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私達は3日かけて地下4階をマッピングしていましたが、ほとんどマッピングできているのに下りの階段は見つかりませんでした。
「やっぱり怪しいところはここしかないよな」
実は昨日、ルーカス君がマップを見ながら指差している場所で、場違いな噴水を見つけていました。
行き詰まった私達は再びその場所にやってきました。
天使の彫刻が真ん中に鎮座している噴水は水を吹いておらず、中は濁った泥で満たされています。
「もう地下4階はこの区画しか残っていないんだよね」
噴水のある部屋に隣接して、侵入不可能な区画があるのですが、ルーカス君がどの方向から調べても隠し扉は見つかりませんでした。
「これが師匠が言ってた仕掛けなのかもしれない。コインを投げ入れてみるとか?」
こんな汚い泥のプールに投げ入れたら、コインは二度と戻って来ない気がします。
でも、もう行き止まりばかりで打つ手もないので意を決して投げ入れてみました。ビチャンと泥が跳ねた音を立ててから、コインはゆっくりと沈んでいきます。
「何も起きないね」
せっかくのキーアイテムをロストしたというちょっぴり気まずい空気が流れましたが、少しするとカチっという音がして地鳴りが聞こえてきました。
コインが少しずつ沈んで、奥にある何かにハマったようです。
「な、なんだ!?」
部屋の奥の壁の一部が下がって無くなり、通路が現れました。通路の奥に下に降りる階段が見えます。
「凄い、本当に仕掛けがあったんだ」
「よし、行こうぜ」
その時です。私達はいつも敵が現れる時のように魔法陣に包まれました。
噴水の中の泥が噴き上がって私達の目前に堆積していきます。そして、泥は人の形を形成して立ち上がりました。
私は敵識別魔法を使いました。
【名 前】マッドゴーレム
【種 族】魔法生物
【スキル】石化無効、レジスト(70%)
石化の魔法なんて持ち合わせていませんが、私の光攻撃魔法を高い確率で無効化されてしまうようです。
思わぬ強敵にリセットするか少し迷いましたが、それにしたって情報を集めてからの方が良いでしょう。
マッドゴーレムはズシン、ズシンと大きな音を立てながら、見た目通りの散漫な動きで私達の方に向かって来ました。
ルーカス君が距離を取りながら先程宝箱から出てきたばかりのクロスボウという機械仕掛けの弓で攻撃しています。
私も何もしないよりはと光攻撃魔法を撃ちますが、半分はマッドゴーレムの目前で弾かれてしまいます。
しかも攻撃が当たった部分はぽっかりと穴が空きますが、すぐに泥が流れ込んで穴が埋まってしまいます。
「これ、効いているのかな……そろそろ魔力がやばいかも」
「再生が少し鈍くなっていないか?」
言われてみると、クロスボウで空いた穴が塞がるのが少し遅れているような?
私は倒される度に不死者を呼び出したりしているので、本当に魔力が尽きそうです。
今もマッドゴーレムにまとわりついていたスケルトンが叩き潰されました。
「さっき手に入れた巻物を投げつけてみないか?」
少し息を切らしながらルーカス君が言いました。巻物とはクロスボウと同じくこのフロアで手に入れた、爆発の巻物というアイテムのことです。
私は言われたとおりに巻物を取り出してルーカス君に渡すと、最後の魔力を使って不死者を召喚しました。出現したゾンビがマッドゴーレムに向かって歩いて行きます。マッドゴーレムもそれをターゲットしたようです。
その隙にマッドゴーレムに背後から近づいたルーカス君が爆発の巻物を投げつけると、轟音がしてマッドゴーレムの上半身が消し飛びました。
お願いもう戻らないでと祈っていると、残った下半身は泥に戻って床に広がり、そのまますうっと消えてしまいました。
「やったぜ!すごい威力のアイテムだったな」
「うん、いきなり倒せると思ってなかったよ」
魔力を使い果たした疲れもあって、私はその場に座り込みました。その間にルーカス君が宝箱を回収していきます。
「金貨が10枚も入ってるとはいえ、貴重そうなアイテムを消費しちゃったからなあ」
二つ目の宝箱は罠式で、ルーカス君が開けると液体の入った小瓶が入っていました。
「あれ?これは俺じゃ何かわからないな。師匠に見てもらわないと」
「珍しいね。良いものなのかな」
ルーカス君が鑑定できなかったのは初めてのことです。せっかくなのに消費アイテムっぽいのが少し残念な気がします。
「クロエも魔力切れだし、階段だけ降りてそのまま帰ろうぜ」
ルーカス君が手を貸してくれたので、私は立ち上がりました。
