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騎士として男として
しおりを挟む「よく来たな」
ソルディオに向かって、声をかけるのは、近衛の騎士団長であるウィルフレッド。ソルディオを王都に呼び寄せた本人だ。ウィルフレッドの執務室に、王都に出てきたばかりのソルディオが訪れていた。
「アバンス団長、これからよろしくお願いします」
「あぁ、辺境とはいろいろと違いがあるから慣れないこともあるだろう。何かあれば相談してくれ」
「お気遣いありがとうございます」
「お前にはアイオロスの下につき、第一隊隊長として励んで貰う」
「はい」
「レガリー隊長、よろしくお願いします。俺のような若輩者が副団長だなんて、烏滸がましいですが・・・」
頭ひとつ背の高い黒髪の男に挨拶をされ、こんな若者が副団長なのかと、何故か負けたような気分になる。申し訳なさそうな笑みを浮かべる男も、どこぞの貴族のご子息様なのだろうとソルディオは眺めていた。アイオロスがなんだか申し訳なさそうに眉をさげる。
「年下で、しかも平民出身の上司など、面白くありませんよね?」
ソルディオは驚いた。まさかこの男が平民だったとは。まぁ、子爵家の次男である自分も、対して変わらないだろう。
「面白くないとは思いませんでしたが、正直驚きました、平民出身であったり、爵位がなくとも、近衛では実力次第で取り立てて貰えるということですね。何だか夢を持てます」
二人の様子を見ていたウィルフレッドが口を挟む。
「個人の資質次第だな。近衛には平民も孤児院育ちの者もいる。どんなに爵位があろうと、力があろうと、向かないと思えば抜擢することはないし、忖度などしない」
ウィルフレッドの真剣な表情に、ソルディオは一つだけ問うてみたくなった。
「俺も少しは認めて貰えていると言うことでしょうか?」
「ん?騎士としては認めているぞ?」
「騎士として・・・は?」
ウィルフレッドはふっと笑う。
「男としてはまだまだだと言うことだ」
「っ!?」
「結局、ものにはできなかったんだな・・・」
「・・・わざわざ傷を抉らなくともよいではないですか・・・」
ソルディオはジト目でウィルフレッドを見る。
「ははっ、まぁ、そう言うな。お前はまだ若いし、これからだ。王都に出てきたんだ。新たな出会いがあるさ」
快活に笑って見せるウィルフレッドに、ソルディオの心境は複雑だった。初恋で最愛のエルサを越える女性などいるはずがないと。だがその気持ちも簡単に変わってしまうものなのだと言うことを知ることになるとは、この時のソルディオが知るはずもなかった。
コンコンコン
そんなやり取りをしていた時、執務室のドアがノックされ、来客が知らされた。
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