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57話 シグレ様との雑談 1
しおりを挟むあの日から早、3か月が経過しようとしていた。あの日から、というのはマグロ様が遠洋漁業に出されてから3か月……という意味だ。
私は今、シグレ様と食事に来ている。ネルファ王女殿下とルック兄さまの婚約も無事に成立し、周囲からは私達の婚約も成立させようという雰囲気なのだった。王族に二人も同じ家系の者が嫁ぐ? 形になるのは大丈夫なのだろうか、とか色々な憶測が飛んでしまうけれど、私はとにかくシグレ様と過ごせて幸せだった。
「この店のサーロインステーキはかなり旨いな。まさか、これほど旨いステーキに出会えるとは……」
「シグレ様、フィレステーキも美味しいですわよ」
「ほほう、フィレステーキの方が脂身が少ないのだったかな?」
「いえ、ダイエットとかそういう話ではありませんが……」
私達は他愛もない話で盛り上がっていた。最近ではシグレ様と一緒に、貴族街にあるお店を制覇することを目標に掲げていたりする。一緒に行くお店が増えれば増える程、お互いの仲がより深まっていくからね。
「それにしても、本当に美味しいですよね。このお店……」
「そうだな……これも全て、上質な牛を飼育してくれている国民のおかげか」
「なるほど、それは感謝しなければなりませんね」
「そういうことだな」
王族は元より、私達貴族も国民の税金で生活しているのだからね。まあ、大規模なインフラ整備とか事業を拡張したり、店を経営管理する収益もあるけれど。そういうことに使える軍資金は全て、税金から賄われているわけで。本当に国民あっての貴族王族とうことね。
どれだけ偉くなっても忘れてはいけない初心みたいなものだわ。
「そういえば、マグロ殿も今頃は遠洋漁業で頑張っているのだろうな」
「そうですね……2年間に渡る航海でしたっけ」
「そういうことになるな」
2年間もの航海……基本的にトラブルがない限りは陸に戻って来ることはないらしい。その間に獲れる魚は何匹になるんだろう? 保存とか大丈夫なのかな?
「少し疑問なんですが、2年間もの航海で魚の質とかは問題ないのでしょうか?」
「ああ、それについては問題ない。冷凍保存に特殊な魔法を掛ける形になるからな。ほぼ、取り立ての品質で解凍できるのだそうだ」
「それはそれで凄いですね……」
上位の魔法になると、例え腕が欠損したとしても元に戻せるとも聞くし……収穫した魚を保存するくらいは簡単なのかもしれないわね。となると……2年間の遠洋漁業で収穫できる魚は相当量になるはずだし、それも私達に多大な恩恵を与えてくれるんでしょうね。
その体験にマグロ様が駆り出されたのは、とても良いことだと思うわ。2年後には本当に成長していそうだし。
「マグロ様にとっては本当に良い経験になりそうですね」
「それはそうなんだが……私としてはマグロ殿の後ろが心配でな……うん」
「後ろ……?」
あっ、なんだかとても良くない会話になりそうな気配がする……少なくとも食事中にするべきではないような……。
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