無視された公爵夫人

無視された公爵夫人

とことん無視されています。これって故意？

ルーファス様たちが帰ってきたのは、冬に入る前。
ミーニャ様が散々王都でやらかしたから、居辛くなって帰ったのでしょう。
やらかした代償は、全てお金で解決したみたい。
それくらいの予算は出ていた。

「ルーファス様お帰りなさいませ」

お出迎えに参加してみました。

ルーファス様は周りでギャーギャー叫ぶミーニャ様とは違い、大きな目を見開いて驚いているようだ。

王様はわたくしのことを話さなかったのだろうと言うことがわかりました。


「マドレーヌ？」

「はい。旦那様？」

「ルーファス様！はやく邸に入りましょうー！私疲れちゃった！」

ミーニャ様は空気が読めないらしい。

「今日は…何の用事で？」

「普通にお迎えしたのですが？」

「そこのメイド！邪魔しないでくれる？」

ミーニャ様？私たちの会話を邪魔しているのは貴方ですよ？

私からは、話せないのだ。
『王命』で、結婚していることは話せないのだから。
アレ？聞かれても話せなくない？
しばらく話すなと言われている。
「しばらく」って、どれくらいなのか？

「ルーファス様には、執務がありますが、旅の疲れがありますでしょう？引き継ぎはまた、後日に…」

「引き継ぎか…わかった。明日からよろしく頼む」

「えー！執務って…お仕事ですよね？今までやってなかったのに…」

「わたくしが代行していたのです。ミーニャ様」

「あなた誰よ！」

今頃になって、わたくしのことを聞かれたよ。

「まぁ、いいわ！ふんっ！」

でも、聞いたのに興味ないと言わんばかりに私の前を通り過ぎると、ルーファス様を連れて邸に入っていった。

「マドレーヌ様、先程の会話だと執務の引き継ぎに来ただけだと思われたかもしれません」

バールは前までなら、このままルーファスと本宅にはいるのだが、私のそばに残っている。

「あら？行かないのバール？」

「はい。本館には入るなと言われていまして」


嬉しそうに答える。



このまま、ルーファスからは連絡なし。

引き継ぎに訪れても、「忙しくて」と言われて取り次ぎすらままならない。

それでいて、報告書には真面目に答えが帰ってきた。


ミーニャ様の子が生まれるまで…静かに時は流れていった。



「マドレーヌ様…ミーニャ様のお子さまは…ルーファス様の色ではありませんでした」

バールの報告は別段何も気にはならない。
もう、勝手にして欲しい。

「母親似なの？」

「いいえ、どちらの色でもありません。他の男の子種だと思われます。魔法調査派遣依頼をルーファス様が出しました」

「それは大変ね」

わたくしには関係ないわね？
子どもはわたくしの子として育てなければいけなかったので、そのプレッシャーから解放された。

「ミーニャ様は籍を入れていない妾なので、書類上は公爵家にダメージはありません」

「他人の子を育てるなんて、嫌だったから助かるわ」

「しかし、マドレーヌ様は離婚出来ていないので、子を作るプレッシャーが来るかもしれません」

「公爵家の跡継ぎをどうしましょうか？第二夫人でもルーファス様に娶っていただく？」

「ご自分で産む気は無いのですね？」


「無いわね」


「そんな、ハッキリと…」


「ルーファス様はイケメンだから、思い出くらいに抱かれるのは良いけど、子どもとなると別ね？あんな面倒な旦那様と同じ子が出来たらと思うと…子育て大変そうでしょう？」

「…そんなものなんですね…」

「幼い妹弟がいたから、普通の子育ては出来そうだけど…一癖も二癖もある子が出来そうだわ…面倒じゃない？」

優雅な公爵家の毎日は、わたくしの身体を怠惰に蝕みます。
剣術の稽古はしているけど、20になると…少しずつ衰えるのかしら？

「『王命』で離婚は出来そうにないから…そのうち、世継ぎ問題をどうにかしないといけないけれど…自分の子が生まれたら、子ども教育にのめり込んじゃいそうでしょう？」

「否定は出来ませんね」

「ルーファス様はイケメンだし、モテモテのお金持ち！浮気性だから、大丈夫よ！そのうち愛人様を連れてきてくれるわ！」

「そんな、嬉しそうに言われなくても…」