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「また会いましたな、聖女フラウメ様」
「ポールス先生、私はもう聖女ではありませんよ」
「おっと、そうでしたな……」

 シュタルド王国の王都に辿り着いた私とセリクス様は、王城にてポールス先生と会っていた。
 見た目だけなら、どこにでもいる老人であるはずの彼が、今はとても怖く見える。禁断の魔法を消し去る使命を担っていると理解できたからだろうか。

「まあ、そう怖がらずこちらに来てください。あなたに渡したいものがあります」
「わたしたいもの」
「これを……」
「え?」

 次の瞬間、ポールス先生の手から光の球のようなものがこちらに飛んできた。
 突然の出来事であったため反応することもできず、私はその球を体で受け止める。
 すると、その球は私の中に入っていく。すぐに理解できた。これが神器を操る才能であるのだということが。

「どうですか?」
「えっと……不思議な感覚です。なんだか、心が軽くなったというか……」
「当然のことです。それは、あなたの一部。それがあなたの中にあって初めてあなたという人間は完成するし、元気でいられる」
「私はずっと病気のような状態だったのですか?」
「まあ、それに近しい状態でしたな」
「あ、ありがとうございます。助けていただいて」
「いえいえ、これが仕事ですからな」

 私の言葉に、ポールス先生は笑顔を浮かべた。
 その笑顔は、かつて魔法を教えてくれた優しい教授の笑みだ。
 とりあえず、私は安心する。どれだけの使命を担っていても、ポールス先生という人間はポールス先生なのだと理解できたからだ。

「先生、聞いてもいいですか?」
「セリクス殿下、もちろん何なりとお聞きください」
「あなたは、私とフラウメさんに役目を引き継いでもらいたいとお考えなのですか?」
「ええ、その通りです。見ての通り、私ももう年ですからね。そろそろ後任を探しておかなければならない。もちろん、この体が動く限りは使命を果たすつもりではありますが……」
「なるほど……」

 ポールス先生の説明を受けてから、セリクス殿下は私の方を見てきた。
 彼が何を言おうとしているかは、なんとなく理解できる。故に私は、ゆっくりと頷く。

「……わかりました。その使命を謹んで受けさせてもらいます」
「私も同じです。禁断の魔法については、まだよくわかっていませんが、私をこのような目に合わせた魔法は確かに危険……アムトゥーリのような者に利用される前に、抹消するべきだと強く思います」
「……お二人とも、ありがとうございます」

 私は、自分を陥れた禁断の魔法がこれ以上自分勝手な人間に利用されることがあってはならないと思っている。
 だから、ポールス先生の提案を受け入れることにした。禁断の魔法を憎む気持ちと聖女としての才能を持つ私は、その使命に相応しい人物であるとそう思ったからだ。
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