隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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そっけない山田くん[蓮也]

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 生徒会が終わってすぐに体育館を出ていく山田くんの姿が目についた。

 俺も、急いで追いかけたいけれど、同級生たちに絡まれてしまい、どうしても追いかけられない。


 山田くん、なんでそんなにそっけないの?


 昨日の事が良くなかっただろうか?

 やっと、両想いだと分かったのに…。




 山田くんは、無意識なんだろうけど、人に冷たい事がある。
 それもそうだろう。

 親にあんな酷い事されていたら。


 俺は、今日も明日も明後日も、ずっと一緒にいたいから、「一緒に帰ろう?」か「今日も泊まりにくる?」のどちらで声を掛けようか悩んでいたのに。まさか、全く話ができないとは思わなかった。
 まぁ、今日は生徒総会の打ち上げだから一緒にご飯は無理だけど…。
 いや、山田くんだって生徒会の一員なんだし、打ち上げくらい一緒に行きたかった…。




 もしかして、生徒会室にいないかな?とか教室に残ってないのかな?とか打ち上げに向かう前に学校中を探して回った。

 でも、山田くんの姿は無かった。


 先に帰ってしまったんだろう。

 あいにく、僕は山田くんの家を知らない。
 近い、とは言っていたけれど、どの方面かはわからない。


 俺は、山田くんに嫌われたかもしれないという不安を抱えままで、打ち上げに向かった。



 おまけに、土日まで暗い気分だ。

 幸い、土日はいつも学校でみっちり勉強するからあまり悩まなくて済みそうだ。



 そう。俺は一生懸命勉強しなければならない。
 今のアパートから通える大学に行く。

 それで、バイトを頑張って、山田くんと一緒に暮らす。

 大学に行けば、親も納得して一人暮らしを継続させてくれるだろう。

 山田くんもここからなら学校に通える訳だし。



 俺は1人で勝手に、2人の将来の事を考えている。


 だって、こんなに好きになった人、今までにいなかった。



 山田くんに連絡をとりたいけれど、山田くんはスマホを持っていない。

 連絡手が無いのだ。


 結局、寂しい金土日曜日を過ごすことになった。


 やがて、月曜日がやってきた。


 俺は、真っ先に生徒会室に向かった。


 教室のドアを開けて、置き手紙をする。

 山田くんは、人気の全く無い生徒会室によくいる。特に昼休みは。

 だから前に、山田くんに生徒会の事で頼みたい事があって生徒会室に置き手紙をしたのだ。もちろん、山田くんは置き手紙を、ちゃんと見つけて仕事をしてくれていた、という事があった。

 それを思い出して、生徒会室に置き手紙をした。


『山田くんへ
 放課後、ここで待ち合わせたいです。』


 本当は、昼休みに山田くんに会いに生徒会室にくればいいだけなのだが、休み明けの授業で小テストがあるので勉強しなければならない。


 何より、山田くんに嫌われたのでは無いかという不安がまだ残る中、すぐすぐには山田くんに会う勇気がなかった。




 昼休みになり、5分でいいから山田くんに会いたいと思ったけれど、素っ気なくされたら立ち直れそうに無いと思ったから、やめた。


 それをいうなら、放課後だって同じはずなのに。



(山田くん、早く会いたいな。)


 恋する乙女のような事ばかりが頭をぐるぐる回る。


 やっと、授業終了のチャイムが鳴った。

 放課後、早足で生徒会室に向かう。

 3年の教室とは別の棟の最上階にあるなら遠い。
 もっと近ければよかったのに…。

 はやく、山田くんに会いたい。



 山田くんがいますように、山田くんがいますように、と何度も念じならが、俺は、生徒会室へと向かった。









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