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happy ending after short story
オマケss 【6】ワンコノギャクシュウ
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「え~と・・・?」
時刻は既に夜半過ぎ。
リリーはお色直しのドレスすら脱いでいないまま、シェーズロングタイプのソファーに寝転んだ状態で、今日いや、昨日夫になりたての幼馴染の端正な顔を見上げていた。
「んー、何かなリリー?」
目が弓型になり唇も弧を描き微笑んでいる筈なのだが、なんかコワイ・・・
×××
店の裏手にある駐車場に車を置いて玄関に立つと、ドアは内側に待機中だった護衛が『お帰りなさいませ』と、声を掛けながら開けてくれ、二人がドアを潜るのを確認した後彼はそのまま外へ出て行った。
ここまでは通常運転。
次ににっこり笑うアルフィーが、リリーの腰をガッチリ捕まえ『ヨイショ』と掛け声をかけると彼女を肩にヒョイっと担いで、階段を難無く駆け上がり入口のドアを長い足で蹴り開けた。
「え・・・?」
次にそのまま廊下を歩いて行き夫婦の寝室のドアをまたもや足で蹴り開け、入口の正面にデデンと置かれたソファーの前まで進むと、肩に担いでいたリリーをゴブラン織りのソファーの座面の上に無言で『ポスン』と置いたあと一気に押し倒したのである・・・
疑問を口にする間もなく、まるで狩られた獲物?! もしくは、まるで丸太? の様にここまで運ばれて来たのだから、『一体何事?!』と一瞬頭が真っ白になり、現在リリーはプチパニック中だ。
×××
おずおずと視線を彼の顔に向けた後、何を言えばいいのか分からないリリーは引き攣りそうな顔の筋肉を叱咤激励して微笑むと、
「えと、どういう状況なのかな・・・と、ね」
目の前で秀麗と言っても過言じゃない様な笑顔を寄越すアルフィーが
「んとね状況としては。今からリリーは俺に食べられるって感じ?」
無意識なのだろうか、アルフィーの薄い形のいい唇をペロッと舌で舐める仕草がやたらと色っぽく見え、答えの意味がリリーの脳に伝わったと同時に
『ボボボッ』
と。
効果音が聞こえてきそうな位一瞬で赤面するリリー。
「あのね、俺は10年、い~や、最初のプロポーズから考えたら14年だ。ずーっと『マテ』をしておりこうで待ってたワンコみたいなもんなの。分かる?」
「え、えとぉ?」
「もうこれ以上『マテ』なんか出来ない訳よ?」
「は、はいぃ」
「そうじゃなくても明日から新婚旅行なのね?」
「う、うん。そう、だねぇ・・・」
「ソレなのに何で新婚旅行に色んな人が付いてくるの?」
×××
披露宴会場で、カクテルを飲んだリリーは酔って気が大きくなったらしく明日からの旅行の日程をペラペラ喋ってしまったのだが、その中にどうやら『リリー様を愛でる会』だの『リリー様を応援する会』だの『リリーお姉様を語る会』などという怪しいファンクラブに席を置く女性達がいたのである・・・
「明日から列車で伯爵領の海辺にあるホテルに行って一週間ほど滞在する」
「その後は辺境伯の別荘に招かれているので狩猟を愉しむ」
「×××伯爵領にある有名な湖を見に行く」
社交が苦では無くなったリリーは打ち解けた友人知人が増えた。
元々引っ込み思案だった為についついその場で仲良くしたいという意識が働いたのだろうが、1ヶ月程掛けて周る国内外の旅行する日定を友人にぜ~んぶ喋ってしまったのだ。
「素敵ですわね」
「楽しんで来てくださいませ!」
という友人だけなら問題ないのだが
「ああ、その頃でしたら×××でお会いできますわね」
「そのホテルでしたら今からでも予約できますわね、ぜひご一緒させて下さいませ」
という不穏なセリフもチラホラ聞こえ、しまいには
「あら、そう言えば私も最近辺境伯領に顔だしてないわね。行ってみようかしら」
と。公爵夫人がいい始め・・・
「海か、しばらく行ってないよな」
と、アレクシスがいい始め・・・
「狩猟か。楽しそうだな」
と公爵がいい始め、終いには陛下が
「×××伯爵領にある有名な湖は妃と一緒に行ったな。もう一回行くか・・・」
などと言い出したのである。
×××
「えと、あのぅ」
「だからね、予定をチョ~ットだけ変えようかなって思ってね・・・」
に~っこり笑う幼馴染が怖い。
「え? どういう事?」
「うん。手加減ナシで行くからね」
「は?」
そう言って、彼は彼女の口を自分の唇で塞いだのであった・・・
×××
「あらあ、この列車で行くんじゃなかったかしらね?」
二人の見送りの為にやって来た駅のホームで公爵夫人が呟いているが隣に並ぶアレクシスが
「間違えたかな?」
と首を撚る。
「まあ、予定を変えたんじゃないかな」
公爵がそう言って笑う。
「あのまま放っとくとあの子達の新婚旅行が台無しになりますものねぇ」
オホホホと高らかに笑うオフィーリア。
「では、帰りましょうか」
汽笛が鳴り、動き始める汽車から
『いませんわッ』『全部の車両を見ましたの?』『勿論ですわッ』『公爵夫妻様が見送りに来てるんですのよッ絶対にいらっしゃるはずよッ』
という声が聞こえたとか聞こえなかったとか・・・
因みにアルモンド伯爵夫妻が旅行に出発したのはその一週間後になったとか。
