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役者が揃う2
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『承知いたしました……。』
『では頼んだぞ。この屋敷にいたという証拠も残らぬように、な。』
『は。』
スネイクが去り、受託者は檻の中に入る。
『風化。』
金髪の男を拘束していた鉄の枷を風化させ、彼は男を見下ろした。
おそらく、下級貴族で。
曲がりなりにも騎士として働いていたであろう。
どれだけ拘束されていたのか、騎士にしては筋肉量が少ないように見える。
目だって傷つけられてはいないが、薬物を投与され、拘束され続けた体では自分で身を起こすことはすぐには難しいかもしれない。
『………だ、…れ。そか、赤ちゃんが…できたから。用済みなんだね…。』
かすれた声は哀れを誘う。
『どんな子なんだろう……。』
ぼーっとしたような表情の抜け落ちたような顔で、つぶやく彼は、間違いなく、今そこにいるグリーン。
映像をいったん止める。
【全く下種だな。】
各国の国王がざわついている。
「陪審員の皆様、静粛に!まだまだ証人の発言が続きますゆえ。こちら、ひっとらえた賊になりますが、自白の魔法がかけられております。洗脳などの類ではなく、ただの自白です。これは、私たち公平な立場にある事務官が複数で審査しました。ゆえに、彼らの証言は真実です。」
【進めたまえ。】
その時、原告席にようやくポラリスとジャン、スターライト公爵とアローが到着した。
(ひっ…!あいつらが生きていたからもしやと思ったが…。公爵とアローまで!?一体どうやってあれから生きながらえたというのだ!?)
「あなた方の雇い主はスネイク伯爵ですか?」
「……はっ、はい!!」
「伯爵の依頼でこれまでどんなことをしてきたんですか?」
「あ、あう。依頼されてやってきたことはたくさんありますがっ、わっ、私はアレクサンドラ様の侍女に混ざり、毒を…っ。それから、最近はジュエリー王国に潜り込んでポラリス様やそこにいる二人の命を相方と一緒に狙いましたっ!」
「お、おれは、アポロ陛下の馬車を壊したり、最後は矢でアポロ陛下と正妃を殺しました!ジュエリー王国でも邪魔なポラリス様たちを……兵士に紛れて…!!俺が捕まった後は、たぶん俺の部下がずっと二人を狙ってたと思いますっ!」
「依頼されてきたことはたくさん…って。王族を狙う以外にもやっていたの?」
「そこの金髪の男の実家の一族を皆殺しにしたわ!」
「そっ、そこのっ、ジョーが後任になるまではっ、平民や貧民、スラムの子をさらって他国に奴隷として売っていました!」
「人身売買はスネイク伯爵家の商売だったんですか?」
「「はい!!!」」
くそっ、くそっ…!!
「茶番だ!そんなやつら、私は知らん!!!!」
「お前が俺に指示したことや依頼したこと。そのすべてのシーンは先ほどみたいに記録して証拠として提出しているぞ?」
原告席からジョニーが睨む。
「ハッ!お前だって、片棒を担いだんだろうが!自分だけ綺麗なつもりでいるなよ!」
がたっ、と伯爵が立ち上がる。
「お父様!?」
張りぼての女王は、おろおろとするばかり。
「もうおしまい!!!おしまいだ!スネイク伯爵は終わりだ!!!!!!ケケケケケケッ!!」
公爵とアローが前をふさぎ、ジャンはポラリスを抱き寄せる。
陛下は、冷たい視線を彼らに投げかけた。
「これが、国際裁判だ。言い逃れも出来ず、罰から逃げることも出来ぬ。もはや、他国へ逃げようもない。みんな、悪事を知っているのだから。だから、我々はこの準備をしていたのだ。」
「皆の者、あいつらを、あいつらをやってしまえ!!!!!」
甲高い金切り声をあげて、伯爵が叫ぶ。
ざっとジュエリー王国の護衛騎士が前に出る。
「ジョニー殿下をお前らと一緒にするな!!」
「俺たちは、お前が商品にした人間だ!殿下は、お前の言うことを聞くふりをして、こちらの国へ召し上げてくれたのだ!!!!」
騎士たちにとっても、伯爵は憎い相手だ。
「ひぃぃいいいいい!!!」
「皆さま、判決が出たようですね。」
事務官はにっこり笑って、閉廷となった。
世界中に、裁判の映像は流れた。
エルグランド王国にももちろん流れた。
ジュエリー王国やポラリス側は、卑怯な相手に対し、決して同じ土俵に立つことなく、アポロ陛下とアレクサンドラ妃の仇を討ったのだ。
エルグランド王国の伯爵寄りだった者、女王派だった者は、全て処罰され、地位も名誉も何もかも失うことになった。
スネイク伯爵家は取り潰し。女王も地位を失い、親子は石を投げられるような存在になった。
どこにも逃げ場はない。
ジュエリー王国で育ち、職を得ていた、被害者の元子どもたちは、親を探し、再会して自分の下へ呼び寄せた。
物語は、これで終わらない。
新しい王は誰がするのか。
国の立て直し。
今になって兄弟となった二人は、互いに距離感があり、それぞれの恋も三角…いや四角の様相となっていた。
『では頼んだぞ。この屋敷にいたという証拠も残らぬように、な。』
『は。』
スネイクが去り、受託者は檻の中に入る。
『風化。』
金髪の男を拘束していた鉄の枷を風化させ、彼は男を見下ろした。
おそらく、下級貴族で。
曲がりなりにも騎士として働いていたであろう。
どれだけ拘束されていたのか、騎士にしては筋肉量が少ないように見える。
目だって傷つけられてはいないが、薬物を投与され、拘束され続けた体では自分で身を起こすことはすぐには難しいかもしれない。
『………だ、…れ。そか、赤ちゃんが…できたから。用済みなんだね…。』
かすれた声は哀れを誘う。
『どんな子なんだろう……。』
ぼーっとしたような表情の抜け落ちたような顔で、つぶやく彼は、間違いなく、今そこにいるグリーン。
映像をいったん止める。
【全く下種だな。】
各国の国王がざわついている。
「陪審員の皆様、静粛に!まだまだ証人の発言が続きますゆえ。こちら、ひっとらえた賊になりますが、自白の魔法がかけられております。洗脳などの類ではなく、ただの自白です。これは、私たち公平な立場にある事務官が複数で審査しました。ゆえに、彼らの証言は真実です。」
【進めたまえ。】
その時、原告席にようやくポラリスとジャン、スターライト公爵とアローが到着した。
(ひっ…!あいつらが生きていたからもしやと思ったが…。公爵とアローまで!?一体どうやってあれから生きながらえたというのだ!?)
