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20.手紙。
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やっと手紙を開封し便箋を取り出した。懐かしいケントの文字に顔が綻ぶ。
「ちょっとした事でもメールじゃなくて手紙でくれたなぁ…右肩上がりの字も懐かしい」
そん事を思いながら読み出す。
『最愛の咲 へ
この手紙を読んでいる咲は愛する人が出来て新たなパートナーが出来たんだね。
俺は本当に咲が大好きで、好き過ぎて叶うな無人島で二人だけで24時間365日一緒に居たかった…
今から書く内容は俄に信じられない話で驚くと思うが最後まで読んで欲しい。
ファンタジーな話だが俺と咲は異界から転生しこの日本に生まれた。
元の世界は時と愛の神クロノスの加護受けるマルラン王国。俺は公爵家子息で咲は侯爵家令嬢だった。前世では咲はエミリアと言い、大人しく愛らしい女性で俺は一目惚れし妻に望んだんだ。
しかしエミリアは生まれて直ぐに婚約していて婚約者がいた。
俺は横恋慕しエミリアを手に入れたくて色々と策を講じた。しかしエミリアとアルフレッドとの仲は深く、俺の入る隙はなかったよ』
やはり賢斗はケイン…なんだ。覚悟をしていたがやはりショックだ。この後エミリアの気を引くために毎日花を贈ったり、公爵家と付き合いのある貴族のお茶会に誘い会う機会を作ったり色々したようだ。
そして母親に付き添いを頼み、エミリアの外出先に赴き食事に誘い王子の誕生パーティーのパートナーを申し出たが断られた事も書かれていた。私の記憶と一致している。
そしてエリアス殿下の誕生パーティーで公爵からの婚約解消の圧力をかけた事も。
「ジークさんの言う通りだった」
私は押しに弱く賢斗に押し切られて結婚したが、でもちゃんと賢斗に愛情はあったと思う…
だから前世の記憶が元で愛されて求められていたとしたら正直ショックだ。
ショックを受けながら先を読み進めると、時渡の儀式の事が書かれていた。
『エミリアが巫女に選ばれ一抹の希望を持ち月が頭上に上がるのを待っていたら、入ってはいけない筈なのに父と法王様が部屋に来てこう言った。”騎士はアルフレッドが選ばれた。しかし法王様かお前が一番エミリア嬢を愛しているのを理解いただき、お前を騎士にして下さる。受けるか?”
俺は即答しエミリアの騎士になり一緒に異界に渡る事を望んだ。今世でエミリアが手に入らないなら、異界でも何処でも行く覚悟があったんだ。そして拉致し睡眠薬で眠るアルフレッドの左胸の騎士の痣に嫉妬し、意識の無いアルフレッドを蹴り付けた。法王様は俺に痣が出たと証言すると言ってくれたが、エミリアの騎士の印が自分に無いのが許せず、自ら焼きコテで左胸に2本の印を付けた。エミリアが手に入ると思うと痛みなど感じなかった』
闇深いケインに身震いし先を読むのを躊躇した。しかし真実を知りたくて先を読み進める。
『胸の熱傷が疼き辛かったが、渡の扉前にいたエミリアを見た瞬間、痛みを忘れ興奮しエミリアの全てを手に入れれると歓喜した。エミリアは装飾もない質素な衣類を身につけてコルセットも着用していない様だ。女性らしい丸みのある体つきを見た瞬間に男の欲望が剥き出しになり気がつくと抱きしめていた。嫌がり抗うエミリアに興奮し口付ける。エミリアの柔らかい唇に酔いしれた。片やエミリアは俺を拒否しアルフレッドの名を呼び続け、嫉妬した俺は更に深く口付けエミリアを抱き上げた。渡の扉前にくると法王が慌てて祈りを捧げると扉は開いた。迷わずエミリアを抱え扉の中へ飛び込んだ。扉の中は真っ暗で温かくゆっくり落ちて行った。少しすると俺の腕からエミリアが消えた!焦る俺に誰か話しかけてきた。
“ケイン!其方は本物の騎士では無い。今なら引き返せる。真の騎士を連れて来い。其方が異界に渡っても偽物である為、巫女の側にはいけない。それに偽った罪として寿命が半分になり、次世で生が尽きれば其方の魂は壊れて無となり二度と転生しなくなるぞ…考え直せ”。
しかし俺は考える事なくそれでもいいと返事した。エミリアを手に入れ俺を短い間でも愛してくれれば魂が壊れてもいいと思えるほどにエミリアを愛していた。
