稲葉真乎人

稲葉真乎人

市井の片隅で、他人を思い遣り、優しく寄り添う、そんな生き方をしている心優しいひと達。世の中まんざら捨てたものではない、そう思いながら、職場や日常生活の中に恋話を加えて書いています。
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精密機器製造会社の社内で、信望厚く重役を約束されている52歳の君原秀作技術部部長と、若手社員との日常の交流に、君原秀作の旧友であるふたりの女性が絡らんで行く。 優しくて面倒見の良い部長と称される君原秀作は、多くの社員から慕われる部長として、社内で知らない者はいなかった。 若い社員達は、所属部課を問わず、優しく声を掛けてくれる秀作の元に寄ってきた。 秀作と親交を持った若い社員たちは、互いに横の付き合いを深める。その付き合いが恋愛に発展することも少なくなかった。 或る日、秀作はデパート店内のティーサロンで、美麗な女性に目を引かれた。グリーンの万年筆で耳を触る癖と、両目じりの黒子が記憶を蘇らせた。 故郷の中学時代、校内で人気を二分していた女生徒のひとり、西瑞穂と遭遇したのは、三十七年ぶりのことだった。 秀作の勤める職場で評判の良くない泉田祥子は、父親の伝手で入社していた。秀作は、後になって泉田祥子が西瑞穂の娘だと知る。 中学時代に人気を二分していた、もうひとりの女生徒、水沼友香理は、夫を亡くしたあと、人材派遣会社カズホを起業して社長に就いていた。 秀作の職場に派遣会社カズホから派遣された社員がいた。派遣社員を本採用にする話が出たとき、秀作はカズホの吉岡社長と会った。その社長が旧姓水沼友香理だった。 技術部から営業本部に移り、優秀な社員として嘱望されていた吉岡賢一が、水沼友香理の息子だと周作が知ったのは、派遣会社の吉岡社長が水沼友香理だと知ってからのことだった。 西瑞穂と水沼友香理から苗字の変わった泉田瑞穂と吉岡友香理と出会い、秀作はふたりの生きざまを、社員でもあるその娘と息子を通して知ることになる。 秀作は大学時代からの親友、桜井雄一が妻を亡くしたことを憂慮していた。 雄一と、母を亡くして鬱になっていたひとり娘の幸乃の将来に、秀作の家族は手を差し伸べる……。 秀作は、伴侶を亡くした同世代の友人達のために心を砕くが、意に沿わず、幸せから遠ざかって行く友もいた……。(全てフィクションです。)    
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文字数 97,417 最終更新日 2024.04.05 登録日 2024.04.05
大手薬品グループ傘下の動物用医療器株式会社は、搾乳牛と競走馬の育成に関わる医療器材や医薬品の開発製造販売の会社である。 畜産動物、特に牛馬に興味のあった由井秀一には高校時代からの夢があった。 夢を叶えるために大学では獣医科を選び、動物用医療器株式会社に就職すると、脇目も振らず酪農家や競走馬育成農場などを訪問し仕事に取り組んでいた。 同期の中でも早い管理職昇進だったが、特に望んだことではなく、喜びもなかった。 由井秀一にとっては、出世に興味はなく、好きな仕事ができれば、それでよかった。 父の友人に薦められた結婚は数か月で破綻した。離婚は、社内に予想外の噂の種を作った。 人事課は東京本社から大阪支店への転勤辞令を秀一に出した。秀一が噂を気にせずに仕事に専念できるようにと、総務部人事に上司の働き掛けがあったからである。 将来を嘱望され、部下や上司からの人望も厚く、離婚歴があるとはいえ、独身課長の秀一に接近する女性はいた。 離婚経験は少なからず結婚観や女性観に影響を及ぼし、都会の女性は自分には相応しくないと秀一は思い始めていた……。 秀作は部下の若い男女の恋愛に関わるが、自分自身は恋愛も結婚も、暫くは縁のないものとして考えていた。 