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公爵令息の視線の先に

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馬車に乗るため歩いていたマクシミリオンに宰相が声をかける。


「マクシミリオン殿。貴殿は、ヴィンセント殿下の側近として頑張っておられた。将来は殿下の側で活躍し、支えていってくださるだろうと思っていた。非常に残念でした。ですが、貴方は優秀な方、きっと辺境でもなくてはならない存在に、すぐにでもなられますよ」

「宰相・・・ありがとう。俺は道を間違えた。これからは公爵令息だなんて肩書きは使えない。俺は、俺の力で、父上を見返して、認めてもらえるように頑張るだけだ。だが・・・認めてもらえたところで、どうなるわけでもないのもわかっている。それに俺自身、もう、ランドルスト公爵家には戻ることはないだろう。俺は、俺でしかない。失敗はした。だがな、これのおかげで友と呼べる存在ができたのも事実だ」


マクシミリオンはそう言うと、チラリと視線と向ける。ウィルフレッドは、随分離れたところをレティシアに手を引かれるようにして歩いている。


「なんだあれ、随分とのろのろ歩いているんだな・・・」

「騎士団長殿の嫉妬だそうですよ」

「嫉妬?どういう事だ?嫉妬したら足の歩みが遅くなるのか?」

「そうかもしれませんな。今朝方、陛下と夫人がお茶をして話に花を咲かせていたようなんですが、その様子を見て、騎士団長殿は、陛下にまで嫉妬し、牽制し、随分な様子だったそうなのですよ」

「はぁ?陛下にまでか?」

「えぇ、話の内容が聞こえてしまったのまではよかったのですが、大袈裟に勘違いされたみたいでしてね。夫人を陛下に横取りされると言ったそうなのですよ」

「嫉妬深い男も中々面倒なもんだな」


マクシミリオンは苦笑いしながらウィルフレッドを見ていた。だが、その様子が羨ましくて仕方なかったのも事実である。あそこまで醜態を晒しても、どれだけ格好の悪いところを見せても、妻が愛してくれる。ウィルフレッドはそんな相手を見つけることができたのだと羨ましく思った。じっと様子を見ているとこちらに気付いたウィルフレッドと目があった。マクシミリオンは思った。それは友に向ける目じゃないだろう?ウィルフレッドはマクシミリオンと目が合うと、途端に睨みつけ、レティシアを後ろから抱きしめた。


「ちょっと、ウィル、先に進めないわ」

「もう行かなくていい!」

「どうしたのよ」

「あいつが見てる」

「?」


レティシアの視線の先には苦笑いしながらこちらを見ているマクシミリオンと、横で微笑ましく眺めていた宰相がいた。




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