そのまま歩いて地下5階に降りてみました。
地下5階の様子を見て、私達は驚きました。ここまで岩が剥き出しの洞窟のような場所を進んできましたが、地下5階からは石の煉瓦を積み上げた白い壁と、同じ色で出来たタイルで床と天井が装飾されていて、明らかに人工物といった様相をしていました。
美しい古代建築物と言えなくもないのですが、悪意を持って街を呪いで溢れさせた者の居城と思うと、少し戦慄を覚えてしまいます。ルーカス君も似たような感じで立ち尽くしていました。
「ここからは一筋縄じゃいかなそうな感じだな」
「うん、本当に二人だけじゃ厳しそうな気がしてきた……じゃあ帰ろっか」
こうして地上に帰り、冒険者協会でレベルやマッピングの報告をすると、ステラさんから地下5階への最速到達者だと言われました。
「おめでとう!ステラちゃんもルーカスも凄いわね。そこまで素質があるとは思わなかったわ」
ほとんどリセットスキルのお陰なので私は素直には喜べませんでしたが、ルーカス君は嬉しそうにしていたので良かったです。
この数日の地下4階のマッピングとマッドゴーレムの経験値で私はレベル45に、ルーカス君は46に到達しました。
【名 前】クロエ
【年 齢】15
【職 業】僧侶
【レベル】45
【 力 】48
【知 恵】73
【生命力】48
【素早さ】53
【 運 】153
【スキル】僧侶魔法(6)、リセット(2)
【魔 法】回復(6)、光攻撃(6)、麻痺(5)、毒回復、麻痺回復、AC強化(5)、悪魔祓い(3)、即死(1)、不死者召喚(2)、罠識別、敵識別、帰還
僧侶魔法のレベルが6になり、当初は念願だった帰還魔法を手に入れました。でも迷宮で手に入る貨幣が増えている上に、今回みたいに魔力を使い切った場合を考えるとアイテムに頼る方が良さそうです。
どちらかと言うと、即死魔法が使い勝手が良さそうです。リセットしながら使ってみたいと思います。
「やっぱり怪しいところはここしかないよな」
実は昨日、ルーカス君がマップを見ながら指差している場所で、場違いな噴水を見つけていました。
行き詰まった私達は再びその場所にやってきました。
天使の彫刻が真ん中に鎮座している噴水は水を吹いておらず、中は濁った泥で満たされています。
「もう地下4階はこの区画しか残っていないんだよね」
噴水のある部屋に隣接して、侵入不可能な区画があるのですが、ルーカス君がどの方向から調べても隠し扉は見つかりませんでした。
「これが師匠が言ってた仕掛けなのかもしれない。コインを投げ入れてみるとか?」
こんな汚い泥のプールに投げ入れたら、コインは二度と戻って来ない気がします。
でも、もう行き止まりばかりで打つ手もないので意を決して投げ入れてみました。ビチャンと泥が跳ねた音を立ててから、コインはゆっくりと沈んでいきます。
「何も起きないね」
せっかくのキーアイテムをロストしたというちょっぴり気まずい空気が流れましたが、少しするとカチっという音がして地鳴りが聞こえてきました。
コインが少しずつ沈んで、奥にある何かにハマったようです。
「な、なんだ!?」
部屋の奥の壁の一部が下がって無くなり、通路が現れました。通路の奥に下に降りる階段が見えます。
「凄い、本当に仕掛けがあったんだ」
「よし、行こうぜ」
その時です。私達はいつも敵が現れる時のように魔法陣に包まれました。
噴水の中の泥が噴き上がって私達の目前に堆積していきます。そして、泥は人の形を形成して立ち上がりました。
私は敵識別魔法を使いました。
【名 前】マッドゴーレム
【種 族】魔法生物
【スキル】石化無効、レジスト(70%)
石化の魔法なんて持ち合わせていませんが、私の光攻撃魔法を高い確率で無効化されてしまうようです。
思わぬ強敵にリセットするか少し迷いましたが、それにしたって情報を集めてからの方が良いでしょう。
マッドゴーレムはズシン、ズシンと大きな音を立てながら、見た目通りの散漫な動きで私達の方に向かって来ました。
ルーカス君が距離を取りながら先程宝箱から出てきたばかりのクロスボウという機械仕掛けの弓で攻撃しています。
私も何もしないよりはと光攻撃魔法を撃ちますが、半分はマッドゴーレムの目前で弾かれてしまいます。
しかも攻撃が当たった部分はぽっかりと穴が空きますが、すぐに泥が流れ込んで穴が埋まってしまいます。
「これ、効いているのかな……そろそろ魔力がやばいかも」
「再生が少し鈍くなっていないか?」
言われてみると、クロスボウで空いた穴が塞がるのが少し遅れているような?