そんなとき、故郷の親友、岡谷健吾から、秀一を慕っている妹の有希が、今でもロックバンド『THE POLICE』の『EVERY BREATH YOU TAKE』を聴いていると聞かされる。 高校時代に校内のバンドコンテストに参加するため、健吾の家の牧場の納屋で練習をしていた曲だった。 男性から女性に対する思いを吐露する楽曲の、日本語の曲名は『見つめていたい』である。 有希が曲の内容とは違う、『見つめられる』側の立場で聴いていたと思うと、秀一の思いは複雑だった。 純朴で物静かな有希の、自分への想いに応えるために、故郷に戻って、夢だった獣医師になりたいと考えるようになる。 幼い頃から無口で大人しかった有希は、秀一の傍で遊んでいた頃から、大人の女性に成長した今も、秀一を慕っていることを誰にも話してはいなかった。 想いを口に出して伝えられない有希は、言葉に代えて想いを伝えようとしていた。 秀一は故郷にいる妹から、有希のスケッチには、胸を打つ風景が、長きに亘って何ページも描き続けられていると聞かされる……。その絵の意味を理解した秀一は、健気な有希の想いに応えようとする……。 (全てフィクションです。)
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文字数 78,565 最終更新日 2024.03.31 登録日 2024.03.31
大学生の頃から、抜群の感性と演奏テクニックを具え持ち、人気を得ていたジャズバンド。 アマチュアのアーザンハウス.カルテットのメンバーは、高校時代のブラスバンド部からの同級生で当年37歳。 Piano & Vocalの麻野陽一は、医療機器会社の研究室リーダー。 Guitarの田神隆司は、骨董店「筍伸堂」の跡継ぎ。 Drumの園田雄作は、病院内の社会福祉士で、父親は芸大出身の音楽教授。 Bassは、竹間登……西陣織と丹後縮緬の「反物竹屋」の後継ぎである。 家庭の事情から、結婚を急ぐ必要に駆られた竹間登は、仲間に合コンの設定を頼んだ。 集まった男女の間には、夫々の仕事や個人的な繋がりを通して、多様な関係が生まれる。 ジャズバンド活動と、日常の付き合いの中で、仲の良い四人は、バンド演奏も恋愛についても、互いに気配りをしながら、自分の恋愛も育んでいく。 麻野陽一は、ライブ.パブ《Lava》オーナー石野繁樹の娘、石野優香と恋に落ちるが、優華の軽率な行動と嘘が、陽一との関係を崩壊させる。 娘を案じる石野繁樹は、一方的に陽一に責任を被せ、糾弾した。 陽一のバンド仲間は、《Lava》ではステージ演奏の常連だったが、一切の出演依頼を断り、バンド活動も休止する。 バンド仲間が《Lava》への出演拒否と、関係の断絶を決めたのは、恋愛中だった陽一を事実無根の理屈で一方的に悪者扱いし、苦境に陥れた石野繁樹に対する憤りと反発だった。 バンド活動を休止して三年後、新しいジャズラウンジ《Freddie》のオーナー沼沢英吾から、バンド復活を望まれる。 アーザンハウス.カルテットの演奏を《Freddie》で聞いた石野繁樹は、クリスマスの日に、陽一のピアノ演奏を自宅に来てやってもらえないかと、陽一への伝言を沼沢英吾に託した。 石野家には、陽一のお気に入りのピアノ、ベーゼンドルファーがある。 三年ぶりに訪れた石野家で、優華が演奏しているとき、陽一は勧められて優華の隣に座り、連弾する。 ベーゼンドルファーの前に優華と並んでいる時、楽しく過ごしていた頃のことがフラッシュバックした……。 バンド仲間の友情と、アラフォー.バンドマンの婚活ストーリー。(フィクション)
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文字数 99,769 最終更新日 2024.03.22 登録日 2024.03.22