こうして俺とエミリアは日本に転生したんだよ』
凛に言った”長生き出来ない”発言は神の啓示があったからなんだ。賢斗は40歳半ばで亡くなり男性平均寿命の半分程だった。
…って事は魂が壊れてもう転生しないって事。現実主義の私は生まれ変わるとか前世の記憶とか信じ無い方だが、”魂が壊れて無になる”は衝撃的な言葉だった。謂れのない恐怖を感じながらまだ続く手紙の先を読み進め…る。
『啓示通りエミリアの側に転生出来ず、物心ついた頃から前世の記憶がありエミリアを捜し続けた。必ず出逢った人の左手の甲の痣を確認した。男に転生している可能性もあるから全ての人の手を確認した。俺は自分でも言うのも何だが容姿は恵まれ成績もよくモテたよ。小学生の頃から交際を申し込まれたが全て断り、信じられないかもしれないが咲が初めての女性だった。普通に性欲は有ったが他の女性とは生理的に嫌悪を感じキスすら無理だった』
読んで赤面する。「何を書き残してるのよ!」思わず一人で叫ぶ
『そして友人から頼み込まれ仕方なく参加した飲み会で咲に出逢えたんだ。顔を合わせた瞬間に全身が震えたのを覚えているよ。手の甲の痣を確認しなくてもエミリアだと分かった。
多分咲は俺がガンガンアプローチするから、引いていただろう⁉︎分かっていたけどあれでも抑えていたんだよ!”初めまして”直後にキスしそうだったんたよ俺。
エミリアを見つけてからは必死さ。友人の愛華ちゃんにハイスペックの友人を紹介して恩を売り、咲の情報を聞き出し先回りして外堀を埋めたんだ。咲を囲うのに必死だった。今改めて思うが俺はヤバイ奴だよなぁ…でも狂うくらい咲が好きだった』
はぁ…やっぱり愛華は賢斗の手先だっか…
バツが悪いのか何度聞いても愛華は否定したなぁ…賢斗と知り合ってから男運無くなって行ったもんなぁ…
溜息をついて続きを読む。
『咲と付き合える様になり幸せだった。早く結婚したくて仕事を頑張り咲を迎える準備をしたが…しかし一時期悩んだよ。咲は知らなかっただろう⁈前世の記憶に縛られ咲への愛は俺の本心なのか分からなくなった時期があったんだ。
ケインは異常なまでにエミリアに執着し、転生しても捜し捕まえた。冷静に考えたらこのまま結婚して咲と俺は幸せになるのか疑問に思ったんだ。
付き合って半年だった頃に長期出張で会わなかっただろう⁈あれは自ら出張を希望して咲と距離を置いて考える時間を作ったんだ。
出張10日目くらいから咲がいない生活に慣れてきた頃に、取引相手のアシスタントと意気投合し仲良くなったんだ。咲以外に気持ちが動いたの初めてだった』
「えー!初めて聞いたよ…」
なんかモヤモヤする。昔の事なのに…
『そして休日に相手に誘われてデートしたんだ。初めは楽しくて益々咲への想いに疑問を持ち出したんだ。しかし…時間が経つにつれ彼女の仕草や行動に咲を重ね、”咲ならこうするのに”とか”咲ならここで笑ってくれるのに”とか咲と比較している自分がいたんだ。そして帰る時間になると彼女が”帰りたくない”と言って抱き付いてきた。その時に”違う!”と明確に分かった。エミリアの生まれ代わりだから愛したんじゃない。いや…初めはそうだったが、付き合い始めてからは違う。”佐川咲”という女性を愛したんだと分かったよ』
また顔が赤くなる。確かに長期出張から帰って来てからの賢斗の溺愛が加速した。それは会ってなかったからだと思っていた。
『しかし俺が40歳で死んでしまったら、咲は人生の半分を一人で過ごす事になる。これは俺が勝手に確信している事だけど、恐らく真の騎士アルフレッドがエミリアを追いかけて来ると思う。あいつもケイン以上にエミリアに執着していたからかなぁ…
もしアルフレッドでなくても愛する人が現れたら俺を気にせずに、新しいパートナーと共にして欲しい。
ただ、再婚はしないで欲しい。俺はもう咲にもエミリアにも逢うことが出来ないんだ。今世だけでも俺だけの妻でいて欲しい。
罪を犯し二人の邪魔をした俺に願う事なんて許されないのは分かっているが、愛に溺れた愚か者に慈悲をかけて欲しい…
後、凛には前世の話はしないでくれ。カッコよくていい父親で終わりたいんだ。
最後にこんな俺を受け入れくれてありがとう。愛してるし魂は無くなっても永遠に愛するよ…
賢斗』
「・・・私も愛してる」