私は倒される度に不死者を呼び出したりしているので、本当に魔力が尽きそうです。
今もマッドゴーレムにまとわりついていたスケルトンが叩き潰されました。
「さっき手に入れた巻物を投げつけてみないか?」
少し息を切らしながらルーカス君が言いました。巻物とはクロスボウと同じくこのフロアで手に入れた、爆発の巻物というアイテムのことです。
私は言われたとおりに巻物を取り出してルーカス君に渡すと、最後の魔力を使って不死者を召喚しました。出現したゾンビがマッドゴーレムに向かって歩いて行きます。マッドゴーレムもそれをターゲットしたようです。
その隙にマッドゴーレムに背後から近づいたルーカス君が爆発の巻物を投げつけると、轟音がしてマッドゴーレムの上半身が消し飛びました。
お願いもう戻らないでと祈っていると、残った下半身は泥に戻って床に広がり、そのまますうっと消えてしまいました。
「やったぜ!すごい威力のアイテムだったな」
「うん、いきなり倒せると思ってなかったよ」
魔力を使い果たした疲れもあって、私はその場に座り込みました。その間にルーカス君が宝箱を回収していきます。
「金貨が10枚も入ってるとはいえ、貴重そうなアイテムを消費しちゃったからなあ」
二つ目の宝箱は罠式で、ルーカス君が開けると液体の入った小瓶が入っていました。
「あれ?これは俺じゃ何かわからないな。師匠に見てもらわないと」
「珍しいね。良いものなのかな」
ルーカス君が鑑定できなかったのは初めてのことです。せっかくなのに消費アイテムっぽいのが少し残念な気がします。
「クロエも魔力切れだし、階段だけ降りてそのまま帰ろうぜ」
ルーカス君が手を貸してくれたので、私は立ち上がりました。
そのまま歩いて地下5階に降りてみました。
地下5階の様子を見て、私達は驚きました。ここまで岩が剥き出しの洞窟のような場所を進んできましたが、地下5階からは石の煉瓦を積み上げた白い壁と、同じ色で出来たタイルで床と天井が装飾されていて、明らかに人工物といった様相をしていました。
美しい古代建築物と言えなくもないのですが、悪意を持って街を呪いで溢れさせた者の居城と思うと、少し戦慄を覚えてしまいます。ルーカス君も似たような感じで立ち尽くしていました。
「ここからは一筋縄じゃいかなそうな感じだな」
「うん、本当に二人だけじゃ厳しそうな気がしてきた……じゃあ帰ろっか」
こうして地上に帰り、冒険者協会でレベルやマッピングの報告をすると、ステラさんから地下5階への最速到達者だと言われました。
「おめでとう!ステラちゃんもルーカスも凄いわね。そこまで素質があるとは思わなかったわ」
ほとんどリセットスキルのお陰なので私は素直には喜べませんでしたが、ルーカス君は嬉しそうにしていたので良かったです。
この数日の地下4階のマッピングとマッドゴーレムの経験値で私はレベル45に、ルーカス君は46に到達しました。
【名 前】クロエ
【年 齢】15
【職 業】僧侶
【レベル】45
【 力 】48
【知 恵】73
【生命力】48
【素早さ】53
【 運 】153
【スキル】僧侶魔法(6)、リセット(2)
【魔 法】回復(6)、光攻撃(6)、麻痺(5)、毒回復、麻痺回復、AC強化(5)、悪魔祓い(3)、即死(1)、不死者召喚(2)、罠識別、敵識別、帰還
僧侶魔法のレベルが6になり、当初は念願だった帰還魔法を手に入れました。でも迷宮で手に入る貨幣が増えている上に、今回みたいに魔力を使い切った場合を考えるとアイテムに頼る方が良さそうです。
どちらかと言うと、即死魔法が使い勝手が良さそうです。リセットしながら使ってみたいと思います。
応援ありがとうございます!
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