「あなた方の雇い主はスネイク伯爵ですか?」
「……はっ、はい!!」
「伯爵の依頼でこれまでどんなことをしてきたんですか?」
「あ、あう。依頼されてやってきたことはたくさんありますがっ、わっ、私はアレクサンドラ様の侍女に混ざり、毒を…っ。それから、最近はジュエリー王国に潜り込んでポラリス様やそこにいる二人の命を相方と一緒に狙いましたっ!」
「お、おれは、アポロ陛下の馬車を壊したり、最後は矢でアポロ陛下と正妃を殺しました!ジュエリー王国でも邪魔なポラリス様たちを……兵士に紛れて…!!俺が捕まった後は、たぶん俺の部下がずっと二人を狙ってたと思いますっ!」
「依頼されてきたことはたくさん…って。王族を狙う以外にもやっていたの?」
「そこの金髪の男の実家の一族を皆殺しにしたわ!」
「そっ、そこのっ、ジョーが後任になるまではっ、平民や貧民、スラムの子をさらって他国に奴隷として売っていました!」
「人身売買はスネイク伯爵家の商売だったんですか?」
「「はい!!!」」
くそっ、くそっ…!!
「茶番だ!そんなやつら、私は知らん!!!!」
「お前が俺に指示したことや依頼したこと。そのすべてのシーンは先ほどみたいに記録して証拠として提出しているぞ?」
原告席からジョニーが睨む。
「ハッ!お前だって、片棒を担いだんだろうが!自分だけ綺麗なつもりでいるなよ!」
がたっ、と伯爵が立ち上がる。
「お父様!?」
張りぼての女王は、おろおろとするばかり。
「もうおしまい!!!おしまいだ!スネイク伯爵は終わりだ!!!!!!ケケケケケケッ!!」
公爵とアローが前をふさぎ、ジャンはポラリスを抱き寄せる。
陛下は、冷たい視線を彼らに投げかけた。
「これが、国際裁判だ。言い逃れも出来ず、罰から逃げることも出来ぬ。もはや、他国へ逃げようもない。みんな、悪事を知っているのだから。だから、我々はこの準備をしていたのだ。」
「皆の者、あいつらを、あいつらをやってしまえ!!!!!」
甲高い金切り声をあげて、伯爵が叫ぶ。
ざっとジュエリー王国の護衛騎士が前に出る。
「ジョニー殿下をお前らと一緒にするな!!」
「俺たちは、お前が商品にした人間だ!殿下は、お前の言うことを聞くふりをして、こちらの国へ召し上げてくれたのだ!!!!」
騎士たちにとっても、伯爵は憎い相手だ。
「ひぃぃいいいいい!!!」
「皆さま、判決が出たようですね。」
事務官はにっこり笑って、閉廷となった。
世界中に、裁判の映像は流れた。
エルグランド王国にももちろん流れた。
ジュエリー王国やポラリス側は、卑怯な相手に対し、決して同じ土俵に立つことなく、アポロ陛下とアレクサンドラ妃の仇を討ったのだ。
エルグランド王国の伯爵寄りだった者、女王派だった者は、全て処罰され、地位も名誉も何もかも失うことになった。
スネイク伯爵家は取り潰し。女王も地位を失い、親子は石を投げられるような存在になった。
どこにも逃げ場はない。
ジュエリー王国で育ち、職を得ていた、被害者の元子どもたちは、親を探し、再会して自分の下へ呼び寄せた。
物語は、これで終わらない。
新しい王は誰がするのか。
国の立て直し。
今になって兄弟となった二人は、互いに距離感があり、それぞれの恋も三角…いや四角の様相となっていた。
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