罪したいのです。本当に申し訳ありませんでした。どうして、あんなことを言ってしまったのか……今では、まったくわかりません」
「え、えっと……」
妹の謝罪に、私は固まってしまった。
彼女のあまりの豹変に言葉が出なくなってしまったのだ。
彼女の心境に、何かしらの変化が起こったと考えるべきなのだろうか。
もしもそうなら、私としては少し嬉しいことだ。曲がりなりにも、彼女は私の妹である。いつの間にか随分と嫌われていたが、それが元に戻るにこしたことはない。
彼女の態度に腹は立っていたが、私は家族の情というものを忘れた訳ではない。もしも、彼女がただの妹に戻ってくれるなら、私も姉に戻りたいと思っていた。
しかしながら、それがこんなにも突然やって来たということが信じられず、中々言葉が出てこない。
だが、答えなければならないだろう。彼女だって、それなりの覚悟で今の言葉を放ったはずだ。私も、呆けている場合ではない。
「……あなたに何があったかはわからないけれど、そう言ってもらえるのは嬉しいわ」
「お姉様……それは」
「確かに、あなたにはたくさんひどいことを言われたしされたと記憶しているけれど、それでもこうして反省しているなら、何か言うつもりはないわ。今までのことは、水に流して、元の仲の良い家族に戻るとしましょう。それは、難しいことかもしれないけれど、できないことではないと私はそう信じているわ」
「お姉様、ありがとうございます……」
私が差し出した手を、ホーネリアはゆっくりと掴んだ。
その目には涙が浮かんでいる。本当に、私と仲直りできたことを喜んでいるようだ。
突然のことではあるが、思わぬ幸運に私も喜んでいる。
こうして彼女と再び手を取り合える日が来るなんて、思ってもいなかったことだ。
聖女に選ばれて、妹も和解できた。もしかしたら今は、私の人生で最も幸運な時なのかもしれない。
その表情を見て、私は理解する。何か重大なことがあったという訳ではないことを。
ただ、彼女の表情に違和感は覚えた。
なぜなら、彼女は私と会う時いつも不服そうな顔をするからだ。
「……ホーネリア、急にどうしたの? あなたが、王城を訪ねてくるなんて、珍しいじゃない」
「……すみません、お姉様。私、どうしてもお姉様と話したいことがあったのです」
「話したいこと? それは連絡もなく来る程、重要なことなのかしら?」
「ああ、私としたことが……急に思い立ったものですから、連絡するべきだと気付きませんでした。本当に、申し訳ありません」
「い、いえ、別に構わないわ。それ程に、重要なことであるなら、仕方ないのかもしれないし……」
会話をしてみて、私はさらに違和感を覚えることになった。
いつもの彼女は、こんなにしおらしくない。私に対して、嫌味ばかり言ってきて、こんな風に謝るなどということはあり得ないことだ。
「それで、その要件とはなんなのかしら?」
「その……今までの非礼を詫びようと思って」
「え?」
ホーネリアの口から出た言葉に、私は驚きを隠せなかった。
今までの非礼を詫びる。それは、信じられないことだった。まさか、彼女が謝りに来たなんて、まったく考えていなかったことである。
「……私は、お姉様にたくさんひどいことを言いました。ひどいことだって、したと思います。でも、それを謝罪したいのです。本当に申し訳ありませんでした。どうして、あんなことを言ってしまったのか……今では、まったくわかりません」
「え、えっと……」
妹の謝罪に、私は固まってしまった。
彼女のあまりの豹変に言葉が出なくなってしまったのだ。
彼女の心境に、何かしらの変化が起こったと考えるべきなのだろうか。
もしもそうなら、私としては少し嬉しいことだ。曲がりなりにも、彼女は私の妹である。いつの間にか随分と嫌われていたが、それが元に戻るにこしたことはない。
彼女の態度に腹は立っていたが、私は家族の情というものを忘れた訳ではない。もしも、彼女がただの妹に戻ってくれるなら、私も姉に戻りたいと思っていた。
しかしながら、それがこんなにも突然やって来たということが信じられず、中々言葉が出てこない。
だが、答えなければならないだろう。彼女だって、それなりの覚悟で今の言葉を放ったはずだ。私も、呆けている場合ではない。
「……あなたに何があったかはわからないけれど、そう言ってもらえるのは嬉しいわ」
「お姉様……それは」
「確かに、あなたにはたくさんひどいことを言われたしされたと記憶しているけれど、それでもこうして反省しているなら、何か言うつもりはないわ。今までのことは、水に流して、元の仲の良い家族に戻るとしましょう。それは、難しいことかもしれないけれど、できないことではないと私はそう信じているわ」
「お姉様、ありがとうございます……」
私が差し出した手を、ホーネリアはゆっくりと掴んだ。
その目には涙が浮かんでいる。本当に、私と仲直りできたことを喜んでいるようだ。
突然のことではあるが、思わぬ幸運に私も喜んでいる。
こうして彼女と再び手を取り合える日が来るなんて、思ってもいなかったことだ。
聖女に選ばれて、妹も和解できた。もしかしたら今は、私の人生で最も幸運な時なのかもしれない。
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