ヒトツメ
椚塚氷雨には他人には言えない秘密がある。
それは目が一つしかない異形の存在であることだ。故に氷雨は町外れの小さな家でひっそりと暮らしていた。
秘密を知るのは共に暮らす化け蜘蛛のツララと、父親である椚塚千年の二人だけ。
しかし父の千年は、六年程前に神隠しのように忽然と姿を消してしまっていた。
氷雨のヒトツメには透視や読心術などの類稀なる能力があったが、化け蜘蛛と二人きりで過ごす隠遁生活の中では宝の持ち腐れであり、氷雨はただただ己と人間との違いにコンプレックスを深めていくばかりであった。
ツララと共に隠れ潜むような生活の中で、氷雨はひょんなことから月丘真琴という青年と出会い交流を持つようになる。
最初こそ真琴との関係に戸惑いを感じていたものの、父親以外との初めての人間との交流に少しづつ親愛を覚えるようになっていった。
そんな真琴から近頃近所で〈神隠し〉のような事件が起きているという噂を聞き、氷雨は父の消息不明が頭を過ぎり、妙な胸騒ぎを感じ始めていた。
そしてそれを境に氷雨の前に退治屋を名乗る男が現れ、一人と一匹の虚構の生活(げんじつ)が崩れ始めていく……
それは目が一つしかない異形の存在であることだ。故に氷雨は町外れの小さな家でひっそりと暮らしていた。
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