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…………ドナドナ?
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ーーカタン、カタン、カタン。
私は目の前に座る男の人からジッと見つめられながら、豪華な馬車に揺られ移動していた。
「ジロジロ見てんじゃねえよ。」
「…………いや、その娘、とても王子に懐いてますね。」
サイラスに睨まれて、男の人はチラッとサイラスに目を向けたけど、その視線はすぐにまた私を捉える。
「我々の国には、比較的色んな国の者達が多く訪れますが、黒髪黒目の人種は初めて見ました。」
そう言ってマジマジと見つめてくるから、私は居た堪れなくなってサイラスの背中に顔を埋める。
馬車は豪華なだけあって、中もとても広かった。
私はサイラスと並んでフカフカの座席に座り、向かい側の席に男2人が座っている。
そして、席に座るなり私をジッと見てくるものだから、私はサイラスの腰にガシッと抱きついて顔を隠しているのだ。
時折りサイラスの背中から顔を覗かせて見るけど、その度にバチッと目が合う。
目の前に座っている2人の男は、国王の…………つまり、サイラスのお父さんの命令でサイラスを迎えに来たらしい。
サイラスのお父さんは、ずっとサイラスとサイラスのお母さんを探していたんだって。
何か、色々と事情がありそうなんだけど…………お母さんと沢山苦労をしてきたサイラスは、お父さんが待つ獣人の国へ行く事を激しく拒否した。
サイラスが男の人達の話しを全く聞く耳持たずな感じなのだけれど、男の人達もしぶとく食い下がる。
頑なに行くのを拒否するサイラスと、サイラスをどうしても連れて帰りたい男の人達の間に挟まれて、私はどうしようかと思案していたのだけれど…………。
サイラスを説得出来ないと悟った男の人達が、サイラスの腕の中にいる私を一斉に見た。
"お前からも、なんとか言えよ"
"お前も一緒に説得しろよ"
そう、目で訴えられているのが伝わってくる。
もう、とにかく男の人達からの圧が凄くて。
本能的に危機を察知した私は、サイラスの服をクイッと引っ張った。
「ねえ、サイラス。一度でいいから、お父さんに会ってみたら?」
「なっ!?ユーカ!!」
サイラスが、驚いて私を見る。
その顔は、少し怒っていた。
「だってさ、本人から直接話しを聞かないと分からないことだって、きっとあると思うんだ。それに、サイラスだって直接お父さんに言いたいことを言った方が、心のモヤモヤも少しはスッキリするんじゃないのかなぁ。」
「…………」
「お父さんが生きてるならさ。どんな人が自分のお父さんなのか知っておいた方が、将来的にもサイラスにとって良い気がするんだよね。ね?そう思わない?」
私がサイラスを見上げて、ね?ね?と、聞くと、サイラスは渋々……ほんと~に渋々ながら、小さく頷いた。
そんなサイラスが、いつもは頼りになるお兄ちゃんって感じなのに、今はちょっぴり可愛く思えて。
私はクスクス笑いながら、サイラスの頭をいい子いい子ってするみたいに撫で撫でしてしまっていた。
サイラスも、照れているのか俯いちゃってはいるものの、嫌がらずに私が撫で撫でしているのを受け入れてくれているから、良しとしよう。
ひとしきり撫でた後に、私はサイラスから体を離すと、俯くサイラスの顔を覗き込んだ。
「私が、しっかりお留守番してこの家を守ってるから。ちゃんと、いい子で待ってるから。だから、心配しないで行って来て!」
私は少しでもサイラスに安心してもらおうと、元気モリモリ!ガッツポーズ!をして見せた。
…………して見せたんだけど。
サイラスに、フルフルと首を横に振られてしまった。
ーーなんで?
「…………ユーカも一緒。」
「え?」
「ユーカも一緒じゃないと、行かない。ユーカをここに一人で置いてなんて行けない。」
サイラスはそう言って、私が離した体をまたグイッと引き寄せてギューッと強く抱き締めてきた。
「いやいや、部外者の私が行くのはどうかと……」
「じゃあ、俺も行かない。」
「「「「「是非一緒にっ!!」」」」」
「ええ~!?」
凄まじい形相で私の手を取る男の人達が……必死過ぎてメチャクチャ怖い。
っていうか、そんなに強く手を握らないで!!
メチャクチャ痛いし、怖いから!!
「娘!!頼むから一緒に来てくれっ!!」
ーー分かった!!分かったから、早く離してー!!