恥ずかしいから愛の言葉なんて言った事無かったけど今心から言えた。ちゃんと賢斗を愛してたと実感し手紙をしまった。
「ちょっとした事でもメールじゃなくて手紙でくれたなぁ…右肩上がりの字も懐かしい」
そん事を思いながら読み出す。
『最愛の咲 へ
この手紙を読んでいる咲は愛する人が出来て新たなパートナーが出来たんだね。
俺は本当に咲が大好きで、好き過ぎて叶うな無人島で二人だけで24時間365日一緒に居たかった…
今から書く内容は俄に信じられない話で驚くと思うが最後まで読んで欲しい。
ファンタジーな話だが俺と咲は異界から転生しこの日本に生まれた。
元の世界は時と愛の神クロノスの加護受けるマルラン王国。俺は公爵家子息で咲は侯爵家令嬢だった。前世では咲はエミリアと言い、大人しく愛らしい女性で俺は一目惚れし妻に望んだんだ。
しかしエミリアは生まれて直ぐに婚約していて婚約者がいた。
俺は横恋慕しエミリアを手に入れたくて色々と策を講じた。しかしエミリアとアルフレッドとの仲は深く、俺の入る隙はなかったよ』
やはり賢斗はケイン…なんだ。覚悟をしていたがやはりショックだ。この後エミリアの気を引くために毎日花を贈ったり、公爵家と付き合いのある貴族のお茶会に誘い会う機会を作ったり色々したようだ。
そして母親に付き添いを頼み、エミリアの外出先に赴き食事に誘い王子の誕生パーティーのパートナーを申し出たが断られた事も書かれていた。私の記憶と一致している。
そしてエリアス殿下の誕生パーティーで公爵からの婚約解消の圧力をかけた事も。
「ジークさんの言う通りだった」
私は押しに弱く賢斗に押し切られて結婚したが、でもちゃんと賢斗に愛情はあったと思う…
だから前世の記憶が元で愛されて求められていたとしたら正直ショックだ。
ショックを受けながら先を読み進めると、時渡の儀式の事が書かれていた。
『エミリアが巫女に選ばれ一抹の希望を持ち月が頭上に上がるのを待っていたら、入ってはいけない筈なのに父と法王様が部屋に来てこう言った。”騎士はアルフレッドが選ばれた。しかし法王様かお前が一番エミリア嬢を愛しているのを理解いただき、お前を騎士にして下さる。受けるか?”
俺は即答しエミリアの騎士になり一緒に異界に渡る事を望んだ。今世でエミリアが手に入らないなら、異界でも何処でも行く覚悟があったんだ。そして拉致し睡眠薬で眠るアルフレッドの左胸の騎士の痣に嫉妬し、意識の無いアルフレッドを蹴り付けた。法王様は俺に痣が出たと証言すると言ってくれたが、エミリアの騎士の印が自分に無いのが許せず、自ら焼きコテで左胸に2本の印を付けた。エミリアが手に入ると思うと痛みなど感じなかった』
闇深いケインに身震いし先を読むのを躊躇した。しかし真実を知りたくて先を読み進める。
『胸の熱傷が疼き辛かったが、渡の扉前にいたエミリアを見た瞬間、痛みを忘れ興奮しエミリアの全てを手に入れれると歓喜した。エミリアは装飾もない質素な衣類を身につけてコルセットも着用していない様だ。女性らしい丸みのある体つきを見た瞬間に男の欲望が剥き出しになり気がつくと抱きしめていた。嫌がり抗うエミリアに興奮し口付ける。エミリアの柔らかい唇に酔いしれた。片やエミリアは俺を拒否しアルフレッドの名を呼び続け、嫉妬した俺は更に深く口付けエミリアを抱き上げた。渡の扉前にくると法王が慌てて祈りを捧げると扉は開いた。迷わずエミリアを抱え扉の中へ飛び込んだ。扉の中は真っ暗で温かくゆっくり落ちて行った。少しすると俺の腕からエミリアが消えた!焦る俺に誰か話しかけてきた。
“ケイン!其方は本物の騎士では無い。今なら引き返せる。真の騎士を連れて来い。其方が異界に渡っても偽物である為、巫女の側にはいけない。それに偽った罪として寿命が半分になり、次世で生が尽きれば其方の魂は壊れて無となり二度と転生しなくなるぞ…考え直せ”。
しかし俺は考える事なくそれでもいいと返事した。エミリアを手に入れ俺を短い間でも愛してくれれば魂が壊れてもいいと思えるほどにエミリアを愛していた。
こうして俺とエミリアは日本に転生したんだよ』
凛に言った”長生き出来ない”発言は神の啓示があったからなんだ。賢斗は40歳半ばで亡くなり男性平均寿命の半分程だった。
