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無視された公爵夫人
神子様が公爵様の記憶を戻したらしい…それで?
しおりを挟む「奥様!コレをみてくざさい」
バール…また大衆新聞ですか?
「今日は昨日の夜会の一面かしら?」
そう思って…見出しを読む。
『公爵様、記憶喪失からの回復!神子様の神秘』
『公爵様の記憶戻る前と後…余の違いに王様も困惑』
「あら?ルーファス様、記憶戻ったの?」
大衆新聞によると、王様誕生日祭の夜会で神子様がルーファス様に触れた途端に、ルーファス様が意識不明に、翌日の朝、記憶を戻したらしい。
記憶を失っていたときの記憶もあるらしく、とても混乱しているとか。
「ルーファス様…黒歴史を自覚してしまったのね?」
ミーニャは献身的に介護に加わるものの…神子様に太刀打ち出来ずに困っている様が目に浮かぶ。
それにしても…王様と水晶の連絡をしているときには、ルーファス様が意識不明だったことが判明した。
私には伝える必要もないと思ったのかもしれない。
「ルーファス様が帰ってくるわね?ミーニャ様のことは、『王命』通りに致しましょう」
「お待ちください奥様、ミーニャ様のお腹の子が生まれるまでは…」
バールの言いたいこともわかる。
ミーニャ様は貴族に憧れる田舎の娘。
欲に溺れる腹黒さんなのだ。
素行がよい人とは言えず、直す気もないみたい。
私が付けた護衛の報告は、ミーニャ様の怪しい行動ばかり目立つ。
それよりも…
記憶が戻ってもルーファス様は直接連絡なし。
相変わらず、わたくしは無視される。
謝罪もないのはわかる。
責任転換がお得意なお人だ。
しかし、これまでの記憶から…慌てて帰るとかしないところがルーファス様らしいと言えばらしいかなぁ?
「ルーファス様の記憶が戻っても…生活は変わらなさそうね」
「連絡はしないのですか?」
「なぜ、わたくしが?」
「…恐らく、ルーファス様の立場から見ると、ルーファス様はマドレーヌ様がもう公爵邸にいないと思っている可能性があります」
「ん?何で?時々、顔は見ていたでしょう?」
「『王命』で、奥様の存在はお知らせしておりません。別館にいたため、仕事の引き継ぎ程度にしか見られないのではないでしょうか?」
「そうね…元々離縁を望んでいたから、『王命』で引き止められているのも知らないわねー?」
「作用です。ルーファス様の性格上、ハッキリと物事をお伝えしないと…誤解するのではないかと?」
「あり得なくはないけれど…残念ながら!ルーファス様とちゃんと連絡をとる手段がないわ」
「……」
バールが沈黙した。
わたくしがルーファス様たちに護衛を付けて報告書出させていますが、近くにいる訳ではなく、王城に入ってからは、遠巻きに護衛をしているだけだ。
先日の話し合いで、王様が水晶をルーファス様に持っていくことは考えられない。
「関心がないなら、此方のことには干渉するな」と言われそう。
手紙を送っても、ルーファス様に直接手渡されることはないだろう。
「出来ないことをしても仕方がないでしょう?どうせ、わたくしの存在を知っても知らなくても…無視されるのはいつものことですわ」
「無視など…そのようなお言葉」
「ルーファス様に行動する気が無ければ、変わらないのです」
『王命』の効果はわたくしを縛るものだ。
それを解除出来るのはルーファス様だけだけれど…
ルーファス様はその『王命』を知らない。
わたくしに多少なりとも…興味を示してくれていたならば…他の理由でわたくしに連絡を取ろうと考えるだろう。
普通の夫ならば…
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