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俺は別に運命の番を全否定しているわけじゃないよ?
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男性だけど、オメガなのだろう。
艶やかな黒髪にはパールの粉が散って、大きな黒い瞳と桃色の唇が真っ白な絹のような肌に映える。
黒いスーツは白い肌をよく引きたて、純白のドレスシャツはふわりと華やかさを。
そして、胸元と襟元にはケニーの色の琥珀が輝き。
見たこともない、美しい華。
ローゼ王太子妃が凛と咲く大輪の薔薇なら、彼は月夜に映える蘭の花。
くやしい!
どこの阿婆擦れよ!
正体を暴いてやるわっ!
「キャサリン。王家のガーデンパーティーだぞ。慎みをもたないか。」
ケニーは『親族』として忠告する。
もう20歳。
ご友人……といっても本当の友人だったのかは分からないが……の令嬢はとうに結婚し、子どもがいる者だっているというのに、相変わらずティーンエージャーのようなツインテールにフリフリのピンクのドレス。
伯爵は何も言わないのだろうか。
………いや、聞かないのだろうな。妹君たちはマトモなのだから。
どうして彼女だけ頭のネジがすっぽ抜けているのだろう。
恋は人を愚かにするというが、俺が悪いのか?
彼女を選ばなかったから?
いやぁ、でも。彼女を救うために自分を犠牲にしてあれと結婚するのはさすがに出来ない。
だいたい何故俺なんだ………。
ぎりぎり睨みつけて。俺の最愛のスミスに。
「なによ!このっ!泥棒猫!」
「気にするな、分かっただろう?あいつに今まで何を言われてきたが知らんが、あいつが頭おかしいんだ。アイツの言うことなんて嘘だからな。一緒にいたオメガ仲間だって子爵家と男爵家だ。あいつに合わせてただけなんだからさ。」
「うん。分かった。僕、もう逃げないから。」
「なによ!!!あなたなんて社交界で見たことなんてないっ!どこの馬の骨!?」
パーティを台無しにするような金切り声が響く。
僕はすーっと息を吸って、吐いた。
視界の先では、妃殿下がアーサー……王太子殿下と一緒に微笑んで、ウインクしていた。
うん。
僕頑張る。
黒い髪はさらさらになって、顔はどうなっているか分からないけど、侍女さんたちが綺麗にしてくれた。
黒のスーツに白のドレスシャツ。それはすごくしっとりと素肌に馴染んで。
それに、ケニーが選んでくれた、ケニーの色の琥珀のブローチとピアスが僕を包む。
勇気をくれる。
「キャサリン=ブラウス伯爵令嬢。私はスミス=スワン。以前はよくしていただいたでしょう?僕は友人だと思っていたのですが、ちがったようですね。」
「スミス!!!? あのっ、地味眼鏡のスミスなのっ!??」
「ブラウス伯爵令嬢。オメガの上位貴族の子息令嬢同士、交流していた幼い頃はありましたが……。僕は次男ですがこの国の筆頭公爵家の令息です。しかも、今日は伯爵令嬢として出席しているとはいえ、貴方は僕の家に行儀見習いで来ている、母の侍女ですよね?」
「………ぐっ。」
(あれがブラウス伯爵家のお荷物令嬢か。)
(不敬にもほどがある。本当に淑女か?伯爵夫妻はさぞかし頭が痛いだろう。)
(妹2人のためにもあれはどうにかしたほうがいいぞ。)
(まぁ………だろうな。)
「………しつ、失礼しました…っ。あまりにお代わりになられているので驚いて……。」
「僕としては本当は君をご家族ごと別室にご案内してお話をするつもりだったのに、これじゃあもうここで言うしかない。僕は、ケニー=ブライアン辺境伯令息と婚約しました。」
キャサリンの顔色が変わり、下げていた顔をあげる。
「君はケニーが好きだったかもしれないけど、君はただの幼馴染で、僕が彼に望まれた。だから泥棒猫というのは当たらない。謝罪してほしい。」
「嘘よっ!だって私…っ。『運命の番』だからってフェロモンで惑わせたんだわ、そうでしょ!私、知ってたわ。貴方がケニーの『運命の番』だって!だから、邪魔をしてたのに…っ。」
泣いて化粧が崩れて、涙が黒くなっている女に向かって、王太子妃殿下が歩いてくる。
女王のフェロモンを纏って。
「王太子妃殿下さまっ!王太子妃殿下様もお思いでしょう!?運命の番なんてまやかしですっ!私が一番、ケニーを想っているのに!!!」
パチン。
王太子妃殿下の扇子が閉じる。
「何を勘違いしているのか分からないけど……。俺は別に運命の番を全否定しているわけじゃないよ?」
艶やかな黒髪にはパールの粉が散って、大きな黒い瞳と桃色の唇が真っ白な絹のような肌に映える。
黒いスーツは白い肌をよく引きたて、純白のドレスシャツはふわりと華やかさを。
そして、胸元と襟元にはケニーの色の琥珀が輝き。
見たこともない、美しい華。
ローゼ王太子妃が凛と咲く大輪の薔薇なら、彼は月夜に映える蘭の花。
くやしい!