編み直された古いセーター……。古いしきたりと慣習の残る京都……。地方出身の優人と京都で育った織絵との出会いと付き合いの間には、着古したセーターがあった。 一枚のセーターは草野優人の生い立ちと、仲の良い家族のことを語り、やがて優人の弟賢人や、草野家の家族との付き合いへと進展していく……。 編み物を伝承するには、現在では誰でも同じように編むことができる編み図(パターンとも云う)があるが、草野優人の祖母も母も、編み図など無くても、セーターやマフラーを編んでくれていた。 優人も弟の賢人も妹の美与も祖父も父も、祖母や母が編んでくれた物を身に着けていた。 父のセーターが解きほぐされ、編みなおされて兄弟のセーターになる、子供たちは、それを喜んで愛用し続けていた……。 食品会社の研究室に勤務している草野優人は、工場見学に来た大学ゼミの学生たちの案内役を命じられた。工場見学に来た食物栄養学科の学生の中に副島織絵がいた。 織絵は卒業後、弁当惣菜関連の会社に就職した。機会があり優人に仕事上の相談を持ち掛けた。 織絵は相談を受けてくれたお礼に、優人にセーターをプレゼントしようとする。 自分でセーターを編めない織絵は、セーターを探し回り、最後に編み物専門のネットショップに巡り合う。 手芸店やネットショップのひと達の編み物に寄せる思いが、優人の亡くなった母の想いを織絵に教えた。(全てフィクションです。)(連載11回)
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文字数 31,654 最終更新日 2024.03.17 登録日 2024.03.17
精密計器販売部門に在籍する鴻池俊輔は、社員から慕われる営業一課の課長である。 若い課員達は、俊輔の管理姿勢を歓迎し、それに応えるように販売予算の長期間達成を実現している、チームワークの良い課として知られていた。 総務課に所属していた湯元美由紀と福井信二は結婚を前提に付き合っていた。 同じ総務課の独身最年長女子社員、糸井良子が社内のブーイングを受けながらも福井信二に手を出し篭絡して結婚した。 元々、良子は多くの社員から嫌われる存在だった。結婚して退社したことを陰で喜ぶ社員は多かった。 福井夫婦には、結婚当初から夫婦仲が悪いと云う噂が流れていた。 上司は、信二の夫婦仲と職場での居心地を考慮して、東京支店転勤を命じた。 良子は信二の転勤には同伴せず、上司の配慮は良子からの離婚手続きを早めただけだった。 信二の離婚が成立し、暫く経った或る日、俊輔は美由紀から相談を受ける。 美由紀の父親と俊輔の妻律子の父親は、共に検事上がりの弁護士で、親しい付き合いがあった。律子と一緒になった俊輔も、律子と一緒に何度か湯元家を訪ね、懇意にしていた。 公私混同は一切しない俊輔は、美由紀と知り合いであることを社内では話していなかった。 美由紀から相談を受けた同じ頃、珍しく糸井良子が会社に顔を出した。再婚を嘗ての同僚に伝え、結婚式に出席を頼むためだった。 再婚相手は営業二課が担当する大北精工の専務で、社長の息子だった。 社内で来訪を歓迎する社員はいなかったが、ただ一人、同期入社だった営業二課庶務係の高原優子が話を聞いてやった。 暫くして、大北精工の経営不振に伴う計画倒産が分かり、営業二課の手形不渡が心配される事態が起きる。大北精工の社長と専務は早々に姿をくらましていた。 俊輔の部下たちは、会社が被る損害を憂慮し、営業二課の担当にも関わらず、迅速に情報収集に奔走した。 冷たい雨が、激しく叩きつけるように降る日だった、各地で局地的豪雨による交通事故が多発していた。 人家の少ない山間を走る未舗装の山道で、ガードレールを突き破る、自動車の転落事故が報じられた。 転落事故の運転手は、行方をくらましていた大北精工の専務で、同乗していたのは糸井良子だと報じられた。二人は重篤な状態でICUに収容される大事故だった。 多くの社員が、良子の人騒がせな所業を忌避していた。良子を諫めたい思いはありながら、手を下せずにイラつくひと達に、叩きつけるような激しい氷雨が手を貸した……。 美由紀と良子の行く先には、周りの多くが納得する、真逆の結末が待っていた……。 (固有名詞等すべてフィクションです)