理由? 奥様が寝室の住人になっていたらしく、その間は旦那さまが甲斐甲斐しく愛しい奥様の世話をしていたそうである。
時刻は既に夜半過ぎ。
リリーはお色直しのドレスすら脱いでいないまま、シェーズロングタイプのソファーに寝転んだ状態で、今日いや、昨日夫になりたての幼馴染の端正な顔を見上げていた。
「んー、何かなリリー?」
目が弓型になり唇も弧を描き微笑んでいる筈なのだが、なんかコワイ・・・
×××
店の裏手にある駐車場に車を置いて玄関に立つと、ドアは内側に待機中だった護衛が『お帰りなさいませ』と、声を掛けながら開けてくれ、二人がドアを潜るのを確認した後彼はそのまま外へ出て行った。
ここまでは通常運転。
次ににっこり笑うアルフィーが、リリーの腰をガッチリ捕まえ『ヨイショ』と掛け声をかけると彼女を肩にヒョイっと担いで、階段を難無く駆け上がり入口のドアを長い足で蹴り開けた。
「え・・・?」
次にそのまま廊下を歩いて行き夫婦の寝室のドアをまたもや足で蹴り開け、入口の正面にデデンと置かれたソファーの前まで進むと、肩に担いでいたリリーをゴブラン織りのソファーの座面の上に無言で『ポスン』と置いたあと一気に押し倒したのである・・・
疑問を口にする間もなく、まるで狩られた獲物?! もしくは、まるで丸太? の様にここまで運ばれて来たのだから、『一体何事?!』と一瞬頭が真っ白になり、現在リリーはプチパニック中だ。
×××
おずおずと視線を彼の顔に向けた後、何を言えばいいのか分からないリリーは引き攣りそうな顔の筋肉を叱咤激励して微笑むと、
「えと、どういう状況なのかな・・・と、ね」
目の前で秀麗と言っても過言じゃない様な笑顔を寄越すアルフィーが
「んとね状況としては。今からリリーは俺に食べられるって感じ?」
無意識なのだろうか、アルフィーの薄い形のいい唇をペロッと舌で舐める仕草がやたらと色っぽく見え、答えの意味がリリーの脳に伝わったと同時に
『ボボボッ』
と。
効果音が聞こえてきそうな位一瞬で赤面するリリー。
「あのね、俺は10年、い~や、最初のプロポーズから考えたら14年だ。ずーっと『マテ』をしておりこうで待ってたワンコみたいなもんなの。分かる?」
「え、えとぉ?」
「もうこれ以上『マテ』なんか出来ない訳よ?」
「は、はいぃ」
「そうじゃなくても明日から新婚旅行なのね?」
「う、うん。そう、だねぇ・・・」
「ソレなのに何で新婚旅行に色んな人が付いてくるの?」
×××
披露宴会場で、カクテルを飲んだリリーは酔って気が大きくなったらしく明日からの旅行の日程をペラペラ喋ってしまったのだが、その中にどうやら『リリー様を愛でる会』だの『リリー様を応援する会』だの『リリーお姉様を語る会』などという怪しいファンクラブに席を置く女性達がいたのである・・・
「明日から列車で伯爵領の海辺にあるホテルに行って一週間ほど滞在する」
「その後は辺境伯の別荘に招かれているので狩猟を愉しむ」
「×××伯爵領にある有名な湖を見に行く」
社交が苦では無くなったリリーは打ち解けた友人知人が増えた。
元々引っ込み思案だった為についついその場で仲良くしたいという意識が働いたのだろうが、1ヶ月程掛けて周る国内外の旅行する日定を友人にぜ~んぶ喋ってしまったのだ。
「素敵ですわね」
「楽しんで来てくださいませ!」
という友人だけなら問題ないのだが
「ああ、その頃でしたら×××でお会いできますわね」
「そのホテルでしたら今からでも予約できますわね、ぜひご一緒させて下さいませ」
という不穏なセリフもチラホラ聞こえ、しまいには
「あら、そう言えば私も最近辺境伯領に顔だしてないわね。行ってみようかしら」
と。公爵夫人がいい始め・・・
「海か、しばらく行ってないよな」
と、アレクシスがいい始め・・・
「狩猟か。楽しそうだな」
と公爵がいい始め、終いには陛下が
「×××伯爵領にある有名な湖は妃と一緒に行ったな。もう一回行くか・・・」
などと言い出したのである。
×××
「えと、あのぅ」
「だからね、予定をチョ~ットだけ変えようかなって思ってね・・・」
に~っこり笑う幼馴染が怖い。
「え? どういう事?」
「うん。手加減ナシで行くからね」
「は?」
そう言って、彼は彼女の口を自分の唇で塞いだのであった・・・
×××
「あらあ、この列車で行くんじゃなかったかしらね?」
二人の見送りの為にやって来た駅のホームで公爵夫人が呟いているが隣に並ぶアレクシスが
「間違えたかな?」
と首を撚る。
「まあ、予定を変えたんじゃないかな」
公爵がそう言って笑う。
「あのまま放っとくとあの子達の新婚旅行が台無しになりますものねぇ」
オホホホと高らかに笑うオフィーリア。
「では、帰りましょうか」
汽笛が鳴り、動き始める汽車から
『いませんわッ』『全部の車両を見ましたの?』『勿論ですわッ』『公爵夫妻様が見送りに来てるんですのよッ絶対にいらっしゃるはずよッ』
という声が聞こえたとか聞こえなかったとか・・・
因みにアルモンド伯爵夫妻が旅行に出発したのはその一週間後になったとか。
理由? 奥様が寝室の住人になっていたらしく、その間は旦那さまが甲斐甲斐しく愛しい奥様の世話をしていたそうである。
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