どこの阿婆擦れよ!
正体を暴いてやるわっ!
「キャサリン。王家のガーデンパーティーだぞ。慎みをもたないか。」
ケニーは『親族』として忠告する。
もう20歳。
ご友人……といっても本当の友人だったのかは分からないが……の令嬢はとうに結婚し、子どもがいる者だっているというのに、相変わらずティーンエージャーのようなツインテールにフリフリのピンクのドレス。
伯爵は何も言わないのだろうか。
………いや、聞かないのだろうな。妹君たちはマトモなのだから。
どうして彼女だけ頭のネジがすっぽ抜けているのだろう。
恋は人を愚かにするというが、俺が悪いのか?
彼女を選ばなかったから?
いやぁ、でも。彼女を救うために自分を犠牲にしてあれと結婚するのはさすがに出来ない。
だいたい何故俺なんだ………。
ぎりぎり睨みつけて。俺の最愛のスミスに。
「なによ!このっ!泥棒猫!」
「気にするな、分かっただろう?あいつに今まで何を言われてきたが知らんが、あいつが頭おかしいんだ。アイツの言うことなんて嘘だからな。一緒にいたオメガ仲間だって子爵家と男爵家だ。あいつに合わせてただけなんだからさ。」
「うん。分かった。僕、もう逃げないから。」
「なによ!!!あなたなんて社交界で見たことなんてないっ!どこの馬の骨!?」
パーティを台無しにするような金切り声が響く。
僕はすーっと息を吸って、吐いた。
視界の先では、妃殿下がアーサー……王太子殿下と一緒に微笑んで、ウインクしていた。
うん。
僕頑張る。
黒い髪はさらさらになって、顔はどうなっているか分からないけど、侍女さんたちが綺麗にしてくれた。
黒のスーツに白のドレスシャツ。それはすごくしっとりと素肌に馴染んで。
それに、ケニーが選んでくれた、ケニーの色の琥珀のブローチとピアスが僕を包む。
勇気をくれる。
「キャサリン=ブラウス伯爵令嬢。私はスミス=スワン。以前はよくしていただいたでしょう?僕は友人だと思っていたのですが、ちがったようですね。」
「スミス!!!? あのっ、地味眼鏡のスミスなのっ!??」
「ブラウス伯爵令嬢。オメガの上位貴族の子息令嬢同士、交流していた幼い頃はありましたが……。僕は次男ですがこの国の筆頭公爵家の令息です。しかも、今日は伯爵令嬢として出席しているとはいえ、貴方は僕の家に行儀見習いで来ている、母の侍女ですよね?」
「………ぐっ。」
(あれがブラウス伯爵家のお荷物令嬢か。)
(不敬にもほどがある。本当に淑女か?伯爵夫妻はさぞかし頭が痛いだろう。)
(妹2人のためにもあれはどうにかしたほうがいいぞ。)
(まぁ………だろうな。)
「………しつ、失礼しました…っ。あまりにお代わりになられているので驚いて……。」
「僕としては本当は君をご家族ごと別室にご案内してお話をするつもりだったのに、これじゃあもうここで言うしかない。僕は、ケニー=ブライアン辺境伯令息と婚約しました。」
キャサリンの顔色が変わり、下げていた顔をあげる。
「君はケニーが好きだったかもしれないけど、君はただの幼馴染で、僕が彼に望まれた。だから泥棒猫というのは当たらない。謝罪してほしい。」
「嘘よっ!だって私…っ。『運命の番』だからってフェロモンで惑わせたんだわ、そうでしょ!私、知ってたわ。貴方がケニーの『運命の番』だって!だから、邪魔をしてたのに…っ。」
泣いて化粧が崩れて、涙が黒くなっている女に向かって、王太子妃殿下が歩いてくる。
女王のフェロモンを纏って。
「王太子妃殿下さまっ!王太子妃殿下様もお思いでしょう!?運命の番なんてまやかしですっ!私が一番、ケニーを想っているのに!!!」
パチン。
王太子妃殿下の扇子が閉じる。
「何を勘違いしているのか分からないけど……。俺は別に運命の番を全否定しているわけじゃないよ?」
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