…って事は魂が壊れてもう転生しないって事。現実主義の私は生まれ変わるとか前世の記憶とか信じ無い方だが、”魂が壊れて無になる”は衝撃的な言葉だった。謂れのない恐怖を感じながらまだ続く手紙の先を読み進め…る。
『啓示通りエミリアの側に転生出来ず、物心ついた頃から前世の記憶がありエミリアを捜し続けた。必ず出逢った人の左手の甲の痣を確認した。男に転生している可能性もあるから全ての人の手を確認した。俺は自分でも言うのも何だが容姿は恵まれ成績もよくモテたよ。小学生の頃から交際を申し込まれたが全て断り、信じられないかもしれないが咲が初めての女性だった。普通に性欲は有ったが他の女性とは生理的に嫌悪を感じキスすら無理だった』
読んで赤面する。「何を書き残してるのよ!」思わず一人で叫ぶ
『そして友人から頼み込まれ仕方なく参加した飲み会で咲に出逢えたんだ。顔を合わせた瞬間に全身が震えたのを覚えているよ。手の甲の痣を確認しなくてもエミリアだと分かった。
多分咲は俺がガンガンアプローチするから、引いていただろう⁉︎分かっていたけどあれでも抑えていたんだよ!”初めまして”直後にキスしそうだったんたよ俺。
エミリアを見つけてからは必死さ。友人の愛華ちゃんにハイスペックの友人を紹介して恩を売り、咲の情報を聞き出し先回りして外堀を埋めたんだ。咲を囲うのに必死だった。今改めて思うが俺はヤバイ奴だよなぁ…でも狂うくらい咲が好きだった』
はぁ…やっぱり愛華は賢斗の手先だっか…
バツが悪いのか何度聞いても愛華は否定したなぁ…賢斗と知り合ってから男運無くなって行ったもんなぁ…
溜息をついて続きを読む。
『咲と付き合える様になり幸せだった。早く結婚したくて仕事を頑張り咲を迎える準備をしたが…しかし一時期悩んだよ。咲は知らなかっただろう⁈前世の記憶に縛られ咲への愛は俺の本心なのか分からなくなった時期があったんだ。
ケインは異常なまでにエミリアに執着し、転生しても捜し捕まえた。冷静に考えたらこのまま結婚して咲と俺は幸せになるのか疑問に思ったんだ。
付き合って半年だった頃に長期出張で会わなかっただろう⁈あれは自ら出張を希望して咲と距離を置いて考える時間を作ったんだ。
出張10日目くらいから咲がいない生活に慣れてきた頃に、取引相手のアシスタントと意気投合し仲良くなったんだ。咲以外に気持ちが動いたの初めてだった』
「えー!初めて聞いたよ…」
なんかモヤモヤする。昔の事なのに…
『そして休日に相手に誘われてデートしたんだ。初めは楽しくて益々咲への想いに疑問を持ち出したんだ。しかし…時間が経つにつれ彼女の仕草や行動に咲を重ね、”咲ならこうするのに”とか”咲ならここで笑ってくれるのに”とか咲と比較している自分がいたんだ。そして帰る時間になると彼女が”帰りたくない”と言って抱き付いてきた。その時に”違う!”と明確に分かった。エミリアの生まれ代わりだから愛したんじゃない。いや…初めはそうだったが、付き合い始めてからは違う。”佐川咲”という女性を愛したんだと分かったよ』
また顔が赤くなる。確かに長期出張から帰って来てからの賢斗の溺愛が加速した。それは会ってなかったからだと思っていた。
『しかし俺が40歳で死んでしまったら、咲は人生の半分を一人で過ごす事になる。これは俺が勝手に確信している事だけど、恐らく真の騎士アルフレッドがエミリアを追いかけて来ると思う。あいつもケイン以上にエミリアに執着していたからかなぁ…
もしアルフレッドでなくても愛する人が現れたら俺を気にせずに、新しいパートナーと共にして欲しい。
ただ、再婚はしないで欲しい。俺はもう咲にもエミリアにも逢うことが出来ないんだ。今世だけでも俺だけの妻でいて欲しい。
罪を犯し二人の邪魔をした俺に願う事なんて許されないのは分かっているが、愛に溺れた愚か者に慈悲をかけて欲しい…
後、凛には前世の話はしないでくれ。カッコよくていい父親で終わりたいんだ。
最後にこんな俺を受け入れくれてありがとう。愛してるし魂は無くなっても永遠に愛するよ…
賢斗』
「・・・私も愛してる」
恥ずかしいから愛の言葉なんて言った事無かったけど今心から言えた。ちゃんと賢斗を愛してたと実感し手紙をしまった。
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