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吐血
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「……かはっ。」
布で口を押えてせき込むと、真っ白なそれは赤く滲んだ。
―――――――――――あと3か月。もってくれよ。
闇夜の中で最強の陛下は亡き聖女を想いながら、胸を押さえた。
何の因果か、自分だけが人生を何度もやり直した。
時間を巻き戻す代償は『寿命』。
もう自分の命は尽きる。
だから、今回が最後だった。
オデットは救えなかったが、今の時点では、これまでの中で最善といえる。
息子はずいぶん個性的な性格になってしまったが、今世の勇者と出会った。
息子が母であるオデットの聖なる力を継いだ。
隣国との関係も良好。
気になることは全て勇者に伝えることができた。
あとは、あの二人に。
アーサーに爵位を継ぐまで。それまでは生きたい。
陛下は瞳を閉じた。
その同じ月の下では、陛下によく似た風貌の男が月を見る。
弟に王位を奪われた兄王子は、公爵位を賜り、平穏に過ごしている。
武闘派の弟とは違い、どちらかといえば頭脳派だった彼は線が細く、ゆえにどことなく中性的だ。
砂時計を手に、彼は遠くを見る。
彼には子はいない。
「アキレスの命の灯が……こんなに弱弱しく…。」
そのつぶやきには、どんな思いがあるのか。
布で口を押えてせき込むと、真っ白なそれは赤く滲んだ。
―――――――――――あと3か月。もってくれよ。
闇夜の中で最強の陛下は亡き聖女を想いながら、胸を押さえた。
何の因果か、自分だけが人生を何度もやり直した。
時間を巻き戻す代償は『寿命』。
もう自分の命は尽きる。
だから、今回が最後だった。
オデットは救えなかったが、今の時点では、これまでの中で最善といえる。
息子はずいぶん個性的な性格になってしまったが、今世の勇者と出会った。
息子が母であるオデットの聖なる力を継いだ。
隣国との関係も良好。
気になることは全て勇者に伝えることができた。
あとは、あの二人に。
アーサーに爵位を継ぐまで。それまでは生きたい。
陛下は瞳を閉じた。
その同じ月の下では、陛下によく似た風貌の男が月を見る。
弟に王位を奪われた兄王子は、公爵位を賜り、平穏に過ごしている。
武闘派の弟とは違い、どちらかといえば頭脳派だった彼は線が細く、ゆえにどことなく中性的だ。
砂時計を手に、彼は遠くを見る。
彼には子はいない。
「アキレスの命の灯が……こんなに弱弱しく…。」
そのつぶやきには、どんな思いがあるのか。
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