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休暇九日目①幸せな目覚めのはずが

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「・・・ん・・・うん・・・ん?」


顔にふわふわと当たる感触がどうもいつもと違う。ウィルフレッドは寝ぼけ眼からうっすらと意識が覚醒していく。昨晩は愛しい妻であるレティシアを抱きしめて眠ったはず。何かがおかしい。


「ぶはっ!!・・・おい、何でお前がここにいる!?」


大きなウィルフレッドの声に、レティシアが目を覚ます。


「ウィル・・・?どうしたの?」


レティシアがウィルフレッドの腕の中でモゾモゾっと動く。


「コイツ、どこから入ってきたんだ・・・」


目を覚ましたウィルフレッドの目の前に白いふわふわとしたものが見えた。そう、あの猫が何処からか寝室の中に入り込み、その上二人の顔の間に丸まって眠っているのだ。猫はちらりとウィルフレッドを見るが興味なさげにまた元の姿勢に戻っていった。


「あら?窓でも開いてたのかしら?」

「そんなはず・・・」


昨晩窓の外を確認した時はきちんと閉まっていた。ウィルフレッドは寝台から起き上がると窓を確認する。わずかだが窓が空いている。ウィルフレッドはしまったとばかりに固まった。昨晩見た時は確かに閉まっていたはず。だが鍵まで確認していなかった事に気が付いた。


「してやられたな・・・」

「どうしたの?」

「鍵がかかってなかったらしい」

「まぁ・・・開けて入ってきちゃったのね」


レティシアは白い毛並みをゆっくりと撫でる。猫は気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴す。レティシアが嬉しそうに猫を撫でているものだから、ウィルフレッドは強くは言えず、恨めしそうに猫を睨みつけていた。その時だった。


コンコンコン


「失礼致します」


メイドが寝室へと入室してきた。


「坊っちゃま、若奥様、おはようございます」

「おはよう」

「あぁ」


ウィルフレッドがブスッとした態度で答えると、メイドは何事かと覗き込む。理解したとばかりに苦笑した。


「まぁ、まぁ、猫をお部屋で可愛がってらしたのですね?」

「可愛がってなどいない。コイツは勝手に侵入してきたんだ」

「あら、作用でございましたか」


メイドは何処から侵入したのかとキョロキョロ見渡すと合点がいった。


「窓からですか」

「全く、お陰で幸せな目覚めが邪魔された」


ウィルフレッドは機嫌の悪さを隠しもせずメイドに悪態をつく。しかし頭の中は、コイツをどうしてくれよう、邪魔されずにレティシアと過ごすにはとフル回転させていた。










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