トパースのバレッタ

仕事に充実感が得られると、好ましい出逢いの機会も訪れる……。
毎朝、職場に向かうため、駅のホームに立つ牧野修也と高守那美は、並ぶ電車乗車口の場所は違うが、互いに視界に入るその存在に好感を覚えていた。
厳しい競争社会の中で日々を忙しく過ごすふたりは、夫々の職場で有能な社員として認められていた。
仕事を通して関わる多くのシーンで、人との交流が生まれ、その中で恋愛が生まれる機会も少なくはない。

誰にでも、結婚までに至る恋愛のチャンスは訪れるだろう……が、数多くはない。
初めてのチャンスから恋愛、そして結婚へとまっしぐらに突き進むカップルもあれば、互いの気持ちを気遣いながら、慎重に愛を育むカップルもいる。
相手に気掛かりなことがあっても気にしない、それが愛している証拠だ、などとは云いきれない。
気掛かりの向こう側に、看過してはならない真実があるかも知れないのだから……。

修也は偶然、帰宅する電車内で那美と同じ電車車両に乗った。途中、体調を崩してしゃがみ込む那美に手を差し伸べて助けた。それを機会にふたりは急接近し、恋愛のチャンスが生まれる。
恋愛関係に進もうとするふたりの胸の奥に、素直に踏み込めない想いがあった。
互いに伝えず、成り行きに任せることは簡単だったが、那美は、こころに秘めた思いを相手に伝えるべきかどうかと迷う……。
修也は、交際を申し込むのは、醜態を見せてしまった那美の、弱みに付け込むことになりはしないかと、次の行動を躊躇う……。
ふたりは互いの会社の仕事でも関わりが生じる。
苦慮し、躊躇するふたりに、会社の同僚や友人や先輩が耳を貸し、力を貸して見守る……。
修也の大学の大先輩で、ラウンジ.フラーゴラのオーナーシェフ川添伸一郎は、修也のよき相談相手でもあった。
川添シェフは、修也の恋愛を優しく手助けしていく。
恋におちても当然のようなふたりは、互いに素直に自らの思いに従い、思いを秘めたまま、時を待った。
修也の職場の周りには、幾組かのカップルが生まれ、それぞれが恋を実らせて結ばれていく。
嫌いではない同士の修也と那美は、失恋の辛苦を経験することなく別れ、新たな恋に向かって進むことになるが、ふたりの親交が途切れることはなかった……。
 (固有名詞など全てフィクションです)……全24話……

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