【完結】その婚約書、私の署名がありませんけれど?~北の堅物将軍は、かりそめの婚約者を不器用に愛し抜く~
聞いてない。
花の公国フォスカリーネで外交補佐官を務めるリゼルシェが、叔父である公爵から突きつけられたのは、北の軍事大国クレスヴァイドの軍人貴族との婚約書だった。しかも本人の署名がない。勝手に決められた婚約、勝手に差し出された人生。
相手の名はディルク・ドランハルト。灰色の瞳には感情がなく、口数は極端に少なく、鉱物みたいな男——のはずだった。
婚約の法的な不備を暴いて破談に持ち込む。それだけのつもりで、母を殺した国へ自ら乗り込んだ。だが北の冬は長い。雪に閉ざされた屋敷の中で、リゼルシェは気づいてしまう。この男の無言の行動には、言葉にできない何かが滲んでいることに。
外套を黙ってかけられる。食事の量をさりげなく気にされる。そしてこの国では、家族にしか許されないはずの「名前」で呼ばれる——。
外交官としてその意味を知っている。知っているのに、自分に向けられているとは認められない。認めたら、引き返せなくなるから。
破談の証拠を追う知略戦。軍部の暗躍に巻き込まれる政治劇。異文化のぶつかり合いから生まれる笑い。そして、互いの孤独に触れてしまった二人が選ぶ答え。
「自分の名前で生きる」とは、何を引き受けることなのか。
署名のない婚約書から始まる、じれったくて痛くて、でもどうしようもなく惹かれていく恋の話。
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外交官としてその意味を知っている。知っているのに、自分に向けられているとは認められない。認めたら、引き返せなくなるから。
破談の証拠を追う知略戦。軍部の暗躍に巻き込まれる政治劇。異文化のぶつかり合いから生まれる笑い。そして、互いの孤独に触れてしまった二人が選ぶ答え。
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