イレブン

九十九光

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♯4ー14

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メになりそうだけど」

 大野先生が部屋の奥にあるベッドのほうを指さしながら質問してきた。私がその方向に視線を向けると、その先にいた男子生徒たちが一斉に声を上げる。

「マジふざけんなよ、てめえ! 今度の西中との交流試合出れなくなったらお前のせいだからな!」

 このセリフを言ったのは、ベッド一つを占領してうつぶせに寝て、裸の背中に湿布薬を張っている湯本(ちなみにテニス部)。教室での内田の最後の発言に怒りを覚え、石井らとともに殴りかかろうとしたところを、小暮の本物の柔道の技によって投げ飛ばされ、大事を取ってこのような処置を受けているのだった。

「ホント、マジでふざけんなよ。跡残ったらどうしてくれんだよ」

 このセリフを言ったのは、湯本の隣のベッドに座って、額の右側に絆創膏を張っている浜崎。けがした理由は特に説明しなくていいだろう。

「お前のせいで、俺たち職員室来るように言われてんだぞ! どうして問題起こしたお前はそういうのないんだよ、内田!」

 このセリフを言ったのは、浜崎の横に座って、右足首に包帯を巻いている山本だった。

「樋口、いくらなんでも内田に甘すぎないか? ……。俺たち、一応クラスのことを思って行動起こしただけなのに」

 このセリフを言ったのは、湯本たちのベッドの近くに出した丸椅子に座って、制服を着てけがした部分を隠している石井だった。

 こいつらの言い分はまったく分からんとは言わないが、暴力沙汰にしたのはそちらなのだから、もう少し物腰柔らかくしろと言ってやりたい。私だって、問題を起こしたクラスの担任として佐久間校長に叱られるのは決定事項も同然なのだ。しかも原因は、今最もタイムリーな話題である東北での震災である。ともすればPTAで大騒ぎになり、教育委員会が記者会見を開きかねない話だ。そう思うと、これから連日連夜、保護者や委員会のお偉いさんからみっちり絞られる未来が容易に想像できてしまう。

 そして話題の中心にいる内田本人は、大野先生からの治療もそこそこに、椅子から立ち上がって私から自分の荷物をひったくった。

「ちょっと、内田。どこ行くの?」

「早退が決まったのでしたら、もう帰らせていただきます。別に迎えに来てもらわなくとも、歩いて帰れますので」
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