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9章
68・今ならお手伝いもできます
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セルディはエレファナのそばから離れずにアステリオンと向き合い、淀みなく告げる。
「すでに警備の者たちが進めているとは思いますが、招待客の安全確保を最優先として、早急に人々をホールに集めて警備の騎士を配備をします。王都周辺に待機中の騎士と魔術師の増援も必要です。……しかし先ほど聞いた未知の影に対して、私も全く知識がありません。初めて聞きました」
「セルディでも知らないか……」
「とはいえ、聖域結界の効果があるようですので、城内の人を守りやすい場所へ集めて警備を固めるのが、当面の対策かと思います。その影を刺激することは避け、慎重に調査するとともに有識者を探すのが先決でしょう」
アステリオンは頷くと、セルディの言ったままの指示を出し、「私もすぐ行く」と付け足した。
指示を受けた騎士が立ち去ったあと、室内は静まりかえる。
セルディはエレファナの肩をそっと抱くと、ゆっくりと言い聞かせるように囁いた。
「エレファナ。君は空間魔導を使えたな?」
(あっ、私の魔導がお役に立てるのでしょうか)
「空間魔導は使えます。でも私は人に魔導を使いません。私の魔力は強すぎて、負担が大きすぎますから。治癒の魔導でも、道具にほんのりつけて間接的に使用しなければ、相手の心身を痛めます」
「では自分だけなら転移魔導で帰れるのだろう」
思わぬ話の流れに、エレファナは眉じりをさげた。
「……もしかして私だけ帰るのですか? セルディさまは?」
セルディはあやすように、やさしい手つきでエレファナの肩をぽんぽんと叩く。
「俺にはすることがあるからな。君なら一瞬で帰り、バートに伝言を頼めるな?」
「伝言……。なにをお伝えすればいいのですか?」
「『王城の敷地にドルフ帝国時代の遺物が出たらしく、魔獣が大量発生している。ドルフ領の砦に配備されている最低限の騎士を残し、他は早馬でここへ来れるようにして欲しい』と伝えてくれ」
ふたりの会話を聞いて、アステリオンは合点がいったように声を上げた。
「なるほど。何者かが王城の敷地内にドルフ帝国時代の遺物を持ち込んだのか、以前のドルフ領のように魔獣の大量発生が起こっているのだね。そしてエレファナの力を借りて、魔獣の扱いに慣れた砦の騎士たちを、こちらへ向かわせてくれるということかな」
「はい。エレファナだけなら自分の転移魔導を利用して、最速でドルフ領に戻れます」
「セルディさま、お任せください。バートに伝えたらすぐ戻ってきます!」
「いや、夜更かしは良くないだろう。エレファナはそのままポリーと一緒に留守番を頼むよ」
「私はセルディさまのおかげで、もうすっかり元気です。寝て待っているだけではなく、今ならお手伝いもできます」
「しかし俺はこれから遺物の回収をするため、魔獣の出現地を調査しにいくつもりだ。そんな危険がある場所へ、君を連れてはいけない。城内に留まるとしても謎の影が出現して、そちらもどれほど危険なのかもわからない」
「でも危険なのは私だけではなく、この敷地内にいる全ての人たちがそうです。私だけ逃げるなんて、すごくさびしいのです。どうにかお役に立ちたいのですが、聖域結界を王城敷地内に張るだけでは足りませんか?」
エレファナの思わぬ発言に、セルディを含め周囲も信じられないように耳を疑った。
「……なに?」
「聖域結界を王城の敷地内に数十層張りましたが、それだけでは足りませんか?」
エレファナが告げた事実に、周囲は聞き間違いかと静まりかえる。
しかしセルディは多少慣れているため、すぐに聞き返した。
「すでに警備の者たちが進めているとは思いますが、招待客の安全確保を最優先として、早急に人々をホールに集めて警備の騎士を配備をします。王都周辺に待機中の騎士と魔術師の増援も必要です。……しかし先ほど聞いた未知の影に対して、私も全く知識がありません。初めて聞きました」
「セルディでも知らないか……」
「とはいえ、聖域結界の効果があるようですので、城内の人を守りやすい場所へ集めて警備を固めるのが、当面の対策かと思います。その影を刺激することは避け、慎重に調査するとともに有識者を探すのが先決でしょう」
アステリオンは頷くと、セルディの言ったままの指示を出し、「私もすぐ行く」と付け足した。
指示を受けた騎士が立ち去ったあと、室内は静まりかえる。
セルディはエレファナの肩をそっと抱くと、ゆっくりと言い聞かせるように囁いた。
「エレファナ。君は空間魔導を使えたな?」
(あっ、私の魔導がお役に立てるのでしょうか)
「空間魔導は使えます。でも私は人に魔導を使いません。私の魔力は強すぎて、負担が大きすぎますから。治癒の魔導でも、道具にほんのりつけて間接的に使用しなければ、相手の心身を痛めます」
「では自分だけなら転移魔導で帰れるのだろう」
思わぬ話の流れに、エレファナは眉じりをさげた。
「……もしかして私だけ帰るのですか? セルディさまは?」
セルディはあやすように、やさしい手つきでエレファナの肩をぽんぽんと叩く。
「俺にはすることがあるからな。君なら一瞬で帰り、バートに伝言を頼めるな?」
「伝言……。なにをお伝えすればいいのですか?」
「『王城の敷地にドルフ帝国時代の遺物が出たらしく、魔獣が大量発生している。ドルフ領の砦に配備されている最低限の騎士を残し、他は早馬でここへ来れるようにして欲しい』と伝えてくれ」
ふたりの会話を聞いて、アステリオンは合点がいったように声を上げた。
「なるほど。何者かが王城の敷地内にドルフ帝国時代の遺物を持ち込んだのか、以前のドルフ領のように魔獣の大量発生が起こっているのだね。そしてエレファナの力を借りて、魔獣の扱いに慣れた砦の騎士たちを、こちらへ向かわせてくれるということかな」
「はい。エレファナだけなら自分の転移魔導を利用して、最速でドルフ領に戻れます」
「セルディさま、お任せください。バートに伝えたらすぐ戻ってきます!」
「いや、夜更かしは良くないだろう。エレファナはそのままポリーと一緒に留守番を頼むよ」
「私はセルディさまのおかげで、もうすっかり元気です。寝て待っているだけではなく、今ならお手伝いもできます」
「しかし俺はこれから遺物の回収をするため、魔獣の出現地を調査しにいくつもりだ。そんな危険がある場所へ、君を連れてはいけない。城内に留まるとしても謎の影が出現して、そちらもどれほど危険なのかもわからない」
「でも危険なのは私だけではなく、この敷地内にいる全ての人たちがそうです。私だけ逃げるなんて、すごくさびしいのです。どうにかお役に立ちたいのですが、聖域結界を王城敷地内に張るだけでは足りませんか?」
エレファナの思わぬ発言に、セルディを含め周囲も信じられないように耳を疑った。
「……なに?」
「聖域結界を王城の敷地内に数十層張りましたが、それだけでは足りませんか?」
エレファナが告げた事実に、周囲は聞き間違いかと静まりかえる。
しかしセルディは多少慣れているため、すぐに聞き返した。
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