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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡

1話 交換留学?

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 トリステス皇国。

 海に面しており、昔から輸入や輸出といった流通機構を上手く利用することで外貨を効率よく稼ぐ工業国であり、軍事力に関しても世界のトップスリーに入る国の1つでもある。

 皇国の首都ハイデンベルクの中央に居を構えるのはこの国の皇帝グエン・トリステスと、その一族である。

 「父上、ハイドランジア王国への交換留学の件を了承したということを宰相に聞きましたが、誠でしょうか?」

 「お、ゲオルグじゃねえか~ イイところに来たな。丁度その話をしてたんだ。お前、行ってくるか?」

 「・・・えらく気軽ですねえ」

 「当たり前だ。ちょっと行ってすぐ帰って来るだけじゃねえか。たったの1ヶ月だぞ」

 「子供のお使いじゃ無いんですよ?」


 不満気に皇帝を睨むこの国の第2皇子ゲオルグ・トリステス。

 チョコレートブラウンのサラサラヘアと冬の曇り空の様な冷たそうな灰色の瞳。

 体型はガッチリとした騎士のようである。

 全てが父である皇帝とまるでお揃いで兄弟の様にも見えてしまう。

 だだ、息子の方が短髪で所作は優雅ではあるのだが。


 「まーそう言うなって。偶に外へ行って自分でも情報拾って来いや」

 「父上みたいに1年中城を空けてしまうと臣下が右往左往します。私まで居なくなったら宰相の胃に穴があきますよ」


 そう言いながら、ゲオルグはため息をついた。





 トリステス皇国は情報の流通も盛んであり、最新の情報を入手することに長けた諜報国家でもある。

 情報は最新、確実がモットーなので売り物は皇帝自らがに行くことも度々である。その為、城で統括を担う役目がもっぱら第2皇子であるゲオルグの仕事なのである。

 皇太子である兄は現在、新婚旅行中で不在だ。

 長年の片思いを成就させて婚姻に漕ぎ着けた事もあり浮かれポンチになった挙げ句、豪華客船世界一周旅行の旅に出掛けてしまい帰ってくるのは来年である。

 嫁の事情抜きなら申し分なしのキレ者なのだが・・・


 「まあまあ、お前が居ない間は俺がちゃんと城に居るから心配すんな」


 眉間のシワを伸ばす皇子。


 「で、いつですか私がハイドランジア入りするのは?」

 「明後日」

 「は?」

 「いや、だからさ明後日」

 「え、明後日って・・・ 明日の次の日ですよね?」

 「そうそう」


 良い笑顔で言い放つ皇帝。


 「船で4日かかる国に、たったの2日でどうやって行くんですか~!」


 額に井の字マークを浮かべ、大声で叫ぶゲオルグであった。





 「いつの間にこんなモノを・・・」


 皇城の地下へと続く階段を降りると、見慣れない部屋へと歩を進める皇帝陛下。


 「あ~、1ヶ月くらい前に完成したんだよ。秘密裏に作ってたんで結構時間かかったんだぞ」

 「重鎮達は知ってるんですか?」

 「いや、宰相だけだな。後はまあ口の硬いヤツが何人か・・・ 工事関係者とかは入れてねえからな」

 「じゃあ、どうやって・・・」

 「魔法だな」

 「凄い」


 10畳位の広さの何も無い部屋の床いっぱいに、見たことも無いような古代文字が精密な図形の中に描き込まれている。

 大人が5人位で手を繋いだら出来る位の輪の中にソレは納められており、キラキラと光る金色の顔料で書かれてあった。


 「我が国にこんな事の出来る魔術士はいましたっけ?」

 「居るわけねえだろ、出張して来てもらったに決まってる」

 「何処から?」

 「ハイドランジア王国に決まってんだろ。だから交換留学に応じたんだよ。部屋も作ってくれるっつーんで、話しに乗ったんだ」


 ハイドランジアはこの世界でも有数の魔力持ちを輩出している国なのである。


 「で、コレ何なんです?」

 「転移門だよ」

 「うえっ、転移門って・・・ よくこんなもん作ってくれましたね。神殿の門外不出魔法じゃなかったんですか?」

 「あ~。まあなー、聖王が作ってくれるって言ってくれたからな」

 「いつの間に」

 「知り合いになった」

 「何処で?」

 「ナイショ」


 まさか、他国の娼館でお友達になったとか言えない皇帝陛下。

 流石に御口は、ミッ○ィーちゃん!『×』である。


 「この国に遊びに来たいって聖王が、部屋もコレもぜーんぶ作ってくれたんだ実質ゼロ円でオトクだろ?」

 「・・・ホントに?」

 「ホントだ。第一この転移門はハイドランジアの大神殿にしか行けないぞ」

 「ええええぇ、ソレは良いんですか?」

 「あそこの王宮よりいいんじゃねーの?」


 何処までも軽い父親に、頭痛を覚えるゲオルグはきっと普通の感覚の持ち主なのだろう。

 父であるグエンが規格外。


 「王宮同士が繋がると他の国に変な勘繰りされるだろ? 国同士のイザコザの事を考えたら神殿が1番いいんだよ」

 「・・・まあ、確かに?」

 
 常識人のゲオルグは首を捻る。


 「これで行くから、お前も明後日で良いんだってば。アッチからもココに来る予定だからな。あ、もう直ぐ来るわ。忘れてたわ」

 「えええぇ~」


 よく見れば転移門の文字がイルミネーションの様に光っているではないか。

 アタフタするゲオルグを他所に余裕の皇帝陛下。

 一瞬、部屋中が金色の光で満たされた後スッと波が引くようにその光が転移門に吸い込まれて行くと、そこに薄い羽衣の様な白いローブ姿の人物が立っていた。

 両手でフードをそっと脱ぎ、現れたのは黒曜石の様な艷やかな長い髪の毛と濃紺の瞳をしたふるいつきたくなるような艶やかな美女であった。









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