上 下
23 / 48

23.二人での夕食

しおりを挟む
「なるほど、エルムルナ殿はそう考えていらっしゃるのか……」
「ええ、そうみたいです」

 私は、アグナヴァン様と夕食を取っていた。
 彼と婚約してから、基本的にはそうするようにしている。
 お互いに何があったのかを報告しながら、夕食を取るのはそれなりに楽しいものだ。

 私が今話しているのは、エルムルナ様に言われたことである。
 次期聖女として期待されているという事実に、アグナヴァン様は少し考えるような仕草を見せる。
 それはきっとアグナヴァン様にとっても、重要なことであるはずだ。私が聖女になれば、色々な反感をはねのけられる可能性もある。それは批判を受ける対象となる彼にとっては、有益なことだろう。

「実の所、俺もそのことについては考えていた」
「そうなんですか?」
「ああ、正直な所、あなたとの婚約を成立させるにおいて、それは必要なことだろうと思っていたのだ。それに、そもそもの話ではあるが、スウェンド王国は聖女になるべき人材が欠けている。それを埋められるのは、あなたしかないとも思っていた」

 アグナヴァン様の言葉に、私は少し驚いた。
 どうやら、彼もエルムルナ様と同じようなことを思っていたようだ。
 考えてみれば、スウェンド王国はそういった人材に関しては人材不足なのだから、現聖女と王子の思考が一致するのも当然のことなのかもしれない。

「頃合いを見て相談しようと思っていたのだが、エルムルナ殿が先に言ってしまったか……まあ、無理もないことか。彼女は、随分と長い間聖女をされている……」
「そうですよね……」
 
 エルムルナ様は、二度も聖女をすることになった。そんな彼女にとって、後継者というのはとてもありがたい存在なのかもしれない。
 私としても、できれば彼女を休ませてあげたいと思っている。聖女の仕事は、激務だ。体力的にも、エルムルナ様は限界も近いだろう。

「それで、フェルーナ殿はその話を受けるつもりなのか?」
「……はい。そのつもりです」
「そうか。それはよかった。俺も、安心できる」

 私の言葉に、アグナヴァン様は笑顔を見せてくれた。
 彼は、次期国王とされている。そんな彼にとっても、聖女の問題というものは非常に頭を悩ませていたものなのだろう。その安堵の表情からは、それが伝わってくる。

「でも、聖女に就任するにしても、私の無実が証明されなければ、話にならないかもしれませんね……」
「ああ、それはその通りだ。もっとも、それは近い内に証明されるだろう。ドルマニア王国は、今大変なようだからな」
「そうですね……」

 私は、アグナヴァン様の言葉に頷いた。
 ドルマニア王国は、現在大変なことになっている。少し悲しいことではあるが、それによって私の無実は証明されるのだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたと知ったら幼馴染の王子が怒りました!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,007

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:45,830pt お気に入り:35,277

異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:20,424pt お気に入り:745

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:1,062

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:837pt お気に入り:247

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,161pt お気に入り:3,504

処理中です...