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国際連盟の闇

国際連盟の闇04 金解禁への流れと定額手形の変遷

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 2.26事件以降、内務省管轄の警察庁が改組され、鉄道都市整備院傘下に警察局と警備局が設置され、護衛総体として纏められた。郵便逓信事業および鉄道収益を基盤として、護衛総体は整備され、鉄道都市整備公団を主体として、鉄道都市院の部局として、警察局、警備局、鉄道局、都市局があって、内閣府総理大臣直属機関、鉄道都市院総裁の傘下組織となっていた。逓信省の郵政局と逓信局は、商工省と共に、都市整備事業の中核として形成され、郵貯業務は、無利子無期限定額手形振替が基本事業となっていた。

 無利子無期限定額手形は、高橋是清翁によって、震災手形という名目で発行された。公務員俸給を財源として、定額手形を発行するというモノが、定額手形である。つまりは、国債と同じく借金であり、公務員にはカネではなく、手形を支給するという形態で発行された。これは、財源としての金不足を補い、横浜正金銀行のように、海外投資銀行を支援する意味合いもあった。無利子無期限定額手形は、公務員俸給であり、租税の支払いだけでなく、電気や石炭等の燃料購入には用いることができ、公共消費に手形が使われることで、少しづつ流通に流れるようになったのである。

 大連の関東都督府では、予算の一部を定額手形で支払うこととして、鉄鉱石や石炭の輸送で回収する流れを構築したのである。都市整備局は、水道や電気、郵便や逓信を定額手形払いとして、「特区」の都市整備を進めたのである。定額手形は、政府発行の借用書であるため、無利子無期限という形で、「特区」に流通する紙幣として使われるようになったのである。これは、「特区」経済が拡大しても、国ごとに貨幣の流通と発行額に制約があり、制約が少ない日本の定額手形が借用書代わりに使われたのであった。

 無期限無利子の定額手形は、史実上で言えば、ドル紙幣に書かれている「Federal Reserve note」の考え方に近い。欧米に対しては、輸入額が輸出額を上回るため、常に金が流出しやすくなり、金を確保するために、欧米諸国家の国債等を購入して金を回収する形をとっていた。しかしながら、この方法で回収する金は、長期債券が多く、確保すべき金が、常に不足しやすいのが、日本の財政状況であった。

 確保すべき金が常に不足するため、紙幣の発行額は必ずデフレ傾向となったが、デフレを打開するために、無期限無利子の定額手形が使われるようになったのである。

 海外から米や大豆の輸入について、大連経由であれば、定額手形が使えるようになり、さらには大連で精錬された、鉄鋼やコークス、灯油にガソリンといった精製品が、「特区」経由で購入できるようになると、定額手形そのものが、紙幣と同じような形で流通するようになったのである。

 金本位制への復帰が、イギリスからの金流出を招き、イギリスが金の再輸出禁止とすると、将棋倒しのように、再輸出禁止が世界中に広がっていったのである。金の輸出禁止措置は、そのまま紙幣の流通停止を意味していて、各国の経済が一時的にマヒ状態となったのである。

 昭和恐慌は、昭和4年1928年の金本位制への復帰が引き金であり、平価切り下げで金本位に復帰し、イギリスからの金流出を呼び込んだのは、「特区」を巡る経済活動にあった。国際連盟が進めた「特区」経済は、経済対策が無いことによる、自由主義経済そのものであった。石炭、鉄鋼、石油と資源に恵まれた「特区」は、ロマノフ家による利益分配によって、「資源」が、国際連盟諸国の収益になるため、カネが投資される形となり、カネが投下されたことで、人口が増加し、「特区」からの住民税が、国際連盟の収益として還流するようになったのである。

 経済が血液のよなモノだとすれば、カネが流れなければ活動が停滞し、最後には壊死へと至る結果となる。

 「特区」経済規模の拡大が、そのまま、定額手形の流通規模が拡大する結果となり、大連から出荷される、鉄鋼やコークス、石油製品や缶詰などの加工食料は、日本だけでなく、世界中に輸出される流れとなったのである。

 各国の金流出は、本質的には一時的なモノであり、世界市場で循環するまでの期間であったが、各国経済が耐えられず、金輸出禁止措置をとったために大恐慌のながれとなったのである。

 日本も大臣の失言から取り付け騒ぎが起き、鈴木商店が破産寸前に追い込まれるといった、緊急事態が生じたが、高橋是清翁によって定額手形の大量発行と、兌換紙幣と定額手形の為替レートを自由化することで凌いだのである。日本は金本位制が崩壊し、金輸出禁止措置をとったが、紙幣の流通そのものは継続されたことと、定額手形への交換が可能であったため、インフレが生じた結果、定額手形の価値が相対的に上昇したのである。これは租税および公共料金の支払いが、定額手形および兌換紙幣のどちらも等価で扱ったため、為替レートの有利な方で支払いをおこなうことができ、実質的な減税措置となったのである。

 日本の貿易は、大正期では欧米から輸入し、「特区」を含めた大陸や東南アジアに輸出して、収益を稼ぐ形であった。昭和初期からは、「特区」から輸入して、「特区」を含めた大陸および東南アジアへの輸出で稼ぐ形となり、アメリカやイギリスも同じような流れとなっていた。アメリカは膠州湾をドイツと共同開発し、北京までの鉄道敷設を開始していた。イギリスとオランダは共同で皇泰島を租借し、欧州への商港を確保したのである。

 世界恐慌の流れから、欧米諸国家は、大陸からの収奪という流れとなり、ボリシェビキによる独立支援が加速し、世界中で紛争と動乱が発生していったのである。南米やアフリカへの収奪から、中近東・インド・東南アジア、シナと「特区」に収奪の流れは広がっていった。

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