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文字数 44,131 最終更新日 2024.03.16 登録日 2024.03.16
ジャズ.クラブ.スキャットとウヰスキークラブ.クレインは、夕暮れと共に扉が開くウヰスキーとジャズライブを楽しむことができるナイトクラブである。 スキャットはバーボン.ウヰスキー、クレインはスコッチ.ウヰスキーがメインの品揃えで知られている。 甲田亜樹子がオーナー.ママの、ジャズ.クラブ.スキャットには、絨毯張りのフロアに膝高さくらいのテーブルとスツールが並び、フロアの片隅に小高い、板張りのステージがある。 広くはないステージの左側にはアップライトピアノと、右側にはドラムセットが置かれている。 毎夜、プロミュージシャンがステージに上がり、ジャズと洋酒を嗜む大人たちは、心地よい雰囲気の中で至福の時を過ごしていた。 ウヰスキークラブ.クレインは、大人の男性客が多いスコッチウヰスキー専門の酒場である。 オーナーの鶴間慶彦は、若い日、海外に放浪の旅に出た。行き着いたのがイングランドの小さなスコッチウヰスキー醸造所だった、そこで学んだウヰスキーの知識と経験がある。 放浪の旅から帰国して大学を中退した慶彦は、職に就き、資金を貯めてスコッチウヰスキーの楽しめるクレイン(鶴)を開いた。 若い日にジャズシンガーを目指して東京のクラブでステージに出ていた甲田亜樹子も、ギター演奏に長けた鶴間慶彦も、音楽はもとより業界にも詳しいふたりだった。 精密機械メーカーでロボットを研究している宇都宮雅人は、叔母の知人である甲田亜樹子がママのスキャットを紹介されて出入りするようになる。 クレインの鶴間慶彦は、雅人が幼い頃からの、お守り役のよう存在で、雅人にとっては兄のようでもあり、人生の色々を教えてくれる先生でもある。 甲田亜樹子と鶴間慶彦の二人に関わりのある宇都宮雅人が、スキャットとクレインに出入りするプロミュージシャンや料理人。高校時代のブラスバンド部のOGだと云う女性グループ等と出会い、交友が始まる。 スキャットで友人となったひと達は、互いに心配事を分かちあい、問題を抱えている人には手を差し延べると共に、自分自身が救われることもあった。 ナイトクラブで生まれた人と人の交流が、人知れず秘めやかに吹く夜風のように、静かに流れ、広がっていく……。この街に吹く夜風は温かく、思い遣りに満ちていた……。 ブルー.ムーンはスキャットのママ亜樹子が好きな紫の花……、〈幸せの瞬間〉と云う花言葉を持つ香り豊かなバラの花。その花言葉と香りを、夜風がそっとナイトクラブに集うひと達の元へ運んで行った……。 …… 全15話……(一話が少し長いです。平均10,000文字)(固有名詞など、全てフィクションです。)
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文字数 184,921 最終更新日 2024.03.15 登録日 2024.03.15
