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1章 転生

16話 村の護衛が決まった

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「また来たね」


村のかなり離れた場所に、いつもの悪い奴らが見えて、僕はやれやれと思いつつ、藁人形たちに指示を出していきます。
村の襲撃者と合わせて、僕はかなりの数を藁人形たちを使って倒していて、おかげで畑仕事をしていても指示を出せる様になりました。


「良い事もあったけど、おかげでまた色々分かってガッカリもしてるんだよね」


僕のレベルは上がらず、試しに自らの手で盗賊を倒してみたけどダメでした。
この分だとスキルも覚える事が無いかもしれなくて、藁人形たちを使っていても仕事が出来る今の状況は、ただの慣れかもとがっかりなんだ。


「でもまぁ、不便とかじゃないし、1000体以上を同時に使ってるから良いんだけどね」


襲撃者が多くなったせいでもあり、僕は村の防備を固めるために、藁人形たちを沢山配置させたんだ。
最初は大変だったけど、ゲームの指示出しと同じ感じで、要領はつかめたから問題ないと畑仕事をこなします。


「それにしても、盗賊が多いのはどうしてなのかな?」


数は少ない時もあるけど、容姿からしてもあまり悪くない人もいて、僕は少し不思議に思っていました。
そして、何か引っかかると思いながらも、村に近づいて来る盗賊たちを倒して行き、藁人形に倒した処理をさせていると、ある人達が見えたんだ。


「ジューネさんだ、もうそんな時期なんだね」


あれから1月なんだねっと、僕は直ぐに準備に走ります。
村長は分かっていたみたいで、他の大人たちと準備をしていたよ。


「村長、もう始めてるんですね、言ってくださいよ」
「そう言うがなアオ、重い荷物を運ぶのはワタシたちの仕事だ」
「そうかもしれないけど、出す品もあるんですよ」


最初に用意しておきたい物もあり、大人たちが準備しているのは、村で作っている物だけだったんだ。
お酒も運んでいたけど、主軸となる小麦と大麦は僕のスキルの中だと注意です。


「それはそうだが、こちらの後でも時間はあるぞ」
「今回は家畜を使った食材もあるんですよ、忘れたんですか」
「そう言えばそうか、じゃあ倉庫に出しててくれるか?」
「了解です」


遠くの倉庫を見て準備を頼まれ、僕はミドリたちと一緒に準備を始めます。
大人は人選した人でないとダメなので、その間に何を出そうかミドリたちに質問だよ。


「そうねぇ」
「あたいお肉が良いと思う」
「ウチは、チーズ」
「ボクはマヨネーズ」


それがあったと、みんなの意見はマヨネーズで揃ったよ。
でもね、卵を使ってる以外は家畜の品とは言えなくて、僕は小瓶に詰められたマヨネーズを出しながら、他にもお肉を出す事にしました。


「ベーコンに燻製肉と良い感じだね」
「干し肉と違うから美味しいよね」
「そうだねサーミ、魚とかは出せないけど、今日は夕飯に出そうね」
「うん、アオ大好き」


サーミは抱き着いてお礼をしてきて、燻製をした品物が大好きなのが伝わってきます。
みんなのおかげで、僕は新たな発見をして助かってるし、ミドリたちもそうして僕を助けてくれる、だから僕もみんなの頼みは出来る限り叶えてて、5枠の内容が大変になってるんだ。


「来たぞアオって、おいおい何遊んでるんだ?」
「村長、遊んでないですよ、これはスキンシップです」
「いつもやってるだろ、遊んでる様にしか見えんぞ」


村長には分かって貰えず、渋々と品物を持って運び始めるけど、広場には既にジューネさんたちが到着していました。
品物を鑑定してて、僕の品以外にも凄く喜んでもらえていたよ。


「この村の品はどれも素晴らしいですね」
「お世辞は良いから、今回のあれを出してくれ」
「まったくせっかちですね」


ジューネさんが村長に何かを渡し、あれは何だろうと良く見ると、小さな木箱で中身は分かりませんでした。
僕がもらった訳じゃないから良いかと、僕の品の鑑定に入って貰ったんだけど、そこでジューネさんに例の件を教えてもらったよ。


