形のない編み図

編み直された古いセーター……。古いしきたりと慣習の残る京都……。地方出身の優人と京都で育った織絵との出会いと付き合いの間には、着古したセーターがあった。
一枚のセーターは草野優人の生い立ちと、仲の良い家族のことを語り、やがて優人の弟賢人や、草野家の家族との付き合いへと進展していく……。
編み物を伝承するには、現在では誰でも同じように編むことができる編み図(パターンとも云う)があるが、草野優人の祖母も母も、編み図など無くても、セーターやマフラーを編んでくれていた。
優人も弟の賢人も妹の美与も祖父も父も、祖母や母が編んでくれた物を身に着けていた。
父のセーターが解きほぐされ、編みなおされて兄弟のセーターになる、子供たちは、それを喜んで愛用し続けていた……。

食品会社の研究室に勤務している草野優人は、工場見学に来た大学ゼミの学生たちの案内役を命じられた。工場見学に来た食物栄養学科の学生の中に副島織絵がいた。
織絵は卒業後、弁当惣菜関連の会社に就職した。機会があり優人に仕事上の相談を持ち掛けた。
織絵は相談を受けてくれたお礼に、優人にセーターをプレゼントしようとする。
自分でセーターを編めない織絵は、セーターを探し回り、最後に編み物専門のネットショップに巡り合う。
手芸店やネットショップのひと達の編み物に寄せる思いが、優人の亡くなった母の想いを織絵に教えた。(全てフィクションです。)(連載11回)
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