仕事に充実感が得られると、好ましい出逢いの機会も訪れる……。 毎朝、職場に向かうため、駅のホームに立つ牧野修也と高守那美は、並ぶ電車乗車口の場所は違うが、互いに視界に入るその存在に好感を覚えていた。 厳しい競争社会の中で日々を忙しく過ごすふたりは、夫々の職場で有能な社員として認められていた。 仕事を通して関わる多くのシーンで、人との交流が生まれ、その中で恋愛が生まれる機会も少なくはない。 誰にでも、結婚までに至る恋愛のチャンスは訪れるだろう……が、数多くはない。 初めてのチャンスから恋愛、そして結婚へとまっしぐらに突き進むカップルもあれば、互いの気持ちを気遣いながら、慎重に愛を育むカップルもいる。 相手に気掛かりなことがあっても気にしない、それが愛している証拠だ、などとは云いきれない。 気掛かりの向こう側に、看過してはならない真実があるかも知れないのだから……。 修也は偶然、帰宅する電車内で那美と同じ電車車両に乗った。途中、体調を崩してしゃがみ込む那美に手を差し伸べて助けた。それを機会にふたりは急接近し、恋愛のチャンスが生まれる。 恋愛関係に進もうとするふたりの胸の奥に、素直に踏み込めない想いがあった。 互いに伝えず、成り行きに任せることは簡単だったが、那美は、こころに秘めた思いを相手に伝えるべきかどうかと迷う……。 修也は、交際を申し込むのは、醜態を見せてしまった那美の、弱みに付け込むことになりはしないかと、次の行動を躊躇う……。 ふたりは互いの会社の仕事でも関わりが生じる。 苦慮し、躊躇するふたりに、会社の同僚や友人や先輩が耳を貸し、力を貸して見守る……。 修也の大学の大先輩で、ラウンジ.フラーゴラのオーナーシェフ川添伸一郎は、修也のよき相談相手でもあった。 川添シェフは、修也の恋愛を優しく手助けしていく。 恋におちても当然のようなふたりは、互いに素直に自らの思いに従い、思いを秘めたまま、時を待った。 修也の職場の周りには、幾組かのカップルが生まれ、それぞれが恋を実らせて結ばれていく。 嫌いではない同士の修也と那美は、失恋の辛苦を経験することなく別れ、新たな恋に向かって進むことになるが、ふたりの親交が途切れることはなかった……。  (固有名詞など全てフィクションです)……全24話……
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文字数 106,780 最終更新日 2024.03.08 登録日 2024.03.08
三十歳を過ぎた年代になり、結婚を意識するようになった芦沢丈晴は、会社の同期である時田耕作の複雑な恋愛関係に関わり、自分自身の恋愛も真剣に考えるようになる。 耕作と本間良子の社内恋愛は、複雑な様相を呈していた。 耕作との交友を通して知らされる内容は、恋愛経験の少ない丈晴を混乱させる。 本社営業本部長が率いる新組織のメンバーは、全国の優秀な主任クラスから選抜され、芦沢丈晴と時田耕作もそのメンバーに選ばれる。 新組織の営業本部窓口には、社内でも才媛と呼ばれ、華やかな恋愛経歴を持つ梅木友香が担当することに決まっていた。 丈晴の新組織加入メンバー発表と同時に、梅木友香から社内便ではなく、郵便で自筆の封書が届いた。 友香は、以前は総務部で管理者教育担当をしていた。 全社内の初級管理者から上位管理者まで、知らない者はいない。 高校、大学をアメリカで過ごした帰国子女の友香は、ピンヒールのハイヒールを履き、スーツ姿で颯爽と歩く。その姿に目を奪われる者は多い。そんな彼女からの手紙である。 入社以来、仕事一筋でやって来た丈晴は、友香からの手紙の意味を理解できずにいた。 丈晴は、行き付けのスタンドバー、ブーメランのオーナー兼マスターの竹中光雄に助言を求める。 竹中光雄は医師免許を持ち、嘗ては医薬品会社でMR(MR=medical representative=医療情報担当≒医薬品営業担当)として活躍し、のちに役員となった。 役員を早々に勇退して、第二の人生としてスタンドバー.ブーメランを開いた。 企業や会社に関することから、企業内組織や社内の人間関係、人事関係、社会人としての一般常識など、多くの分野に博識で、人生の機微を知り尽くした人物である。 丈晴は、仕事のことから恋愛事情まで、自分で迷っているときや、ヒントを得たい時などには、何時も竹中に聞いてもらっていた。 