「そうですか、爆裂ソードの皆さんが護衛に残ってくれるんですね」
「はい・・・それに伴って、ちょっとお話があるので、今夜伺っても良いですか?」
「それは勿論です、ミドリたちもそれで良いよね?」


夜は、いつもみんながいるから確認したけど、全員了承してくれたよ。
でも、どうせ寝ているだろうと、聞いた僕はあまり意識はしてなかった。


「でもさ、まさか爆裂ソードの皆さんまでとか、僕聞いてませんよジューネさん」
「仕方ないでしょアオ君、みんな君に自己紹介したかったのよ」
「まぁ分かりますけどね」


村の護衛に付くという事は、僕の事も話すという事で、村長が夕食の宴で教えたんです。
だから僕に顔見せして来た訳だけど、まだまだ近くには行けません。


「アオ君、これからよろしく」
「はいサーシュさん、皆さんもよろしくお願いします」


皆さんとの挨拶が済むと、今回の問題となっているお話がジューネさんから飛び出し、僕としては願ってもない事でした。
それは、隣の領主様からのお誘いで、僕は賛成の手紙を書く事になったよ。


「アオ君、そんなに簡単で良いのかい?」
「勿論ですよジューネさん、予定していた事でしたし、こちらの領主には既に渡しています」
「そうだったのか・・・それで、結果は聞くまでもないのかな?」
「はい、村に旅商人を派遣してくれと伝えたけどダメでした」


次の段階に行くにはそれしかないのに、こちらの領主様はそれすらもしてくれず、僕たちを助けてくれたのはいつも隣の領主様でした。
だから、その恩返しとしても品物を街に卸していたのに、次も考えてくれて大助かりです。


「しかも、護衛まで付けてくれるなんて、ほんとに嬉しいです」
「本当は他のPTにしたかったんですけど、今回は仕方ないです」
「そう言えば、爆裂ソードの皆さんって結構強いんですよね?」


大切な戦力なんじゃないかと心配になったけど、どうやらそれほどに期待されているみたいで、次のジューネさんの護衛もかなり強い人を呼んでいるそうです。
それなら良かったと、藁人形を渡すのを止めて、藁を使った鞄を渡しました。


「これって?」
「僕の作った鞄で収納スキルが付与されてます」
「「「「「えっ?」」」」」


指輪のおかげで魔力が使えるようになったからと、追加の説明をしたんだけど、ジューネさんたちは鞄に注目してて聞こえてませんでした。
それでも使ってほしいので、全員分出しましたよ。


「他にもあるんですけど、靴とかはちょっと装備と合わないんですよね」
「ね、ねぇアオ君・・・もしかして、魔力がもっと上がったら他にも作れるかしら?」
「出来ますけど、魔力を上げる装備って高いでしょ?」
「「「「「いやいや」」」」」


皆さんの声が揃ったのは、どうやら藁の鞄だけでも十分プラスになる様で、明日までに生産してほしいと言われたよ。
でも、それほどは作れないので10個の約束をしました。


「すみません、これは凄く大変なので」
「「「「「いやいや十分でしょ」」」」」
「そうですか?」
「「「「「そうだよ」」」」」


皆さんの声が揃いまくりで、ミドリたちも笑っていましたけど、次に来れるのが領主会議の後なのでかなり先になると、ジューネさんは悩んでいました。
ここでは、そろそろ雪が振り始め、その間にそんな会議が遠くの街で行われます。


「まぁその結果も教える事が出来るし、そこで品を買って来るわ」
「期待しています」
「ええ、必ず凄いアクセサリーを買って来るわねアオ君」


凄く張り切ってくれるジューネさんだけど、藁で出来た鞄がそこまでとか、ちょっと考えてしまう。
そして、既に村で使っているあれも、もしかしたら大変なモノなのかもしれない。


「これは外には出せないね」


少し考えれば分かる事だったけど、僕は作ったんだからと必要に応じて使っていた。
それは、住む家が足りなくなった事で使い始めた【藁の家】で、建設系ゲームにあった品でした。
あれは、中には最大500人が入れる仕様だったんだよ。
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