涙目になりながら、コクコクと頷いて了承する。
と、横からサイラスが、私の手を握っていた男の人達の手をバチン!と、思い切り叩き落とした。
「ユーカに気安く触るな。」
サイラスの冷ややかな目と声に、全員がバッと私から手を離す。
サイラスは男の人達を一瞥してから、再び私をギュッと抱き締めた。
ーーそして、冒頭の状況に至るのである。
サイラスは男の人達を威嚇しまくるし、私はその男の人達にジロジロ観察されているし…………ハァ……。
馬車に乗ったばかりで、まだまだ先は長いという現実に、思わず大きな溜息を吐いてしまった。
…………とっても乗り心地の良い馬車に揺られているはずなのに、気分はドナドナの私なのであります。
私は目の前に座る男の人からジッと見つめられながら、豪華な馬車に揺られ移動していた。
「ジロジロ見てんじゃねえよ。」
「…………いや、その娘、とても王子に懐いてますね。」
サイラスに睨まれて、男の人はチラッとサイラスに目を向けたけど、その視線はすぐにまた私を捉える。
「我々の国には、比較的色んな国の者達が多く訪れますが、黒髪黒目の人種は初めて見ました。」
そう言ってマジマジと見つめてくるから、私は居た堪れなくなってサイラスの背中に顔を埋める。
馬車は豪華なだけあって、中もとても広かった。
私はサイラスと並んでフカフカの座席に座り、向かい側の席に男2人が座っている。
そして、席に座るなり私をジッと見てくるものだから、私はサイラスの腰にガシッと抱きついて顔を隠しているのだ。
時折りサイラスの背中から顔を覗かせて見るけど、その度にバチッと目が合う。
目の前に座っている2人の男は、国王の…………つまり、サイラスのお父さんの命令でサイラスを迎えに来たらしい。
サイラスのお父さんは、ずっとサイラスとサイラスのお母さんを探していたんだって。
何か、色々と事情がありそうなんだけど…………お母さんと沢山苦労をしてきたサイラスは、お父さんが待つ獣人の国へ行く事を激しく拒否した。
サイラスが男の人達の話しを全く聞く耳持たずな感じなのだけれど、男の人達もしぶとく食い下がる。
頑なに行くのを拒否するサイラスと、サイラスをどうしても連れて帰りたい男の人達の間に挟まれて、私はどうしようかと思案していたのだけれど…………。
サイラスを説得出来ないと悟った男の人達が、サイラスの腕の中にいる私を一斉に見た。
"お前からも、なんとか言えよ"
"お前も一緒に説得しろよ"
そう、目で訴えられているのが伝わってくる。
もう、とにかく男の人達からの圧が凄くて。
本能的に危機を察知した私は、サイラスの服をクイッと引っ張った。
「ねえ、サイラス。一度でいいから、お父さんに会ってみたら?」
「なっ!?ユーカ!!」
サイラスが、驚いて私を見る。
その顔は、少し怒っていた。
「だってさ、本人から直接話しを聞かないと分からないことだって、きっとあると思うんだ。それに、サイラスだって直接お父さんに言いたいことを言った方が、心のモヤモヤも少しはスッキリするんじゃないのかなぁ。」
「…………」
「お父さんが生きてるならさ。どんな人が自分のお父さんなのか知っておいた方が、将来的にもサイラスにとって良い気がするんだよね。ね?そう思わない?」
私がサイラスを見上げて、ね?ね?と、聞くと、サイラスは渋々……ほんと~に渋々ながら、小さく頷いた。
そんなサイラスが、いつもは頼りになるお兄ちゃんって感じなのに、今はちょっぴり可愛く思えて。
私はクスクス笑いながら、サイラスの頭をいい子いい子ってするみたいに撫で撫でしてしまっていた。
サイラスも、照れているのか俯いちゃってはいるものの、嫌がらずに私が撫で撫でしているのを受け入れてくれているから、良しとしよう。
ひとしきり撫でた後に、私はサイラスから体を離すと、俯くサイラスの顔を覗き込んだ。
「私が、しっかりお留守番してこの家を守ってるから。ちゃんと、いい子で待ってるから。だから、心配しないで行って来て!」
私は少しでもサイラスに安心してもらおうと、元気モリモリ!ガッツポーズ!をして見せた。
…………して見せたんだけど。
サイラスに、フルフルと首を横に振られてしまった。
ーーなんで?
「…………ユーカも一緒。」
「え?」
「ユーカも一緒じゃないと、行かない。ユーカをここに一人で置いてなんて行けない。」
サイラスはそう言って、私が離した体をまたグイッと引き寄せてギューッと強く抱き締めてきた。
「いやいや、部外者の私が行くのはどうかと……」
「じゃあ、俺も行かない。」
「「「「「是非一緒にっ!!」」」」」
「ええ~!?」
凄まじい形相で私の手を取る男の人達が……必死過ぎてメチャクチャ怖い。
っていうか、そんなに強く手を握らないで!!
メチャクチャ痛いし、怖いから!!
「娘!!頼むから一緒に来てくれっ!!」
ーー分かった!!分かったから、早く離してー!!
涙目になりながら、コクコクと頷いて了承する。
と、横からサイラスが、私の手を握っていた男の人達の手をバチン!と、思い切り叩き落とした。
「ユーカに気安く触るな。」
サイラスの冷ややかな目と声に、全員がバッと私から手を離す。
サイラスは男の人達を一瞥してから、再び私をギュッと抱き締めた。
ーーそして、冒頭の状況に至るのである。
サイラスは男の人達を威嚇しまくるし、私はその男の人達にジロジロ観察されているし…………ハァ……。
馬車に乗ったばかりで、まだまだ先は長いという現実に、思わず大きな溜息を吐いてしまった。
…………とっても乗り心地の良い馬車に揺られているはずなのに、気分はドナドナの私なのであります。
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