ブーメランには、マスターの友人の娘で、薬剤師の篠宮碧がアルバイトで店に来ていた。 碧は丈晴に恋心を抱いているが、丈晴には伝わらない。 丈晴に見合い話が来ていた。丈晴が「釣り書き」を見る前に、相手には好きなひとがあると分かり、話はなかったことになったと母から聞かされる。 後日、その相手が篠宮碧だったと知った丈晴は、複雑な思いで居た。 丈晴の恋愛観には、初対面の時、一瞬で感じ取る第一印象の良し悪しと、違和感の有る無しで、その後の関係の良否が決まると云う自論があった。 初恋の相手に感じた想いこそが、自分の理想の女性を意味していると……。 友香と碧、丈晴には、ふたりとも、第一印象好ましいものだったが……。 恋人選びに迷う丈晴に決心を促したのは、竹中のアドバイスと、中学生の頃、初めて心をときめかせた女性の存在だった……。全19話(全てフィクションです。)
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文字数 80,834 最終更新日 2024.03.01 登録日 2024.03.01
海外で客死した夫の訃報に精神的なダメージを受けた妻の待村久美子は、医者の勧めもあり、学生時代からの友人がやっている安曇野のペンションに療養に行く。 久美子は同じペンションに来ていた榎木紳策と出会い、同じ京都から来ていると云うことで親交を深めていく。 父を亡くした娘の待村沙紀は人生設計の変更を余儀なくされ、大学進学を諦めて銀行に勤めた。専門学校に行くための資金を得て、専門学校を卒業した沙紀はパン職人として独り立ちした。 母が安曇野に行ったあと、独り京都に残された沙紀は仕事だけに打ち込む日々を送っていた。 その日、沙紀は自分が考案したパンを試作する為、何時もより早い時刻の電車に乗って勤務先のパン工房に向かった。 建築設計士の樫原良一は、設計に新たなアイデアを思いつき、早く出社して図面に起こそうと、始発二本目の地下鉄に乗って京都駅に向かう。 地下鉄京都駅のホームで、沙紀は重い二つの大きなバッグを持って改札に向かっていた。 突然、後ろから来た若い男性が有無を言わせずバッグを一つ手に取り、👍手助けをしてくれた。それが良一だった。 久美子と沙紀は、同じ頃にそれぞれが恋に落ちた。ふたりは、榎木紳策と樫原良一を通して多くの心優しいひと達との交友関係ができる。 沙紀の幸せを願う久美子は、自分の恋路を突き進むことが、沙紀の幸せに繋がると思いながら、沙紀に告げるのを迷い、逡巡していた。 ふたりの夫々の交友の輪が、意外な接点で連鎖のように繋がる。その連鎖の中で、思い掛けない幾組かの恋が生まれた。 それぞれの恋愛の中で生じる心配事は、友人たちの心遣いが解決してくれた。 久美子と沙紀の周りには、他人のことを優先して思いやる、優しい心のひと達ばかりだった。全40章 (全てフィクション)
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文字数 92,098 最終更新日 2024.02.22 登録日 2024.02.22
山陰の雪の季節が終わりを告げようとしていた頃、交通事故から幼子を助けようとした父が亡くなり、数年後、同じ様に淡雪が舞う頃、母が亡くなった。 京都の大学に通っていた椎谷遼一が、恋人の中林秋乃が職場の同僚男性と結婚すると云う、背信の報せを聞かされたのは、母の葬儀の暫く後のことだった。 椎谷遼一と中林秋乃は高校生の頃に将来を誓い合っていた。両家の家族も、周りの誰もが認める似合いのふたりだった。 職場の男性と結婚した秋乃も、社会人になってから結婚した遼一も、共に離婚を経験する。 秋乃は離婚後、直ぐに故郷を離れた。東京に出て専門学校を卒業すると、ビジネス支援会社に就職した。転勤で大阪に勤務していた時、会社が他企業に吸収され退社を余儀なくされる。 