上 下
33 / 55

第33話

しおりを挟む
ドスラ王子視点

 翌日――俺の目の前には、拘束されているルアンの姿があった。

「どうして私が、こんな目に合っているのですか!?」

 玉座の部屋で陛下、王子達に見下され……ルアンの正面にはフィオナがいる。

「質問致します……ルアン様、貴方は本当にエルノア様を始末したのですか?」

「ひぃぃっ……!?」

「実の妹です。始末できず見逃したのは仕方がありません……どうですか?」

「そ、そうです! 私はエルノアを始末することができませんでした!!」

 フィオナと目を合わせたルアンは、顔を青ざめながら自白する。
 今まで陛下に対しても嘘をついていたのに、まるでフィオナの前では嘘がつけないようだ。

「そうですか……それなら、ルアン様には機会を与えましょう」

 陛下や王子達が怒声を浴びせる前に、フィオナが話したことで何も言えなくなる。

「寛大なフィオナに感謝しろ……それで、機会とはなんですか?」
 
「私が用意していた暗殺用の魔法道具があります……それで、エルノアを始末しなさい」

 そう言ってフィオナがナイフのような魔法道具を渡し、受け取ったルアンが困惑する。

「わかりました……ですが、エルノアの居場所がわかりません」

「貴方はエルノアを調べていたはず……知っているけど行きたくない、違いますか?」

「はいっ! エルノアはもう中位の冒険者となっていました!!」

 どうやらルアンは最悪の事態を想定し、エルノアの詳細を調べたらしい。
 それでも中位の冒険者になっていたから、手を出すべきか悩んでいたようだ。

「今すぐにエルノアを仕留めて来なさい。そうすれば……この国は安泰です」

 フィオナが告げて、ルアンはエルノアの始末に向かう。
 用意周到なフィオナを見て、俺は恐怖するしかなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:293

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,157pt お気に入り:2,188

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,999pt お気に入り:3,809

妹と婚約者は私が邪魔なようなので、家から出て行きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,151

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:94,380pt お気に入り:3,181

処理中です...