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07敷地のリフォームを始めます。

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「それでは、何かありましたら、お呼びください。」
「はい、お勤めご苦労様でした。」

先程、感動の対面?を果たした私たちは、少し雑談したあと、解散することになった。

この国の貴重な魔術師の皆様の手を、これ以上煩わせるわけにはいかないし、なによりあんなキラキラの視線を向けられ続けるのも、なかなかにしんどい。

そして、残ったのが二人。


一人は私をここまで連れてきてくれたジェラルド様。
正式にはジェラルド・ロレンテ騎士団副団長様。

ミッドナイトブルーの髪にサファイアブルーの瞳。
見るからに大人びていて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
さらに情報を付け加えるとするなら、街を歩けばきっと十人中十二人が振り返るであろう美形。

初めて会ったときに唯の兵士と、鎧というか、着ているものが違うなぁと思ってはいたけども、まさか騎士様だったとは。


そして、もう一人は先程私が名乗る前に家名を導き出した人物。
テオ様。

正式にはテオ・フォーセル魔術師団副団長様。

アイビーグリーンの髪に、エメラルドグリーンの右目と金色の左目を持つオッドアイ。
こちらもとてつもなく美形である。
二人を目の前にすると眩しすぎて、視界が眩む感覚に陥るのは私だけでは無いと思いたい。

ジェラルド様もテオ様も、御年二十六にして師団副団長の地位を賜っているとは、さぞかし優秀な方々なのだろう。


ちなみに、補足情報であるが、師団副団長の地位に就任したのはどちらも二十歳のときらしく、その記録は歴代最速だったのだとか。



先程去って行った皆様が誇らしげに語って行きました。


どちらも同い年であるが、やはりジェラルド様が大人びて見えるせいか、テオ様は幼く見えてしまう。
おそらく、性格に因るものが大きいだろうが。

なにせ、テオ様は好奇心旺盛で、感情が外に出やすいらしい。

まぁ、感情の揺れが大きい事が、魔術師として適しているかは別として。

従えられる人の立場に立つと、上に立つ者として親しみやすく、理想的であるに違いない。



「建物や庭など、後宮として定められた形はあるのですか?」
「定められた形というのは無いですねぇ。ですが、短時間で魔術師が造りやすいという理由で後宮の建物なんかはたいてい同じ様式ですよ。」
「フリア様は、なにか希望の形がおありですか?」



「与えられた区画を魔改造するのは、ありですか?」
「…魔改造、…?」


私の発言の意味を掴みあぐねて、テオ様が困惑の表情を浮かべる。



「ある程度の模様替えなどは、お妃様候補の希望に沿うようにと言いつかっておりますので、フリア様が手を加えるのであれば問題は無いと思いますよ。」
「では、出るときには他の敷地と同じにして出ますので、私が住む一年間だけ、魔改造させていただきます。」



ジェラルド様の説明から察するに、次の候補が住む前に元の状態に戻しておけば問題ないだろうと勝手に解釈することにした。

そして、地面に手を付けると、作りたい物を頭の中で思い描く。
ゆっくり、慎重に、イメージを伝え、浸透させていく。




「さぁ、始めましょう!」




与えられた区画の全てにきっちりと魔力が浸透したのを確認してから立ち上がり、右手をス、と横に動かす。

手の動きに沿って、示された場所から次々とイメージ通りの建物や景色が再現されていく。


既に造られていた屋敷の外観はそのままに、内装のみを変更し、綺麗に整えられる予定であっただろう庭には、土が剥き出しになった状態で、規則正しく盛られていく。

屋敷の側には小さな家のような物ができあがり、その隣には井戸が現れる。
敷地を囲うように生い茂っていた木々は、季節によって実を付ける実用性のあるものへと変化した。

そして、屋敷の隣には藤棚が広がり、藤だけではなく葡萄やキウイなど蔓性の果物が植えられ、日陰にあたる部分には木製の三、四人がゆったりと座ることのできる椅子とテーブルが据えられる。



「…す、すごい…!!」
「まさか、これ程、とは…」


ものの数分で思い通りの魔改造を終えた私の耳に届いたのは、残った二人の驚きに満ちた声だった。



「出るときには、きちんと作り替えますので、これでご容赦いただけませんか?」
「…、すごい!本当に、すごい!これがバイアーノ公爵家の実力…!!たしかに、これは、魔改造。」
「ものの数分でこのように様変わりするとは…。目の当たりにしたというのに、信じがたい…。たしかに、魔改造と呼ぶに相応しい。」

――魔改造したことを責められる感じはなさそうだから、まぁ、いいか。
帰るときはしっかり元に戻すんだし、ね。

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