大阪の伯母の処に身を寄せていた秋乃は、故郷に帰るか再就職するか迷っていたが、帰郷を決めて京都と故郷を直結するローカル特急に乗った。 プロジェクトチームのチーフとして故郷の県内にある製紙会社に出張を命ぜられた遼一は、特急のグリーン車内で高校時代と変わらない笑顔の秋乃と遭遇する。 ふとした事から一緒になる機会を逸し、離婚を経験したふたりが過ごした十数年の歳月は、嘗ては愛し合い、結婚を誓いながらも破綻した辛く寂しい歳月でもあった。 歳月を経たふたりの恋する想いの移ろいは~。 春先に舞う雪は、儚く消える淡雪なのか、それとも春の到来を告げる淡雪なのだろうか~。(固有名詞など、全てフィクションです。)
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文字数 57,363 最終更新日 2024.02.16 登録日 2024.02.11
山間の分校が廃校になり、山の村に住む六人のこども達は、山裾の本校に通っていた。 冬になり、大雪や雪崩の心配が予測されると、学校では早く授業を切り上げ、山間の雪道を通って帰るこども達を早退させる決まりになっていた。 初めて早退の決まった日のことだった。連絡もなく、真っ白な雪景色の中に真っ黒な青毛の馬に繋がれた馬橇(そり)が、校門の前に待機していた。 馬橇に腰かけて手綱を手にしていたのは、こども達の村の長老、源爺だった。 源爺と愛馬のクロ、雪の川原で助けたノウサギと六人のこども達との交流・・・。 源爺が病に倒れると、入れ代わるように、峠の向こうに住むという優しいおんなのひとが現れ、こども達を村に送り届ける役を引き受けた。 町の病院に源爺を見舞いに行ったこども達は、源爺がベッドの上で呟いた話を素直に聴いていた。村に戻ったこども達は、まっすぐ源爺の家の草っ原に向かった・・・。 1950年代、雪の多い山間を舞台に、老人と愛馬とこども達の心優しい交流の物語・・・。
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小説 183,929 位 / 183,929件 児童書・童話 3,208 位 / 3,208件
文字数 6,729 最終更新日 2024.02.03 登録日 2024.02.03
仲の良い男子ふたりが親友となることはある。男子と女子の場合は仲が良くても、あまり親友とは呼ばれない。もし続けば恋人関係になる場合はある。 北条克彦と三枝孝之助は、他にも三人の幼馴染の女子と親交があり、三十半ばになった今でも交遊は続いていた。 克彦は望んでいた仕事に就き、若くして管理職に就いた。仕事に没頭し充実感を得ている克彦にとって恋愛は関心外のことであり、部下の成長とチームの評価を高めることに専心する日々を送っていた。 松下玲子は箏の先生をしていた克彦の母の親友の娘である。中学進学時から、箏の弟子として北条家に出入りする。 克彦と玲子の親交はその頃から続いて二十年になろうとしているが、その間、克彦が玲子を恋人だと思ったことは一度も無かった。 婚約した親友の孝之助は、恋愛に疎い克彦を案じて、身近な女性との過去の交友を思い返してみるようにと助言する。 過ぎた日々に思いを馳せ、客観的にフォトアルバムを見てみよう試みた克彦は、男女ふたりだけが写る写真に魅入られる。写真のふたりは、ただの仲良しカップルには見えなかった……。 《フィクションです。》
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小説 183,929 位 / 183,929件 現代文学 7,812 位 / 7,812件
文字数 69,144 最終更新日 2024.01.26 登録日 2024.01.26
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